丹沢の恐怖と誤解 | 東京・横浜物語

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「丹沢の恐怖と誤解」

 

恐怖の結論:大倉尾根(バカ尾根)を初心者ルートと呼ぶのは犯罪的に危険

 
2022年8月に起こったと言う、
神奈川県丹沢の大倉尾根(通称バカ尾根)での遭難を扱ったYouTube動画があったので、
これは問題大有りなので書いてみたい。
 
命に関わる重大な問題でもあるため、
登山者だけでなくユーチューバー側の誤解のある表現についてもはっきりと書いておきたい。
 
取り上げられている登山者はそもそも問題大有りであり、
逆の言い方をすると、ある意味、問題ない。
 
何故なら登山の常識を全て踏み外しているからだ。
 
残念ながら動画でも言っているが、当人はベテランと思っていたようだが、
登山を何も知らないし経験もほとんどない「超ド級初心者」と言っていい。
 
問題はユーチューバー側にもあり、
そもそも丹沢の大倉尾根(バカ尾根)を、
ハイカーに人気の初心者コースと表現している。
 
これは非常に危険な内容になってしまっている。
 
扱っている遭難の内容から言っても完全に間違っている。
 
アップした写真をご覧頂きたい。
 
最初の写真は塔ノ岳山頂のもので、標高1491mの低山だ。
 
だが、丹沢の山々にはとんでもない罠が沢山あると思っておいた方がいい。
 
基本、丹沢は初心者向けの山ではない。
 
そう思っておかないと危険な目に遭わされるので要注意だ。
 
では動画の遭難者の辿った登山道を説明すると、
塔ノ岳への最も有名なアプローチは、
丹沢表尾根縦走と呼ばれるもので、
通常はヤビツ峠から入り、厳しい縦走路を行き、
塔ノ岳に登頂し大倉尾根(通称バカ尾根)から下りるコースが一般的だ。
(2番目の図を参照)
 
逆に大倉尾根から登り、そのまま大倉尾根を下りるコースもあるが、
動画の遭難者が行くように(間違えて入り込んだにせよ)表尾根を逆に行く人はほとんどいない。
 
だからこそ遭難したのであるが。
 
何故逆方向に行く登山者がそんなに少ないのかは、
理由は明白で、ヤビツ峠に夕方に下りてもバスは既に無いからだ。
 
ヤビツ峠は小田急線の秦野駅からバスが出ているが、
本数は非常に少ない。
 
夕方の最終は土曜日の場合で16:46。
 
これを逃したらほぼ何も無い峠に1人で残されるハメになる。
 
まあ、タクシーはあるだろうが。
 
いずれにしても推奨されているコースではない。
 
逆に大倉尾根の入口になる大倉バス停は本数が多く、
最寄り駅は小田急線の渋沢駅で、
意外にも近く、凄く使い勝手が良い。
 
さて、遭難者が辿った道は、
先ずはこの大倉バス停から大倉尾根に入っている。
 
そもそも最後の写真をご覧頂きたい。
 
これが大倉尾根の入口にある看板だ。
 
どこをどう読んでも初心者向けのコースなんかでは絶対に、ない。
 
有り得ない。
 
いや、これは立派な上級者向けと言った方がいい。
 
実際、要求される体力はハンパない。
 
特に夏場は低山故に気温も異常に高く地獄度もハンパない。
 
ここを初心者コースと呼ぶ人は犯罪者に近い存在と言っていい。
 
何故大倉尾根がバカ尾根と呼ばれているのかと言うと、
バカみたいに長いから、との説もあるほど。
 
非常に過酷な登山道として有名なのである。
 
累積標高は軽く1000mを超えていて、
これは看板にも書いてあるが北アルプスや富士山の登山道に匹敵するヤバさがある。
 
オレ様一番系の登山者で「バカ尾根は軽い」と言う者は多い。
 
だが真に受けていたら本当に初心者は危険な目に遭わされるから信じてはならない。
 
この動画の遭難者は40代の人らしいが、
バカ尾根を11時過ぎ(この段階でアウトだが)から登って午後3時に登頂しているのはいいが、
案の定、もう体力の限界を迎えてしまっている。
 
そうして間違えてしまい表尾根に入り込んでしまう。
 
表尾根は非常に激しいアップダウンを繰り返すコースであり、
さすがに動画でも中上級者向けと言っているが、
これは正しい。
 
鎖場もあり垂直10mくらいの崖も越えないといけない。
 
細尾根と言って、幅が50cmくらいで、
初心者には左右が垂直に100mくらい落ちているように見える場所もそこそこある。
 
これは相当恐い。
 
罷り間違っても登山初心者が気軽に行ける登山道ではない。
 
マラソン能力が最低でも21~25kmに到達していないと地獄を見る。
 
まして遭難した人は地図を持たず、雨具を持たず、
おそらくスマホの登山専用の地図アプリすら使わず、
登山届も出さず、登山を決行している。
 
いくら何でも酷過ぎる。
 
まあだからこそ遭難した訳であるが。
 
最近つくづく思う。
 
人間は似たような作りをしているが、
考え方や行動パターンには相当の差がある、と。
 
以前から何度か書いているが、
銀行のATMの行列を思い出して欲しい。
 
混雑している時、必ず銀行の方が行列に近くにいて、
「何番が空きました」と知らせている。
 
そんなのは見れば明らかだから必要ないだろう?と思う人も多いだろう。
 
だが、人間が数十人集まるともういけない。
 
空きが出来ても全く気付かないで呆然と立ち尽くしている人が続出するからだ。
 
もちろん後ろの人が「空きましたよ」と知らせるケースもあるが、
私達日本人は一般的にシャイなので他人に声は掛け辛い。
 
何故呆然としている人が続出するのかと言うと、
人間にはある一定の割合でボーッとしている人が意外にもかなりいる、
と言う冷酷な現実を知る必要があると思っている。
 
登山についても同様で、
恐ろしく簡単に考えていると言うよりも、
ほとんど何も考えないで、雰囲気だけで実行してしまう人がかなりいる、
と思っておいた方がいい。
 
10年ほど前の奥多摩でのアンケートでは、
何と半数くらいの人が地図を持たないで登山をしていたと言う。
 
現在の遭難原因の半数近くは道迷いで、
道迷いからの焦りでの滑落などを含めると半数以上の遭難が、
道迷い、もしくは道迷いから起こった滑落などで占められている。
 
しかも遭難者は増加傾向にある。
 
実は動画で扱ったような遭難者は想像以上に多いと思っておいた方がいいだろう。
 
残念ながらそれが人間社会の一部の冷徹な現実であると思う。
 
終わり