呑龍文庫 ももとせ
昨年の9月以来、約半年振りに群馬県太田市にある和カフェ『呑龍文庫ももとせ』に行ってきました。
“子育て呑龍”の名で地元の方に親しまれている大光院の参道沿いにあるこちらのお店で
春の訪れを感じさせる和菓子をいただきながらゆったりとしたひと時を堪能しました。
“子育て呑龍”の“呑龍”とは、徳川家康が先祖とする新田義重を祀るため大光院を開山した呑龍上人のことです。
さらに、この大光院では上州太田七福神の一つである弁財天を祭っているそうですが・・・荘厳な造りの本堂の、
優雅に張り出した屋根や美しい紅色の柱などを見ていると、確かに弁天様の面影を感じることができます。
他にも見所は満載で・・・本堂前の立派な黒松は、その形から“臥龍松”と呼ばれているそうです。
そして、本堂へと伸びる回廊も寺社仏閣のファンはもちろん、建造物マニアの心をくすぐることでしょう。
実は、梅の花を撮ろうかと思って訪れたのですが、境内の梅は全く咲いていませんでした。
隣接する公園にはちらほらと花を付けている木も見られましたが・・・まだ早かったようですね・・・
それでも頑張って撮ってみましたが・・・というのも、これから訪れる予定の今週のスイーツが・・・
・・・そろそろ梅の撮影を切り上げて、日が傾く前に境内を後にすることにしましょう。
やや寂れた感はあるものの、逆にのんびり静かに散歩するにはちょうど良い参道には、昔ながらのお土産屋さん一軒・・・もう一軒・・・
参道沿いの住宅の軒先には春を告げる花を見ることもできました。
さらに歩いて突き当たりに近づいた頃、目的のお店に到着です。周りにお店は全く無く、ここが参道であることを忘れさせます。
大きな市松模様の暖簾をはじめ、かつての商店の意匠に上手く調和させたデザインのセンスは流石としか言いようがありません。
呑龍文庫 ももとせ
遠くに見えるのはさっき通り抜けてきた大光院正面の大手門。こうして見ると参道というより住宅街の路地ですが、
徳川家康による大坂城落城の日のまさに当日に落成したため、吉祥門と名づけられたという逸話があります。
外観のショーウインドーに飾られていたのは・・・訪れたのがちょうど冬季オリンピックの頃だったのです・・・
高い天井にローソファー&テーブルが配された店内はとても広々としていて開放感に溢れています。
しかも、カフェスペース側の壁一面の本棚には様々なジャンルの本や雑誌、写真集等で埋められていて、
自由に読むことができます。この本棚から新しい出会いがあるかもしれないと思うだけでワクワクしてきます。
カフェスペースの奥にはカウンターもあって、店長さんと語らいながらお茶やコーヒーを淹れる様子を眺めることもできます。
Cindyは・・・今回もミッドセンチュリーデザインのラウンジソファーに座ることにしました。
前回訪れた際のこのソファーの座り心地が忘れられず、最初から決めていました。
見上げると・・・ポール=へニングセンのランプシェードかな?
このレトロフューチャーなデザインが堪らないのです!!
カフェスペースの向かい側半分はギャラリースペースになっていて、お茶やコーヒーに関連した器具はもちろん、
オーナーの類い稀なセンスによって全国から集められた日常生活に彩りを添える品々が展示・販売されています。
木や陶器、ガラス、金属など、様々なマテリアルから作家の類い稀なる感性によって作られる道具は、シンプル且つ実用的で・・・何より美しい!!
こちらの粉引湯呑みは陶芸家片瀬和宏さんの手によるもの・・・色合いや皹の入り具合に暫し魅入っていました・・・
日々の何気ないコーヒータイムが愛おしいひと時に生まれ変わるような、そんな気にさせてくれる道具の数々・・・素敵ですね・・・
えだ豆おかき(東京)
養老豆(岐阜)
塩昆布(羅臼)
『呑龍文庫ももとせ』のメニューはいたってシンプルです。全国から厳選された緑茶、紅茶、コーヒー。
そして、一緒にいただく和菓子は、週替わりで用意される3種の干菓子と2種の上生菓子のみ。
和菓子は2段の重箱に入って目の前で開けられますが、その瞬間の高揚感といったら・・・
咲き分け (キントン製、こし餡)
同じ根より紅梅、白梅の花が咲く様を表現しています。
相生キントンとも言います。
早わらび (薯蕷饅頭、こし餡)
わらびの新芽が、すくすく伸びていく様子を表したお菓子。
春に向かい成長する植物の生命力を感じます。
今週の上生菓子は春の訪れを感じさせてくれる2種となりましたが・・・
冒頭のphotoでもお伝えしたように、紅白の梅の花を表現した「咲き分け」をいただきました。
それでここに立ち寄る前に大光院で梅の花を撮影したのですが・・・こちらの方が“満開”でしたね・・・
断面を撮ろうと真ん中に入れた黒文字をやさしく押し返す心地好い弾力が指先に伝わります。
紅白の餡でできたそぼろの、舌先に吸い付くようなもっちりとした食感と淡く軽やかな餡の甘さの
一見、相反する二つの感触が違和感無く口の中に伝わって、思わずうっとりとした気分になります。
さらに、紅白そぼろの中心に忍ばせてある繊細で上品な甘さの漉し餡は滑らかな口当たりで、
まるで周りの紅白そぼろにやさしく寄り添うように、口の中でふんわりと広がっていきます。
“相生キントン”とは伝統的な和菓子の一種で、あの能の「高砂」に出てくる相生の松からきているとのこと。
松は、古来、神が宿る木とされ、常緑なところから「千歳」とも詠まれることが多く、長寿のめでたさを表します。
また、雌雄の別があり、夫婦を連想させます。「高砂の松」と「住の江の松」と合わせて「相生の松」というようです。
縁起の良い“紅白”をあえて梅になぞらえて早春のこの時期に提供するももとせのセンスに脱帽なのです。
和菓子には緑茶が似合うのは重々承知しておりますが、今回は敢えてコーヒーを合わせてみました。
ちなみにコーヒーは高崎市のtonbi coffeeの豆を使用しているとのこと・・・まろやかなロースト感が
「咲き分け」の繊細な味わいを邪魔しないばかりか、仄かな甘みを一層引き立ててくれました。
小春日和の麗らかな午後のひと時を、のんびりまったり心地好く過ごすことができました・・・
呑龍文庫 ももとせ
373-0027 群馬県太田市金山町 14-7
0276-55-5460 13:00-19:00
定休日 水・木曜日