読書感想 テスカトリポカ | 映画や芝居の感想

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第165回直木賞受賞!
鬼才・佐藤究が放つ、クライムノベルの新究極、世界文学の新次元!

メキシコのカルテルに君臨した麻薬密売人のバルミロ・カサソラは、対立組織との抗争の果てにメキシコから逃走し、潜伏先のジャカルタで日本人の臓器ブローカーと出会った。二人は新たな臓器ビジネスを実現させるため日本へと向かう。川崎に生まれ育った天涯孤独の少年・土方コシモはバルミロと出会い、その才能を見出され、知らぬ間に彼らの犯罪に巻きこまれていく――。海を越えて交錯する運命の背後に、滅亡した王国〈アステカ〉の恐るべき神の影がちらつく。人間は暴力から逃れられるのか。心臓密売人の恐怖がやってくる。誰も見たことのない、圧倒的な悪夢と祝祭が、幕を開ける。第34回山本周五郎賞受賞。

 

アステカの神々、神話がそれはそれは恐ろしい。

人柱をいくつもいくつも要求するし、いけにえは顔の上にその人の腹から無残にとりだした生きたままの心臓を載せなければいけないし・・・。 読み始めは「げっ」と気持ち悪くなるのだけど段々慣れてマヒしてくるから次第に「はいはい、心臓とりだして顔の上にのせる儀式を始めたんだね」と。

人間の慣れというか、宗教に対する得心って怖い。

あ~、なるほどそういう意味の宗教儀式なんだ、、で納得しちゃうんだからやってることはサイコパスと同じなのに宗教って言葉が入るだけで説得力数十倍って感じ。

 

臓器売買、しかも虐待されている子供たちの心臓の取引ということで身の毛もよだつ話なのだけど

誰一人「ひどい」「ひとでなし」「吐き気がして戻す」「うろたえる」とかいう、本来あるべき反射を起こさずにビジネスとして淡々と話がすすんでいく。

このためこちらも「人身売買、臓器ブローカー」というおぞましき内容はさておいて、有能なビジネスマンがいかに起業して成功させるか、的な面白さが出てきてしまい「なるほど!」とか「そうやって獲物を取ってくるのか」とか「うん、それなら騙せるよね」などと、ビジネス手腕に魅せられる。

人としてどうかと思うけど、ここで臓器売買を成立させるための仕掛け みたいな話に面白さを見いだせなかった場合、この小説はただただ読んでいて辛いだけだろう。

出てくる人間がどれもこれも人殺し、の中で誰に心を寄せるでもなく話を読まなければならないから。

 

良い人であることが多い情け深い老女でさえ(というか一番怖いくらいだけど)とんでもなく冷血だったりするので感情移入はほぼできない。

 

臓器ビジネスについて知れてよかった。

また、「ダメ、麻薬、絶対」はつくづくほんとだな~、 もうやったら終わりだな とつくづく思った。

麻薬をやるということは、結局のところ各国のマフィアを潤し、人を殺し、臓器を売買させる、、、これは累々とつながっているわけだから。

私が麻薬に1万円を出したらどこかで子供の心臓が売られる といっても過言ではない。

バタフライエフェクトは間違いない。

ご禁制=マフィアの暗躍、 禁制をなくせばいいのでは?って考えてしまいますね。

 

ところでコシモさんの作るナイフですが、多分私が好きな奴じゃないなぁ。

革細工でもどちらかっていうと嫌いなタイプの方の奴だろうなぁ と。