四国霊場・岩屋寺の行場(過去のブログ記事より) | 石川鏡介の旅ブログ

石川鏡介の旅ブログ

四国霊場会公認先達(権中先達)&秩父観音札所連合会公認先達です。四国霊場を中心に、古寺名刹、神社、城跡、名所旧跡。さまざまな旅の思い出を綴ります。

 

 四国第四十五番の岩屋寺には、このような伝説があります。はるか昔の大昔、土佐国の女人がこの地に移り住んだ。女は「法華仙人」と呼ばれ、不思議な神通力を持っていた。

 その「法華仙人」よりもさらに昔に、安芸国の猟師がこの地に来て観音の影現するのを感得し、岩屋の守護神となった、という伝説があるが、「法華仙人」はこの安芸国の猟師の霊異を聴いて移り住んだのだとも云う。とにかく、法華仙人は岩屋に参籠し、法華三昧を成就し、飛行自在の神通力を得たのだという。

 そうして法華仙人が住んでいたところ、弘法大師が現れた。法華仙人は大師の偉大さに心をうたれ、深く帰依して一山を大師に献じ、大往生をとげたという。

 そして大師は不動明王を安置し、護摩修行をなされた。

 (参考書:朱鷺書房『四国八十八所遍路 愛媛・香川編』、昭文社『四国八十八ヶ所巡り』、満願寺教化部『めぐりやすい八十八カ所 四国遍路』)

 

 この法華仙人の行場とされる場所が岩屋寺の本堂のすぐ近くにあります。本堂に向かって右側の、岩場のへこみのような所へ、段数にして十五以上(二十未満?)の大きなハシゴが架かっていまして、上には角材が敷きつめられてちょっとしたステージのようになっていますが、先達の方から、そのハシゴを登って行こうと言われて登りました。

 本堂の屋根より高い場所へ登るわけですから、高所恐怖症の者にとってはヒヤヒヤものです。もちろん、大工や左官、とび職、瓦屋、ペンキ屋などの職人だったら何でもないことでしょうが。

 暑さで汗が滴り落ちていましたので、かなり慎重にならないと手が滑るのではないか、とも思いました。登りきった時と、降りようとするときは特に気をつけなくてはなりません。実際、「途中で落ちて脚を折った遍路がいたらしい」(昭文社『四国八十八ヶ所巡り』と書かれています。霊場に来て怪我などしたら身内や知り合いに何を言われるか分かりませんので怪我の無いよう、心がけたいものです。

 ハシゴの上の、行場とされるステージ上からの眺めは気持ちの良いものでした。とはいえ、長い時間そこに留まっていよう、という気にもなれません。

 降りてから、今度は、大師が掘ったとされる洞窟に入りました。真っ暗な中をローソクの火だけを頼りに進みました。もちろんこの洞穴も行場で、穴禅定といいます。さすがに神秘的な雰囲気がありました。

 また、この境内の奥には「逼割禅定(せりわりぜんじょう)」という行場があります。岩山の間の人一人がやっと入れる狭さの場所から岩壁をよじのぼり、さらに鎖を伝って十メートルほど登り、今度は二十一段のハシゴを登る、という難所です。岩場でもあり、鎖や長いはしごがある為に雨の日や雨上がりの足場が悪い(だけでなく手も滑る)日はかなり危険で、滑落して事故死した人もいるそうです。この行場の頂上には白山権現が祀られているということです。

 この「逼割禅定(せりわりぜんじょう)」の入り口には門があり、厚い扉で閉ざされています。カギがかかっており、岩屋寺の住職の許可が無いと中には入れないそうです。今回は中に入らないことにしました。 

(2011年9月 3日の「石川鏡介のブログ」より転載)

にほんブログ村 旅行ブログ 遍路・巡礼へ
にほんブログ村