「ペロシ米下院議長の台湾訪問と日本のマスコミ報道の勘違い」
テレビの報道番組でテレビ朝日とTBSを交互に見ていたら、
ちょうどロシアと台湾問題を扱っていた。
ロシアが新型の潜水艦を作り云々、と。
続いて何故ペロシ米下院議長は台湾を訪問したのか?、と。
基本的に事実を報道しているように見えたが実は違っていて、
巧妙にいつもの「節」を展開していて苦笑した。
ロシアについては、
新型潜水艦は世界の海のあちこちでインターネット情報を盗むための小型潜水艦の母艦として使われるだろうとの見解を示していた。
もちろん潜水艦発射型の核ミサイルについても言及していて、
特にアメリカの沿岸で核魚雷を撃ち込んで、
アメリカに放射能の津波を見舞わせる手法なども教えてくれていた。
これらはなるほどと思わせられる内容だった。
続く台湾報道では両局とも簡単に言うと、
「中国は怒ってしまっているし、いい加減にしないと危ないんじゃないの」報道だった。
そうして中国のネットの書き込みを引用して、
「中国は世界の笑いものだ」などと言う「一中国市民の意見」をわざわざ載せる始末だった。
先ずは、現在の中国のネット空間は厳格に国家に管理されていると思っておいた方がいい。
民主的な意見など無いか、あっても何かの中国政府の意図があって捏造されているものと考えるべきだ。
従って「中国のネットの世界では」・・・などと言った途端にマヌケな事になってしまう。
まあ、そこには中国政府の意図が隠されているので詳細に分析する必要はあるが、
罷り間違っても一市民の声などと思ってはならない。
両局の報道では「習近平主席の面子が潰された」と表現していた。
だからさあ大変、と。
そうして中国が大々的に仕掛けて来ると言う軍事演習に対してもさあ大変、と。
戦後民主主義、ひいては平和主義に生きる私達日本人は根本的なところで重大な勘違いをしている。
それは、日本を除くほぼ全ての国は、最終的なところで戦争を選択する法体系を持っている点にある。
つまり、戦争とは最終的にヤッてもいいものだ、と考えている。
自らを守るためには、あるいは気に入らないヤツとは当然戦うべきなのだ、と。
従って、何も今回の中国とアメリカだけでなく、
日本を除くほぼ全ての国と言う国は、国家間の問題については、
軍事力、経済力、外交力の全てをフルに使ってギリギリの駆け引きを展開して来る。
ペロシ良くやった、と言う意見もある。
ペロシいい加減にしろ、と言う意見もある。
どちらが正しいのかは分からない。
各国、各人、各思想により一概に良い悪いは言えない。
だが、こうは言える。
この種の問題は、相手に間違ったメッセージを送ってはならない、と言う点に尽きる。
そしてもう一つ重大な事。
最終的に戦争になってもいいと本気で思っている点がある。
今回の台湾問題ではアメリカも中国も艦隊を派遣している。
これは脅しの意味だけではない。
間違いなく軍事衝突を念頭に置いて派遣している。
その場合の作戦行動は両国とも既に立案済みと思っておいていい。
軍事作戦とはそういうものだ。
もちろん戦争はしないに越したことはない。
だが辞さずと言う姿勢は常に示しておかないと、
相手は誤解する。
もしここでペロシ議長が訪問しなかった場合、
あるいは艦隊を派遣しなかった場合、
中国側は、アメリカが譲歩した、もしくは弱腰だと受け取る。
中国は台湾問題について武力行使をモノともしない姿勢を常に取り続けている。
隙があれば軍事侵攻しようとしているのは明白だ。
これについてアメリカは、微妙な立場ながらも、
軍事侵攻は許さずと言う立場をようやく鮮明にした訳だ。
現在、台湾問題について中国に介入出来る国は残念ながらアメリカしかいない。
アメリカが介入しないで放置した場合、非常に早い段階で台湾は軍事的に飲み込まれてしまう。
実際に香港はそうなった。
第二次世界大戦前、強大化し領土的な要求を繰り返していたナチスドイツに対し、
これが最後だからと言ってズデーテン地方の割譲を認めてしまったヨーロッパ諸国。
その立役者だったイギリスのチェンバレン首相は当初ヨーロッパに平和をもたらした人物としてもてはやされた。
だが、と。
民主主義ではない覇権国家の侵略を許した場合、
世界史に学ぶとそれはとどまることを知らない。
今の中国とロシアをどう見るのか。
安易な妥協が何を生むのか。
戦争を辞さない覚悟を示す・・・これが今の日本には当然出来ない。
だから中国にも弱腰一辺倒になり顔色ばかりを窺う。
平和主義も度を超すと戦争を招く。
あるいは大量殺戮を生む。
それが全く理解出来ないのが今の私達日本人。
ロシアがウクライナに侵攻した時、
当初は予定していた軍事演習が終わったから引き上げると表明した次の瞬間に侵攻開始している。
軍を展開するとはそう言う事なのだが、
平和主義に生きる私達日本人にはなかなか理解出来ない。
軍事衝突になると途端に思考停止。
ヒステリックに喚くかダンマリか。
今、ここで重大なのは、
アメリカは明確に台湾とは密接になり、
守るぞと中国側に非常に強力なメッセージを送った事にある。
習近平の面子など問題にしない。
何故なら、現在の中国がやっている覇権主義、弾圧にNOを突き付けているからだ。
ヤるなら相手の準備が整わないうちにヤッてやる、と考えているアメリカ人も多いだろう。
少なくとも私達日本人がこれを軍事問題として考えた時。
今のロシアを例に考えてみると、
ロシアはウクライナへの軍事侵攻により、
かなり手痛い目に遭っていると考えていいかと。
ほぼ全世界の民主的な国で嫌ロシアが広まってしまった。
この嫌悪感は今後10年以上は続くだろう。
また民主国家のほとんどはウクライナを支援している。
西側諸国は強力な武器を惜しげもなく供与している。
また中立を保っていたスウェーデンとフィンランドが即座にNATO入りを表明し、
それが認められてしまった。
本来のロシアならば両国に軍事侵攻してもおかしくない歴史を持つが、
それは出来ないでいる。
二正面作戦が既に出来ないくらいに弱っているとの見方も出来る。
この10~20年単位でロシアが経済的・軍事的に酷いダメージを受けるのは、
日本にとって良いのか悪いのか。
冷静に考える必要があるかと思う。
そして同時に中国について。
中国とアメリカが軍事衝突した場合。
もし早期の段階で今回も展開したと言う中国空母2隻を沈める事が出来た場合。
それは日本にとって良いのか悪いのか。
そういう分析が必要なのだが。
今のところ戦争反対しか言えない事態が相変わらず続いていると思う。
終わり