読書感想 すばらしい新世界 | 映画や芝居の感想

映画や芝居の感想

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ユヴァル・ノア・ハラリの「21LESSONS」に出てきたので、これは外せないSFだと

確信して読んだ

できれば聞き放題のaudibleが良かったんだけど(定額聴き放題だから)見つからなかったので

KINDLEで購入し、kiyokoさんに読んでもらったり、自分で活字を追ったり。

 

オルダス・ハクスリーが1932年に発表したディストピア小説である。機械文明の発達による繁栄を享受する人間が、自らの尊厳を見失うその恐るべきディストピアの姿を、諧謔と皮肉の文体でリアルに描いた文明論的SF小説であり、描写の極端さが(多くのSF小説にあるように)きわめて諧謔的であるため、悲観的なトーンにもかかわらず、皮肉めいたおかしみが漂っている。ジョージ・オーウェルの『1984年』とともにアンチ・ユートピア小説の傑作として挙げられることが多い。 by wiki

 

ということで、これは物語を楽しむ類のものではなく、その世界を冒険するものだ。

あ~こういう世界なんだな と全体像が見えてくればそれでok。

 

またまたすごい小説に出会ってしまった。 (というか、知らずに50を過ぎてしまった私、生きてる間に読めてよかったよww) 若いときに読んだらさぞかし衝撃なんだろうと思うけども、年取ってからでも1週間くらい後を引くインパクト。 強烈。

 

この世界ではアルファ~イプシロンまで階級分けされている。

生まれる前から階級分けされており知的生産階級でない労働者ば平準化し画一化している方が好都合なので多胎児を突き詰めて、いまであれば完全クローンの量産型人間を作っている。

成長を阻害され小さく、脳の発達も未熟なままにしたり、気温に適合しやすく(かつ幸福を感じるよう)条件付けは徹底を極める。

洋服も住居も生活スタイルも階級によりすべて異なるけれど、誰も孤独を感じず幸福に過ごし、自分の居場所に満足するよう作りこまれた世界だ。

清潔で老いることがなく、60になると若さを保ったまま急に死ぬ。

それまでは医学によって若いころのどんちゃん騒ぎが好きなまま、孤独や芸術や真実や哲学、神などに煩わされることがない。 ずーっと性的にも20代のまま過ごすことになる。

 

おそらくだけど、若いころ読んだらよりぞっとしたかもしれないが、今は大分この世界観に慣れてきてしまっている。 宗教を信じないのは何も日本人だけではなく、比較的裕福な国の国民に無宗教は増えているだろう。

何かのために犠牲になる、必要性はもうなくなってしまった。

それとともに生自体がぼんやりし、鮮やかに際立つ激情や歓喜といったものを感じることがめっきり少なくなった世界に私たちはもう生きている。

 

西ヨーロッパ駐在統制官で世界統制官の一人、ムスタファモンドは科学の探求をすべて赦してはならないという。  真実を探求する誘惑はあるがそれは世界の安定を崩すものだから良く見極めて卑猥な研究は止めそのようなことを試みるものは島流しにしなければならないと。

全体の幸福に第一優先順位をつけるとき、強烈な絆である親子、夫婦といった血縁はすべて取り除かれ卑猥なものとして扱われる。

強い情念を形成する親子の愛情、夫婦の憎しみ、、こういったものは取り去られみな仲良く自分の居場所に満足しねたまず受け入れやっていく。

このような教育は瓶詰の胎児のときから始まり、成人しても終わることがない。 そしてそれでも憂鬱な気持ちになるのならばソーマという副作用皆無(ただしさすがに摂取しすぎると早死にするらしい)の麻薬が支給されるのでこれを飲めば見事解決といった塩梅た。

 

ほんとはゾッとしなくちゃならないのよ。

だけどなんだかうらやましい気持ちにもなってしまう。 はたからみればひどいことになっているのかもしれないけど、この世界観の中に住んでいた場合はたとえイプシロン階級(最下層)であったとしても自分自身に満足するように知能も体も作られ、毎日1日を幸せに過ごすのに十分なソーマも支給され、決して飢えることがなく何を見ても聴いても自分自身は楽しく幸せでいることができる。  上層階級をうらやましいとも思わないで足ることを知っているのであれば、偽物かもしれないけどそれは幸せなんだろうなって。

うすぼんやりした幸せだけど、殺しあったり憎みあったりよりかはよほどよさそうに見えてしまう。

 

それで生きていると言えるのか?

ああ、それは言わないで。 それを言ったら今でさえ答えることができないから。

 

この小説に薄気味悪さや居心地の悪さを感じるけどそれでもありなんじゃないかと思わずにいられない。

 

この世界の中にあっても自意識が強く輪に溶け込めない異端者は島に送られる。

皆と相違するものが自意識が高くなってしまうっていうことで、ああ、私もほんのちょっとだけこのタイプかも、、と思うとこの世界でも完全に幸せになれ無そうで、、、。

 

ムスタファさんに同意するのは科学になんでもかんでも好きにやらせてはいけないということ。

好きにやらせてたらそりゃあ、選民的な人類を作ってしまいますよね。 

 

面白いので読み返している。。。