四国霊場第四十七番札所・八坂寺の境内にある「地獄の道(途)」の外にも中にも注目します。
「極楽の道(途)」にも極楽の図がありますが、そちらよりも地獄の絵のほうにひきつけられます。
あまりにもオドロオドロしい感じですし、地獄の亡者や鬼の表情が良く描かれていると思います。
この鬼は、嫌いなあの人に似ているなあ、とか、この亡者はあいつに似ているなあ、なんて思うことがあるかもしれません。
極楽浄土は、平穏な世界であり楽しみに満ちた世界。昔の人にとっては、渇望するほどの憧れの世界。あまりリアルな世界ではなかったでしょう。しかし、地獄となるとどうでしょう。「人間界」とは違うのですが、むかしは血で血を洗うような闘争ばかりで、欲望むき出しで骨肉の争うも多かったでしょう。盗賊も横行し、種々の犯罪もあり、道徳心のかけらもない人間が幅を利かせ、誰からも制裁されることなく、我が物顔で暮らし、弱い者いじめをしていたでしょう。飢饉があれば水資源の確保で村ごとに争ったり、わずかな食料をめぐって命懸けで争って、時には殺し合ったりもしたでしょう。
それはまさに、地獄を身近なものとして感じる状態だったかもしれません。
だからこそ、地獄の絵に迫力があるのです。