2023年も師走に入りましたが、今作はしばらくのご無沙汰、"この男"が登場する当別荘の異色シリーズ、「た」企画です^
2008年開始の「た」シリーズ、今作で40巻を数えさせて頂きました
今回はどこへ現れたのか?早速スタートです
「た」現れました!
武蔵野線/中央線が交差する↑西国分寺駅
武蔵野線は、今年(2023)で開業50周年を迎えました。東京外環状線として、高度成長とともに需要が高まった貨物列車を捌くために建設されましたが、今や朝ラッシュ時は首都圏屈指の混雑を呈する通勤路線へと成熟しました
しかし西国分寺、喧噪の駅から一歩出たら、武蔵国分寺跡が駅近くに広がる歴史エリアとなっています
今作は、前半で国分寺跡周辺を、後半では小金井市へ移動して、初訪問の"歴史スポット"を訪ねます。「た」流街ブラ、スタートです^
武蔵野線の高架下をくぐり、国分寺跡へ
駅近くでは、↑国分寺市役所の新庁舎が建設中
かなり大きな新市役所が出来そうです
建設現場向かいの路傍には、↑"東山道武蔵路"の道標がポツンと
駅から数分で、大きな公園に
ここは・
武蔵国分寺公園ですが、国分寺跡の史跡は公園の外にあります。
公園の中を歩いていきます
叢林だった武蔵野の面影をとどめる、緑豊かな公園
公園を通り抜け、さらにもう少し歩くと~
ありました!
奈良時代/天平期、聖武天皇が各国毎に設立を命じた国分寺の一つ、武蔵国分寺の跡地です(※国史跡)
一部、基礎が復元されているエリアもあります。
金堂や講堂等の七堂伽藍が立ち並んでいた太古の姿を、現地に残されているわずかな痕跡から想像します
↑国分寺のニャンコ発見w
かつては"七重塔"も建っていたという威容を誇った国分寺でしたが、律令制の衰退と運命を共にし、武蔵野の緑へ戻っていきました
後に再建された『薬師堂』へ行ってみます
↑仁王門をくぐると~
木立の中に佇む薬師堂。現在のものは江戸期に再建されました(※国分寺市文化財)
当初の国分寺は鎌倉期、分倍河原の戦いで焼失しました。
薬師堂から少し離れて、↑『楼門』も存在します。
1895(明治28)年、東久留米市の寺院から移築したもので、江戸期の楼門造りの特徴をよく留めるものとして貴重との事です(※国分寺市文化財)
楼門の奥には、↑現在の"国分寺"があります。分倍河原の戦いで勝利した新田義貞によって再興されたとの事(※真言宗)
国分寺の横に延びる遊歩道をすすむと~
カフェ/交流施設の↑"おたカフェ"があります
(※国分寺市がNPO法人に運営を委託)
その向かいにある、↑国分寺跡資料館を見学します
(※チケットはおたカフェで購入)
小じんまりとした館ですが、武蔵国分寺の歴史は勿論、縄文期から人住があった同市で出土した様々な文化財を展示
僕は"宇宙人説"を信じているw、↑土偶も
↑興味津々に覗き込む「た」
関東一円でよくみられる板碑。当地に広がった仏教文化を伝えます。
段々と見学のしかたが↑怪しげになってきた「た」w
↑トキの剥製がありました。
明治期までは武蔵野の森にも飛んでいたトキ。本年6~7月に連載した佐渡ツーリングでもトキを取り上げましたが、トキは感染症等のリスク軽減のため、多摩動物公園他全国4ヵ所で分散飼育されています(※↑同館の剥製は、いしかわ動物園にいた個体)
全国に分布した国分寺の歴史についても展示。興味深い資料館でした
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西国分寺駅へ戻ってきました。
昼食後、少し移動して・
中央線・武蔵小金井駅へ
車庫があるので同駅止の電車も多く、首都圏では知名度ある駅ですが、午後は小金井市にある、知る人ぞ知る野外博物館を訪ねます
武蔵小金井駅からバスで約10分、降りるとそこは~
都立小金井公園です
各種スポーツ施設もある、広大な公園です。
面積約80ha、都内有数の広さを誇ります
SLが保存されている一角もあったんですが、今回ここを「た」が選んだ目的はこれではなく・
同公園内にある、『江戸東京たてもの園』を見学するためです
入口は、皇居外苑から移築した『光華殿』をビジターセンターとしているんですが、↑残念ながら工事中で全容は見られませんでした。
内部は平常通りとの事で、入ります
小金井公園の一角を占め、主に都内から移築してきた古建築物を保存/公開している野外博物館です。両国にある江戸東京博物館の分館(園)という扱いになっています。2023現在、約30棟の保存建物があります
園内は、『西ゾーン』『東ゾーン』に分れています。
西ゾーンから先に見ていきます
↑現世田谷区に建っていた、綱島家住宅。江戸中期の典型的な農家の様式をとどめています。
西エリアに何軒かある藁葺きの民家、かつて武蔵野で営まれていた暮らしを21世紀に伝えています
西エリアで異彩を放っていたのが↑の藁葺き。鹿児島・奄美大島にあった『高倉』で、湿気や鼠から収納物を守るため高床式になっています。
これを含め数棟は、元々当地にあった"武蔵野郷土館"から引き継いだものです。旧武蔵野郷土館は1991年に閉館、それを拡充する形で1993年にオープンしたのが、この江戸東京たてもの園です
↑港区にあった豪邸、三井八郎右衛門邸。和洋折衷を採り入れた内装でした。
各建物は基本、内部も見学出来ます
↑畳敷きの部屋にベッドや机。建物内に学芸員さんがおられる場合もあり、解説もして頂けます。
↑は、板橋区にあった写真館の建物
撮影スタジオは↑2階にあり、当時照明器具が限られていたので、側面に大きな擦りガラスを配して採光できるよう設計されました。
1階には、↑コンビニのイートインスペースのようなw窓に向いた机と腰掛が
写真館の横にはなぜか、↑ボンネットバスが
元都バスかと思いきや、なんと航空自衛隊が使用していたものとの事で、都バス風にしたのは映画ロケに使われた時からだそうです。
↑文京区にあった旧小出邸。大正期の建築で、一見洋館ですが、写真では街路樹に隠れている所に一部瓦屋根もあり、和洋折衷となっています。
↑は建築家だった前川國男邸。1942(昭和17)年、品川区に建てられ、玄関側から見ると和風にも見えますが・
庭側から見ると、戦時中に建てられたとは思えないような洋風テイストも感じます。
内部も凄くモダンで、戦時中にこんなお洒落な家を新築して大丈夫だったのかと心配してしまう程です
食堂/台所は、この時代でなんと↑カウンターキッチン
↑当時最先端だったろう、輸入品の電気コンロ(※グリル付)も。
前川國男さんは我が国モダニズム建築家のパイオニアだったそうで、アノ丹下健三さんも部下だったとの事。どうりで・という感じでした
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続いて、東ゾーンへ
東ゾーンのかかりには、同園で一番大きな保存建物があります。
それは~
木立の中、ひときわ威容を放つ↑大きな家屋。
港区にあった、元首相/蔵相/日銀総裁・高橋是清邸です。
10以上の部屋、広い庭園や中庭も配する是清邸、アノ226事件で彼はこの自宅に乱入した刺客に暗殺されました。
↑明治期の高価なガラスがふんだんに張られています。
是清邸については、僕が今作で注釈を付けるのも憚られるスケールでした。是非実際に訪れる事をお奨めします
是清についての年表に見入る↑「た」。
ここで、彼の概略を簡単に纏めておきます。
高橋是清(1854-1936)
わずか13才で渡米の機会を得るも、現地で騙され奴隷として売られる等とんでもない境遇も経ますが、貴重な海外経験と語学力を得て帰国。20代の頃は英語教員等を転々とするも、その後明治政府の公務員に転じてからは頭角を現し、さらに日銀に転じては金融畑に入ります。
政界入りしてからは大蔵大臣に通算6度就任。当時世界を襲った金融恐慌を収束させた手腕が高く評価されたのはご存じの通りです。短命ながら総理大臣にも一度就任。しかし晩年、軍事予算を抑えようとした事が旧日本軍部の反感を買い、226事件で、この邸宅に於いて暗殺されました。
今も伝説となっている是清の金融政策、ひと頃「ワシは平成の高橋是清になる」とか言ってた先生もいましたがw、命を賭けてまで軍部の暴走に歯止めをかけられる人が現在の政治家にはおられるのでしょうか
あと余談ですが、この「た」シリーズで元宰相の邸宅関係を見学したのは、なんとこれで4度目です
☆2018年、第24巻で訪ねた、吉田茂邸(※神奈川県大磯町)
☆2021年の第32巻で、伊藤博文金沢別邸(※横浜市)
☆本年(2023)春、第38巻の西園寺公望別邸・坐漁荘(※静岡市)
☆そして今作、高橋是清邸。
なんで「た」は、そんなに元首相の家が好きなんだろう・w
↑庭園の一部も、元の形を復元しているとの事。
歴史の舞台にもなった、貴重な高橋是清邸でした
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東ゾーンは、店舗が主になっています。
↑は、台東区・不忍池の近くにあった化粧品店。1928(昭和3)年築との事
そして、この奥↓が、同園で最も"バえる"エリアです
東ゾーンのメイン、"下町中通り"です
↑カメラを向けている「た」
様々な業種の店を移築してきています
↑は青梅市にあった旅館。幕末頃の築。戦後しばらくまで営業していたそうです。
↑内部は昭和20年代頃を再現
酒屋さんには一升瓶が並ぶ。全ての店舗で手の込んだ再現を施してありました。一見の価値ありです^
下町中通りの突き当りには、↑店舗では一番大きな建物が。
何屋さんかというと・
↑お風呂屋さんです。唐破風が立派で豪勢な玄関
足立区にあった『子宝湯』
脱衣室や浴場等、ほぼ完璧に移築(驚)
銭湯の定番、↑富士山の絵も見事
写真ではわかりませんが、広告等まで再現していました
番台の前にある、↑男湯⇔女湯の通路も通り放題という夢のような体験も出来ますw
子宝湯の隣には~
↑台東区にあった居酒屋・鍵屋です
「た」はこの建物が見たくて、今作ここをセレクトしたとの事
戦後の高度成長期位まで現役だったそうで、↑価格表も現在とそんなに違わない値段のものも。元々居酒屋好きの「た」大満足w
↑は模擬建物で、内部は1Fが休憩所、2Fにはうどん店が営業しています
↑店前に停めてあるリヤカー付自転車も展示物です。
自転車の奥は、江戸川区にあった和傘問屋です
下町中通りからは、↑長屋が並ぶ横丁も。
まさに"江戸東京たてもの園"の名そのものです
↑は"看板建築"と呼ばれる様式で、木造でありながら通りに面した前面は銅板やタイル等を張り、前面全体を店の看板のようにもデザイン出来ました。特に関東大震災後の都内で、防火と街並の美観を兼ねた復興建築として多く見られたそうです。
下町中通りの入口には、↑ポツンと都電が1両保存
1962(昭和37)年製造の7514号。銀座や新宿にも都電が走っていた頃、高度成長期の東京を駆け抜けた車です
ワンマン化改造される前に廃車になったため、原形をよくとどめている貴重な車両です。大きながま口を下げた車掌さんが「早速ですが」と言って切符を切ってくれた頃の車内です
↑童心に返る(?)「た」w
ただ、冒頭ご覧頂いたボンネットバスの保存場所には屋根が付いていましたが都電には無く、今後が少し心配でもあります
屋外見学を終え、ビジターセンターへ戻ります
↑灯台のてっぺんのようなものは、現上野消防署で1970年まで使われていた"火の見櫓"の頂上部です。
↑の交番も、実際街中にあった本物です。千代田区の万世橋(※秋葉原近く)に建っていました
↑の外灯は、皇居二重橋にあったものです。皇居のこういった備品は定期的に更新されますが、宮内庁から払下げ品が出る度に各地の施設で争奪戦になるそうですw
センターまで戻ってきました。
屋内の展示室を少し見てから出ます
前述の通り、ここは両国の江戸東京博物館の分館という事なので、展示は両国と提携した内容になっていました。
主に、江戸期~戦前位までの江戸/東京の街の成立ち~経過を解説していました。神田上水/玉川上水の2ルートで水道が通じていた、当時世界最先端かつ最大の都市と言われた江戸。鎖国で外国からの技術がほとんど入らない中、独自に街を発展させてきた江戸幕府と、それを支えてきた庶民のパワーには感服します
どちらかというと、先に建物を見てから帰りがけに展示室を見るほうがいいかもです
↑浅草の歴史パネルが、僕的にはちょっと興味深かったです。
明治維新直後、浅草寺の周囲を一区~六区に分け、各区ごとに街の性格を位置付けていく、今でいう"都市計画"のような事が行われました。
特に六区では明治期、興行場が立ち並んで一大エンタメ地帯になり、"六区"だけは現在もなお通称として使われる所以です
そんな浅草に建っていたのが、↑日本初の展望タワーの一つ、凌雲閣(※1890年竣功、高さ39m)
明治中期に都市部で展望塔を建てるのが流行し、大阪や神戸等にも類似のタワーが建てられました。日本初のエレベーターが設備された事でも知られますが、関東大震災で大破し、解体されました。
大阪・新世界に今も建つ通天閣に、往時の名残を感じる事が出来ますし、戦後も東京タワーやスカイツリー、横浜マリン/神戸ポートタワーや、札幌/名古屋の展望台を兼ねたテレビ塔等、日本人のタワー好きは変わらずです^
(※通天閣、「た」シリーズ初期に訪ねています)
戦後の東京都の歩み等に言及する展示もありましたが、ここでふと思い出したのが、「た」シリーズ19の巻(2015.12up)で訪ねた、練馬区石神井公園にあった同区立の資料館。ここと併せて見学すれば東京の近代史がより実感できるかもです
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たてもの館を出ました。↑晩秋のうろこ雲の下では、小金井公園陶器市が行われていました
本年ラストの「た」シリーズ、ここでお開きです。バスで三鷹駅へ戻り、「た」恒例の打ち上げのため、都心へ戻ります
着いたのは、日も暮れた池袋駅
今回「た」が予約した店はここだとの事(※「た」は、飲食の手配だけはちゃんとしてくるw)
国際色(?)も豊かな、夜の池袋^
↑居酒屋『八丈島』さんへ。一昨年の「た」企画で行った小笠原以来、すっかり離島にハマっている「た」は、最近こういう店のチョイスが多いw
島焼酎と八丈料理で、ちょっと早い忘年会となりました
又会う日まで!w
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今作さいごに、当別荘から告知(※予告)です。
この「た」シリーズと、
先月に納めをupしましたが、当別荘長年の柱、『ツーリング作』、
以上2カテゴリーについて、来る大晦日にupする年末総集編の際、重要なお知らせをさせて頂く予定です。今暫くお待ち下さい。
あと年内ですが、年末総集編の前に1作、鉄道作を上げる準備をしております。お楽しみに^
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☆関連作リンク
今作中で言及した「た」シリーズ中の作、↓リンク貼っておきます^
vol.212 「た」現る 第19の巻 酉の市&練馬・石神井散策 そしてなぜか浜松町^ | 旅ブログ Wo’s別荘 (ameblo.jp)
vol.284 「た」現る 第24の巻 湘南歴史散歩 小田原城&大磯に現る | 旅ブログ Wo’s別荘 (ameblo.jp)
vol.370 「た」現る 第32の巻 ”横浜の和歌浦(?)” 金沢八景に現る(浜のアメ横付) | 旅ブログ Wo’s別荘 (ameblo.jp)
vol.445 「た」現る(第38の巻) × 東海道53次⑮ コラボ作 興津宿 (三保松原付) | 旅ブログ Wo’s別荘 (ameblo.jp)
vol.67 「た」現る 第7の巻 「た」が似合うディープな街 大阪・あいりん地区&新世界に現る | 旅ブログ Wo’s別荘 (ameblo.jp)