子宮腺筋症と不妊について
生殖年齢の女性が罹患する疾患の1つに子宮腺筋症という病気があります。子宮内膜症や子宮筋腫は比較的よく知られていますが、子宮腺筋症は意外と知られていないようです。子宮腺筋症とは、子宮内膜に似た組織が子宮筋層内にでき、増殖する病気のことです。(図内の病変のところ)生理の時期になると筋層内のこの組織も出血し、さらに肥大化がおこり、徐々に子宮自体が大きくなっていきます。それにより、月経量が多くなることから、月経痛や貧血などの症状が増悪します。この病気は20-40代の女性によく見られ、女性の20-35%に見られます。閉経を迎えると症状がなくなります。また、この病気は子宮筋腫と合併するケース(35~55%)、子宮内膜症と合併するケース(27~79%)、卵管水腫・卵管疎通障害・卵管采癒着などの卵管性不妊症と合併するケースがあり、単体では不妊症とのつながりはまだ明らかでない部分もありますが、様々な疾患と合併することで不妊リスクとなる可能性が危惧されています。Vercellniらの報告によると、子宮腺筋症のある患者とない患者とで比較した際に、妊娠率では、ある患者40.5%:ない患者49.8%、流産率では、ある患者31.9%;ない患者14.1%、となったという報告をしています。子宮腺筋症が不妊につながる原因としては、①子宮の収縮能異常による精子輸送障害②着床期の子宮筋層の異常運動による着床障害③分泌期子宮内膜の異常血管新生、HOXA-10発現低下による子宮内膜環境の変化④子宮内膜のサイトカイン(IL6,IL8,IL10)、活性酸素産生亢進⑤アロマターゼ活性上昇による高エストロゲン環境による接着因子の発現低下その他:子宮腔の拡大、変形、圧排が着床障害をきたすなどが考えられています。子宮腺筋症の治療方法としては、確立された内分泌療法はなく、2カ月間のGnRH agonist後のホルモン補充周期による凍結融解胚移植により、臨床妊娠および妊娠継続率を有意に改善するという報告があります。また、GnRH agonistの効果は最終投与後数カ月程度までしか継続しないので、凍結融解胚移植を2,3コース行って妊娠しない場合には、外科的治療も検討されます。外科的治療とは手術のことで、子宮線筋症病巣除去術と言われます。これらについては、GnRH agonistと手術療法の比較において妊娠率・生児獲得率は、ともに手術療法で有意に高値であったこと、腫瘤形成型においては、手術療法先行で流産率が低い傾向があること、手術をすることによって、流早産、PIH、FGR、子宮感染などの妊娠合併症を減少させることが報告されています。なお術後再発率6~14%と言われており、主なリスクとしては子宮破裂(3.6%)、癒着胎盤(6.3%)が挙げられています。分娩様式は帝王切開が推奨されます。子宮腺筋症と不妊治療においては、まだまだ知見が集まっておらず、様々な報告がされていますが、個々の患者さんの背景や希望を踏まえて、各々の治療のメリット・デメリットを伝えながら治療を選択してもらう必要があるというのが実状です。社会のあり方が変わり、晩婚化が進んできたことで、新たな不妊原因が出てきます。これからも社会は変わり続け、そのたび新たな不妊原因や治療法が模索されていきますが、日々最新の情報を学び、最新の医療を提供できるように心がけて参ります。