「ぼくらは回収しない」(真門浩平 創元推理文庫)


部分日食の日、学生寮で女子学生が自殺した。自殺を装った他殺なのか。


という「ルナティック•レトリーバー」を含む5編の短編集。

作者は20代で、これからどんどん作品を出していくことでしょう。


青春ミステリのような感じはしますが、短編にもかかわらず終盤二転三転する、かなり精緻な構造のミステリであり、ダークなエンディングもあり、結構楽しめました。

私は、ちょっと前に流行った蛙化現象を扱った「カエル殺し」は好きです。


さて、表題「ぼくらは回収しない」という作品があるわけではなく、全ての伏線が回収されるわけではない、それが現実であり人生、という提示なのだと思います。

確かに最近のドラマ、アニメなどでも「伏線回収」にこだわり過ぎる傾向はありますね。

ジュール・ヴェルヌの「月世界旅行」を読みました。

アニメ「Dr.STONE」を観てたら、なんだか読みたくなって。


実は「月世界旅行」は、「地球から月へ(1865年)」と「月を回って(1869年)」の二作品のことを言います。

アメリカの南北戦争が終わり、出番が激減した大砲の技術を活かして、月に向けて砲弾を打ち込む計画になり、さらにそれに人を乗せることになるお話です。


19世紀の作品なので、夢物語に近いホラ話だろうと想像してしまいますが、資金集めの経緯が妙に細かったり、数学的な議論が何ページにも亘ったりとかなりリアルなストーリーです。

子供の頃に読んで「なかなかロケット(砲弾)が飛ばないなあ」と思った記憶がありますが、大人になって読むと、その辺が逆に面白いです。


実際のところ、科学的な記述については、私のような素人にもわかるような間違いは沢山あります。しかし、当時のジュール・ヴェルヌとしては、最先端の科学知識を嬉々として盛り込んだものと伺えて、なんだか楽しくなります。


さて、彼らは無事、月世界旅行ができたのか、ということはネタバレになるので書きませんが、感想だけ言うと、これでいいのか?これだから逆にいいのか?という感じですね。





「バイ•タイム 整時士佐藤スバルの哀切」(王城夕紀 新潮文庫)


高次知的生命体(OT)との衝突により、時間が歪む現象「渦」が発生するようになった世界。

その事故で妻を失った佐藤スバルは、6歳の息子ハルキに”絡まった”OTの能力を使って渦を解消する「整時士」になる。


渦は、人間の「時間を止めたい」「速く進めたい」などの潜在意識によって発生するため、その原因になった人を特定する必要があります。

つまり、SF設定による人間ドラマであり、特に人にとって時間とは何なのか、が主なテーマになります。

さらに、シングルファザーになったスバルとハルキの父子関係もテーマであり、親は子に対して自分の時間をあげる、それが愛だということに気づきます。

まあ、ちょっと恥ずかしいですが、私も経験的に頷けます。


まだ未解決の謎もあり、上司の加賀美マチア、バックアップの若林カナ、整時士の若林ツムギなど、面白いキャラクターがいるので、続編を期待したいです。