「山岳遭難解説への違和感と登山専用の地図アプリについて」
大切な結論:令和の登山シーンではヤマレコやYAMAPに代表される、
登山専用の地図アプリを優先させるべき。
(Googleマップは登山には使えない)
紙の地図と磁石は令和時代でも必携品ではあるが、
リュックにしまっておき最後の砦とする。
スマホの充電バッテリーは2個以上、
接続コードも予備を2本以上携行しスマホトラブルの確率を下げる。
重大な誤解を解く:
「登山専用の地図アプリは携帯電波の入らない場所でも見事に作動する」
「登山専用の地図アプリは無料バージョンでも充分に役に立つ」
さて、リンクを貼った動画解説が典型的な令和の登山問題だったので、
特殊な経歴を持つ私的な疑問をぶつけてみたいと思います。
私自身は長いブランクを経て登山を再開してから2年が経過している者です。
再開に当たってはその1年前から最新の情報収集をして来ました。
すると令和の登山シーンは以前とは比較にならないほど進化していたのに驚いたのであります。
しかしながらこの進化は令和に入ってからの事であり、
昭和時代は言うに及ばず、平成時代ともまるで違っています。
厄介なのは、動画に出て来るような大ベテランほど最新の機器に対応出来ておらず、
致命傷を受けてしまう実態にあります。
現在、日本国においては毎年毎年、約3000人以上が山で遭難し、
その約10%の300人強が亡くなっています。
そして厄介な事に増加傾向にあります。
遭難原因は約半数が道迷いで、
道迷いから焦って滑落などを含めると半数以上が道迷いから起こっています。
また中高年以上が遭難している割合が非常に高くなっています。
死亡事故になると7割と言う数字になる統計もあります。
さて、一旦大きな道迷い遭難が起きると、
相変わらずテレビにはベテランが出演して、
「紙の地図と磁石は必携品」と言います。
もちろんこれは正しいのですが、
逆に全ての登山者に私は問いたいです。
「貴方は紙の地図と磁石を正確に使えているのですか?」と。
私の答えは非常に簡単です。
使えている訳などないでしょう、となります。
理由は単純で、非常に難しいからです。
登山再開に当たって数冊の旧態依然のナビの本を買って、
そのやり方を学んでみました。
感想は「こんなの絶対無理」でした。
講習会に出席して先ずは理論を学び、
その後、実践の講習会に出て、
さらに詰めて行って半年くらいでようやく使えるレベル?
しかもアナログ技術特有の「習得がし難い上に間違え易い」と言う、
致命的な欠点があります。
昭和時代、平成時代のように、
他に手段が存在していなかったのなら仕方ありません。
しかし今は令和時代です。
ヤマレコやYAMAPに代表される登山専用の地図アプリが登場しています。
この威力は絶大です。
ヤマレコならば無料版でも、
予め設定したルートから50mも離れると音声と警告音で知らせてくれる徹底ぶりです。
しかも習得は週に数回、1~2時間程度イジッていれば、
1ヶ月もしないうちに習熟します。
さらにSNS機能もあるため凄く楽しいです。
ではここで動画の遭難内容をチェックします。
・2022年7月の遭難 ←最近の事例であり夏の登山
・ヴァリエーションルート(一般登山ではない難しい道)を使った登山
・30年のベテランによる道迷い遭難
・霧により迷い滑落、1週間彷徨って自力下山
と言う経過を辿っています。
この動画で重視されているのは、
相変わらずの「紙の地図と磁石」「携行食料」「ツェルトなどビバーク装備」
等々、遭難してからの対処に終始しています。
確かに今でも極めて重要な登山装備でありますが、
これは令和の登山です。
「そもそも」で考えないといけません。
深い霧が発生して迷った事から端を発しているのがこの動画の登山です。
紙の地図と磁石を使ったナビには致命的な欠点があります。
最初にするのは「正置(せいち。整置とも)」と呼ばれる作業で、
これは自分が今見ている風景と地図と方角を合致させるものです。
ここが出来ていないと地図はまるで使えていない事を意味しています。
つまり「もし見えていないなら一巻の終わり」です。
動画の事例は「霧」ですから、
当然見えていません。
悪天候や霧でほとんど見えていなければもう完全アウトです。
これが昭和や平成の登山でした。
しかし令和は違います。
スマホの登山専用の地図アプリを起動させていれば、
正置は常に瞬間的に自動的にしてくれ続けています。
今自分がどこにいてどの方向に進んでいるのかを、
即座に知らせてくれるのであります。
この感覚は、地図アプリさえ使えていれば、
30年の登山のベテランどころか、
確実にマタギレベルさえも軽く超えて来ます。
夜だろうが霧だろうが猛吹雪だろうが、
携帯の電波が入らない場所だろうが、
スマホは地球上空に展開しているGPS衛星からの電波を見事に受信し、
ナビを継続してくれます。
しかし登山のベテランほどこの新しい機器を使っていない現実。
テレビでは相変わらず「紙の地図と磁石は必携品です」の繰り返し。
そりゃ、紙の地図と磁石を使った登山を続けていれば、
簡単にいずれ道迷いしますって。
ちょっとした悪天候で万事休す。
そもそもアナログナビの手法をマスターしている人なんて超ごく少数です。
しかしベテランはテレビで相変わらず紙の地図と磁石の携行をとオウムのように言うだけ。
他に手段の無かった時代ならいざ知らず。
山のベテランによる犯罪的所業だとすら思う今日この頃であります。
終わり
余談:
幸い山と渓谷社からようやく登山専用の地図アプリの本が出ました。
令和登山の必読書かと。


