もう寒中お見舞いの時期になったというのに、まだ”書き初め”ネタで引っ張るかい?という気もしますが…
筆者まるゆい個人的に、「冬休みの宿題」で最も難関だったのが、この”書き初め”。なんだかんだ言ってお習字ですから、字を書くだけじゃん…というわけにはいかないのは、まぁご想像がつくかと思うわけでして。豪快に、でも丁寧に…などと言っているうちに、書き損じの山を築き、少々ベソかきながらようやく完成、というのがその時分の定番コース?でございました。
さて、さすがにこちらはきっちりと完成されたステージですが、現代では結構な難関といえる、人間関係の距離感。直接コミュニケーション以上に、様々なSNSやら××サイトのようなネット上でのコミュニケーションの海を泳いでいかなければならない…となると、これもまたいろんな機会で考えさせられるものになります。
そんなわけで、”書き初め稿”最終の3稿めは、上井草はエリア543での、2019年”ぶたい”の締め。そして当日記のテーマを”ぶたい”にも広げてくれた碧月(みずき)あいさんの休止前最終のご出演の舞台でもあります。筆者が観たのは、全8ステージのうちの千穐楽。したがって、あいさんのラストステージを観てきたことになります。
お題の「距離感センシティヴEP」。そのままストレートにセンシティヴとまで付されています。そのとおりのお題目といった印象がありますが、さて、20人も入ればもう一杯の隠れ家のようなステージで、微細なところまで研ぎ澄まされた人間模様が展開されていきます。
お題1:狢と縁を切る
当日記の“ぶたい”の稿ではそろそろお馴染みな方と言える、長友美聡さんがご出演。しかも、ちょっとヤンキーっぽい柄の、光沢付きパーカーを着ての登場です。え。。。最初にみたときは大変心細そうな役柄だったのにな(笑)。観るたびのこの振り幅にまず注目なわけであります。
舞台上には、この“ヤンキー姉さん”の弟くん、そして弟くんの彼女の3人。そして、姉弟の親と思しきひとが電話ごしに会話に登場。弟くんに彼女がいるくらいですから、姉弟間の仲はそんなに悪くはないんだと思いますが、親との折り合いはどうにも…というシチュエーション。“わかりやすい抵抗”を示すお姉さんに対して、どことなく達観した感のある弟くんと、その対応やものの考え方には少々差があるようです。そして、その会話からどことなくルーズなイメージが見え隠れする親とは、最後には2人とも関係を絶ってしまいます。うーん、なんだか微妙な関係。どこにでも・・・とは言いませんが、しばしば見聞きするもの。
弟くんの彼女は、その両方に合わせなくてはならないわけで、イチャイチャ…とはほぼ正反対に、分かりやすくご機嫌を伺いながらの会話。一方、姉弟のほうは、その見た目や仕草とは逆に、この彼女さんに精一杯のフレンドリーさを見せるのですが…。融合し合うのは、終わった後のご想像の範疇のようです。
お題2:Range finder
川村知香子さんによる1人芝居。もともとは2人芝居の演目だそうですが、ご出演がおひとりということは、会話の半分は観るものが想像するしかありません。
知香子さんが演じるのは、呼びかける側。その表情と話し方から、場面場面を想像することになります。なので、台詞としては「おはようございます……おはようございます!」のように、同じコトバが何回も繰り返される部分だけが表に出てきますが、まさに言い回しで想像させる力がそこにはあります。はじめはちょっと様子を見まわすように…。そして、すごく明るく呼びかけてみたり。具体的には何も示されませんが、相手がどんな人なのか、見る人それぞれでまちまちであったとしても、それを想像してみること自体の面白さを感じます。仲の良いひとだったり、会社関係だったり、一緒にいるペットだったり…実に様々な情景を想起させるステージ。たぶん観た人それぞれの想像がバラエティに富んでいると思われるせいか、意外にTwitter上ではあまりコメントに遭遇しなかったのですが、語らせたら十人十色どころの騒ぎではないかもしれませんね。
お題3:鯨は弧を描く
あいさんご出演の演目です。昨今のSNSでのやりとり、特に配信をテーマにしたストーリー。それを、「鯨の発する声」に秘められたある事実を語ることから導入しています。なんでも、鳴き声の周波数で仲間同士であることを確認するそうなのですが、たまに”違う声質”の鯨さんがいると、そのお声は全くといっていいくらい通じないんだそうです。
導入と最後に現れるこのセッションで、この日の出演者全員が舞台上を彷徨い歩きます。仲間とそれ以外…というところからの着想である距離感がありあり。。。
あれ、じゃSNSはなんなの?ということになりますが、どちらも“うまく交わらないことがある”…という共通点があります。
本題部分は、昨今のSNS、特にツイキャスに17にYouTubeにLINEに…といった映像配信にまつわる場面。
あいさんはこの中で元アイドル、そしてご自身は配信サイト上でのコメント書き込みの形で登場します。舞台の上では、パペットを手に持ち、このパペット、つまりサイト上のアイコン画像とコメント欄で語られることを演じていきます。”顔が見えないコメント”なので、台詞、とくにそのおしゃべりの仕方は相当に無機質。一方でアイコンたるパペットの顔は、漫画のようなかわいさがあります。このギャップ、現実でもその通りですね。
一方、舞台上で”配信する”のは、今回はまさしくコメディエンヌであった伊藤ゆかりさんと、お題1ではヤンキーだったはずの長友美聡さんが、このお題では気弱そうな相方として登場しています。駆け出しのアイドルコンビという設定。美聡さんと対照的にあっけらかんとしたゆかりさんが、いかにもな雰囲気を作り出しています。衣装もやっぱりゆかりさんのそれは見た目にもコメディエンヌを想像させてくれるもの^^
配信ですから、いろんな人がそれをやっていて、主婦がヒマつぶしにやっていたり。
そしてコメントする側は、それよりもはるかにいろんな人がいるわけで。
かまってちゃん、過去を持つアイドル。現実に起こりうることを凝縮したようなシチュエーション。出会いにまでたどり着くこともありますが、そこにはちょっと怪しいシチュエーションがあったり、普段顔が見えないからこその行き違いがあったり。
これもまさに、適切な距離感を保つのが、つまり、配信する側、そして受け取る側がどう日常の生活に悪影響を及ぼざすにうるおいをきちんと取得するか。現実そのものという気がします。
そして、あいさん、この演題の終焉をもってしばしのおやすみ。
まぁ、まだ学生さんでもありますので(いま大学2年生とのこと)、どのように進むか、ちゃんと考えてみること、さらにそれを遠くから包み込むように見守るというのも、現実の距離感なのかもしれません。
どのようなお姿になるのか。あるいは演じてもらう側になるのか。
公式ブログには冬眠と書いてありますが、実際には違うはず。思う存分学んで、大きくなって戻ってくるであろう、次なる姿を楽しみにしておきたいと思います。
ありがとうございましたぁ。