「アナヅラさま」(四島祐之介 宝島社文庫)


長野の山中にある、放り込んだものが完全に消滅してしまう大穴の存在を知り、若い女性の誘拐殺人を繰り返すシリアルキラー。

都市伝説「アナヅラさま」という噂が広がる。

行方不明の捜索依頼を受けた探偵、小鳥遊穂香は真相に迫っていくが。


ミステリでは、死体や証拠品を完全に隠すことができれば完全犯罪に近づくとされていますが、これはそこをクリアさせた特殊設定ミステリとも言えます。

ただこの小説では、「アナヅラさま」の存在自体はさほど問題ではなく、問題なのは「アナヅラさま」によって犯罪者となる人間だということだと思います。ちょっとポップな雰囲気もありますが、犯罪に至る過酷な背景も描かれています。


さて実は、冒頭で「アナヅラさま」となる犯人の素性がわかってしまうので、倒叙ミステリか、ホラーかなと思っていると、ちゃんと謎解き要素があり、ラストまで意外な展開が続きます。


久しぶりに楽しんでいるNHK朝ドラ、

「ばけばけ」もあと5週ほどです。


次からは熊本に行きますが、史実(小泉八雲)では熊本も良いことばかりではなかったらしいですね。

まあでも新たなキャラも加わるようで楽しみです。依然として怪談の話題はあまり出てきませんが、それでも面白ければいいでしょう。


さて、松江編の終盤の注目は、大盤石の錦織さん(吉沢亮)でしたね。彼の存在がこのドラマをより魅力的にしました。

直前、日本滞在記の「親友」という記述に喜んだのも束の間、ヘブンとはすれ違ったままの失意の別れとなり、しかも悪いことは重なって•••。


もっと錦織がヘブンにはっきり気持ちを伝えれば、という気もしますが、当時の日本人はあんな感じだったかもしれません。

まだ出番はあるそうなのでちょっと期待しましょう。


「雫の街 家裁調査官•庵原かのん」(乃南アサ 新潮文庫)


離婚、相続などの家事事件や、未成年犯罪などの少年事件を扱う家庭裁判所の命で、面談等による当事者の調査を行なう家庭裁判所調査官、庵原かのんが主人公の連作短編集の第二弾。


かのんは前作では少年事件担当でしたが、異動により本作では家事事件担当に。

凶悪犯罪とは異なり、家族関係に亀裂が生じた、ひょっとしたら周囲にもいるかも知れない状況の人々が隠しごとをし、かのんらがそれに寄り添って解明していく、というミステリになっています。

最後の「はなむけ」など泣ける話もありますが、釈然としない結末もあり、それがまたいいですね。

ドラマ化しても面白そうです。


なお、この小説の時代背景は、コロナ禍の真っ只中で、三密、アクリル板、マスクなど「あの頃やっていたなあ」と思い出されます。

そのうち「コロナ禍を知らない世代」も出てくるんでしょうね。