Q1 マルゼン薬局さんの取り組みについて教えてください。
A ありふれた言葉ですが
「保険薬剤師の育成」と「薬学生の実習」受け入れ、指導に力を入れています。
「薬学実習」は大阪でトップクラスの受け入れ数を実施しています。
実習生を受け入れるメリットはあまり語られていませんが、
薬学部が6年になって薬剤師を現場で教育することは当たり前になったと思いますし、また、薬学生と接することで
自分の何が足りないか?
と志気が上がるのは間違いありません。
今の薬学教育、指導薬剤師の育成についても理解が深まります。
「保険薬剤師の育成」は薬学部に未だ有資格での「研修制度」が
ないわけですから、
教育は職場で行わざるを得ないという意味で
「責任重大」という気持ちで行っています。
新人研修と能力向上の研修の2つに分けています。
「自分を高めようという人」が受講できるプログレッシブな研修会は4本あります。
参加は自由で経験に関係なく誰でも参加できるようになっています。
Ⅰ、「症例検討会」は毎月身近な症例から、あえて症例の少ない重要な疾患をテーマとして発表させています。
BC肝炎、潰瘍性大腸炎、結核、片頭痛、パーキンソン、認知症、緩和、麻薬オピオイドなど。
Ⅱ、高度な知識スキルを身につけるために「5大抗がん剤」を勉強会で実施しています。
「胃大腸がん、乳がん、肺がん、腎がん、白血病」です。
成人病、北野、医療総合センター、阪大病院の腫瘍内科医にお願いして教育レクチャーを毎年行っています。
Ⅲ、「在宅訪問」の症例をベースに在宅医から指導を受ける在宅医同行カンファランスを行っています。
そこに地域のケアマネを呼び他職種混合の
言うなれば地域症例検討会を実施しようと考えています。
Ⅳ、CASP(各大学で実施されてる英文献批判的吟味)教育を社内で実施ています。
新コアカリには4年時に医薬論文の批判的吟味と文献検索抽出が入る前から、『EBM』能力を身につける取り組みを実施しています。
EBM英医薬論文を検索し提示できなければ、そういう教育を受けてる医師には相手にされませんし、
MRの提示するエビデンスがいかに陳腐か?を
逆に教えてあげないといけないかもしれません。
そういう薬剤師になるための期待の表れです。
すでに国家試験にもそういう問題が出てきていますね。
そして、もうひとつが基礎からの入社後の新人研修です。
大学4回生のオスキーから始まり無資格の実習を経て
社会人入社後の「実務研修」という流れからも大切です。
弊社では1年で「全科処方」経験できる店舗ローテを2年間行っています。
Q2 今後の医療の展望について、お考えをお知らせください。
A ほとんど語られていませんが薬剤師として知っておきたいことは政府が赤字財政で、その支出の30%が社会保障費に消費されています。
家計に置き換えればわかりやすいでしょう。
医師の数が30万人、病床169万床が高齢化を迎える今後も全く増えない中で
看護師140万、薬剤師数は現在28万人ですが、
薬剤師と看護師数だけが大きく増えるのは知っておくべきでしょう。
医療のコストダウンを目指す政府は
「病院終結医療」から「地域終結医療」
へと変更し(2014年改定)ました。
現在は、まだ空きベッドがあるためステージⅣや点滴の必要な患者さんでも病院で過ごされ、在宅医は週に2回は訪問診療を行っています。
2025年前後にはベッドに空きがなく患者さんはトリアージされ
地域で患者が増える中で、
医師は月に何回訪問診療ができるか?
そのフォローは誰ができるのか?
と気づきませんか?
薬剤師にこそ地域で医師の代わりをするその期待と役割があるということです。
「2025年」には超高齢化が始まり、
それが30年は続くということです。
「2055年」頃には今の若い薬剤師さんらが何歳か?です。
一生薬剤師として「高齢化」と向き合って行くことを
早く知っておいて損はないと思います。
今の学生実習中に地域医療は上記の点滴や重症の方は院内に留まっていて地域の現状がわかりにくいですが、
必ず、地域において、薬剤師が医師の代わりをする時代が来て、薬剤師が活躍するという時代が必ず来る!のは間違いないと感じています。
Q3 今後、薬局の生き残りに必要な事は何だと思われますか?
A まず、国の財政がないわけです。
当然、保険薬局の一人勝ちはないと思われます。
それは病院も老人施設も同じです。
各医療機関は「今までとこれから」は違うと認識できるかです。
2000年度までは日本の国において保険薬局に薄日すらさすことはなかった分、
約15年間『大盤振る舞い』がなされて処方箋薬局の普及が政府主導でなされてきましたがこれからは今の「歯科診療報酬」のように無駄が減算されることを予想しています。
「外来調剤」しかしていない、患者を集めるだけで忙しすぎて、
薬歴簿も満足にかけていない服薬指導もできていない所は多いでしょう。
しかし、GEの変更加算の次は、在宅訪問実施回数、訪問看護師や在宅医と連携が取れてる薬局への評価が加算されだしています。
調剤報酬の見直しが度々行われ、外来調剤は減算になりますが、
高齢化の地域医療を見据えていれば、地域の保険薬剤師の役割はむしろ高まります。
そういう国の施策に従っていれば、心配はないといいますか、
それしかないと感じています。
Q4 薬剤師として、必要な事は何だと思いますか?
A 医師に頼りにされ必要とされる薬剤知識を持ち、責任を持つことです。
月に50件訪問診療に行く在宅医と複数おつきあいしていますが、
薬剤師が自分たちの役割を理解していないに驚かれます。
フィジカルに興味を持つのは悪いことではありませんが、
そのフィジカルに責任を持てない(裁判で勝てない)のなら、
薬剤のことにもっと責任を持て!と言われます。
なぜ!?俺ら(医師)が在宅現場でチマチマ「今日の治療薬」を引かないといけないのか?
寄り添う薬剤師が生きる『今日治(コンチ)』になってくれたらそれが一番いい!
と言われれます。
腎機能低下者に使える薬剤の選別、抗生剤のコンサルト、抗がん剤の副作用対応、タイトレーション、抗血栓薬のモニタリングのアドバイス、麻薬のスイッチングや突破痛の対応などなど。
すべて薬剤のことです。
そういう使える薬剤知識が必要で、そこに責任を持て!と言われます。
また、主治医が患者のすべてに責任を持つ!という考えの医師が
多受診されていた通院困難になった患者の薬剤を減らせないでいると言われます。
「ポリファーマシー」を改善できるのは薬剤師だけなのです。
そういう幅広い薬剤知識を幅広く持つことも大切だと思います。
Q5 薬学生へのメッセージをお願いします。
A 看護学部が乱立しています。
そこに大学院ができて
「特定看護師」が生まれてくることをどう思いますか?
特定38行為ができるようになり、薬剤調整も託される。
片や、6年制薬学部を出ても
欧米のように「Pharm.D(職位)」を名乗れないままでいいのか?です。
投薬調剤だけでなく、メディカルレコードとしての「薬歴簿」をしっかり書け、
薬局の中だけでなく在宅の薬剤管理、服薬、効果まで
包括的に患者さんを理解できるようになって
自分で「臨床知識技術」を磨き、「Pharm.D」を名乗のれるようになって欲しい!
特定看護師だけでなく新しい6年制薬剤師とは「こうだ!」と名乗れる
薬剤師になってほしいと思います。
薬学部が4年から6年制へと変わり、今の5年生で5期生です。
「トップグループ」という言葉をご存知ですか!?
世間では、誰が?どこの6年制薬剤師が踊り出てくるか!?
固唾を呑んで見守っています。
そんなスターダムに躍り出るような薬剤師の期待がある幸せな世代なんです。
皆さんは。
いつまでも、今までの薬剤師に今まではこうだったと教えてもらってばかりではなく、
これからは違う!と言える真の薬剤師の登場を待ち焦がれてるのです。
医療現場に早く出て、
しっかり学んで医療に携われる薬剤師としての真価を発揮してください。