「天文マニアの今昔(笑)」
昔、都会に暮らす天文趣味人が非・天文趣味人と山に天体観測に行った時、
真っ先に悩まされるパターンがあった。
それが「あの明るい星は何?」攻撃だ。(笑)
非・天文趣味人はこの時、こちらの技量を試すが如く、
即答を求めているのが嫌でも分かる。(笑)
だが、星がほとんど見えない都会ならいざ知らず、
そこが山ならば事はそう簡単ではない。
いくら天文趣味人であっても、
降るような星空は滅多に見られないからだ。
もちろん都会の天文趣味人なら定期的にプラネタリウムに行き、
シミュレーションを繰り返しているのは言うまでもない。
だがプラネタリウムとリアルは違う。
圧倒的な星の数の前に、
素人どころかいっぱしの天文趣味人であっても、
久しぶりの降るような星空を前にすると度肝を抜かれる。
その昔は予め天文年鑑でおおよその惑星の位置を把握し、
星座早見盤を使っておおよその星の動きを理解して行く。
分かれば直ぐに北極星を見つけ出して正確な方角を知るか、
戸惑っても磁石さえあれば直ぐに方向感覚と季節、時間を掴める。
だが、大抵の非・天文趣味人は自動車を降りるや否や、
「わ~凄い!!あの明るい星は何?」と即座に聞いて来る訳だ。(笑)
このような時に私が使っていた手法は、
「どれ?どの星?」と先ずは時間を稼ぐ。(笑)
この時、それが惑星なら話は非常に早い。
メチャクチャ明るく、輝きが揺らいでいないなら、
大抵は金星か木星か土星か、良くて中~大接近の火星だからだ。
この場合は即答出来る。
「あ、木星ですね。」とか。
すると大抵は「凄い!!何故分かるのですか?」と聞いて来る。
「先ずは非常に明るいでしょ。輝きが全く揺らいでいない。
ならば間違いなく惑星です。
赤くはないから火星ではない。
すると木星か土星か金星か。
しかし金星は今は明けの明星だからこの時間には見えていません。
従って木星か土星になります。
明るさがかなり明るいので答えは木星になる、と。」
と言う訳です。
もちろん物凄く感心されるのですが、
大抵はここでさらに質問が追加される訳です。
「ではあの赤い星は何?」と。
その頃には既に完全に方角と時間、季節を把握しているため、
こんな風に説明するとメチャクチャ感動される訳です。
即答で、
「あ~さそり座のアンタレスですね。
ちなみに上を見て下さい。
ボヤ~っとした輝き。
あれが夏の天の川です。
ほら、天の川のこちら側とあちら側に明るい星があるでしょう?
あれが「わし座のアルタイル、彦星」で、あっちが「こと座のヴェガ、織姫」、
さらに少し離れた位置にあるのが「はくちょう座のデネブ」。
この3つの星を結んだのが夏の大三角です。
そうして下方にある先ほどの赤い星、
あれも夏を代表する星座、さそり座のアンタレスです。
ちなみにアンタレスとは火星に敵対するもの、と言う意味で、
赤い火星のライバルと当時は考えられていたようです。」と。
まあ、天文趣味人としては非常に簡単な基礎中の基礎なのであるが。
非・天文趣味人を感動させるには充分過ぎる威力があるかと。(笑)
だが令和時代。
非・天文趣味人であってもスマホの「星座アプリ」を使えば、
一発で分かってしまう。
何かつまらん時代になっている。(爆)
終わり
追記:
ふと気付いた。
この感覚。
登山において現在のベテランが最新の登山専用地図アプリについて語りたがらない理由。
ことヤマレコなんかを使ったら、
超初心者でもいきなりマタギ級のナビ技術を手に入れた事になる。
ベテランには面白くないだろう。(笑)
しかしコレこそがデジタル技術の真骨頂だと思う。