武蔵野三十三観音霊場の第二十八番札所は瀧泉寺(りゅうせんじ)です。正式には宝雲山瀧泉寺といい、宗派は真言宗智山派、本尊は千手観世音菩薩、所在地は埼玉県日高市横手七九の一番地です。
この瀧泉寺と二十九番札所には、九月二十三日にクルマで行きました。
二十七番札所の勝音寺からは二通りのルートがあり、二十六番の聖天院から勝音寺へ行く時に通った道に引き返して高麗川の上流の方へ向かい、高麗本郷(曼珠沙華の名所として有名な巾着田に近い)で右折して西武池袋線高麗駅の方へ行き、国道二九九号線に出て吾野方面に向かうというのが一つ。もう一つは、勝音寺からまっすぐ南へ進み、県道一五号川越日高線に出て西へ向かい、高麗本郷を経て久保交差点から国道二九九号に入り吾野方面へ、というルートです。
私がクルマで瀧泉寺へ行った時は飯能駅前から国道二九九号線に出てそのまま吾野方面へ向かいました。
久保交差点から瀧泉寺までは千百メートルほどの距離で、お寺は道路に面して建っています。この辺りはもうすっかり山の中で、平地が少ないためにお寺の境内は山の斜面に建てられているという感じです。駐車場は、道路を隔てた反対側にありました。
上流へ向かって進んでいたら右手に塀があり、ちらっと見えたのがお寺の境内らしかったので慌てて駐車場を探したのですが通り過ぎてしまい、ユーターンしてから駐車場にクルマを停めたのでした。
国道二九九号線は秩父・小鹿野方面への道でもあるのでクルマの通りが激しく、ダンプカーや軽トラックなどもたくさん通る(しかもスピードを出している)ので、駐車場から門前へ行くにもタイミングが悪いとなかなか渡れません。
そういう悪条件ではありますが、周囲の景色も空気も良く、車の通りの激しささえ気にしなければ清々しい気分になれます。
瀧泉寺は万寿元年(西暦一〇二四年)、竜尊上人によって建てられたということです。本尊の千手観世音菩薩像は弘法大師が刻んだものだそうで、本堂の前には真言宗のお寺らしく弘法大師の像があります。
本堂の天井には胎蔵界曼荼羅が描かれてあります。ガイドブック(平幡良雄著『武蔵野観音巡礼』満願寺教化部発行)には、「この寺で写仏を習っていた人たちが描いた」と書かれてあります。しかも九年の歳月を要したといいます。だとすれば何とも素晴しい、賞賛に値することではないでしょうか。お金だけ集めて有名な絵師に頼むならよく在る話だとも思いますが、プロの絵描きでもない人々が厚い信仰心で曼荼羅の絵を描き、それを天井に飾ろうというのは、まさに信仰心の結晶ともいうべきもので、心をうたれるものです。
境内には鐘楼や石塔もあります。
納経所へ行ってご朱印を押していただいている間にお茶をいただきました。
なんとも温かい雰囲気のお寺でした。