武蔵野三十三観音霊場の第二十二番札所は円照寺(えんしょうじ)です。正式には光明山圓照寺といい、通称「絵馬寺」とも「野田の弁天様」とも呼ばれます。宗派は真言宗智山派、札所本尊は如意輪観世音菩薩、所在地は埼玉県入間市野田一五八番地です。
二十一番の高正寺からは、県道一九五号線に戻り、西へ向かい、七百メートルほど進んだところで案内板にしたがって右折し、入間川に架かる橋を渡ってすぐです。右折した地点からの距離は五百メートルほどで、境内のすぐ北は細い道ですがそのさらに北は西武池袋線の元加治駅です。
境内の、池を中心とした景色がとても綺麗です。寺伝によると、この池は弘法大師ゆかりの霊泉で、大師がこの霊泉で加持したことによって堂宇が建てられたということです。後に鎌倉時代初期になって、武蔵七党のひとつ丹党の加地氏の菩提寺になり、加地豊後守家茂という人物が父親の菩提のため円照上人という高僧を招いて開山とし、諸堂を整備した。この円照上人の名にちなんで円照寺となったようです。
境内にある弁財天社は康元元年(西暦一二五六年)に厳島より勧請したものだそうです。水の湧き出る所や川のほとり、池や湖、海に面した所などは、弁財天と関係が深いです。厳島神社や竹生島、江ノ島、天河など、有名な弁財天の例を挙げるまでもありません(大きな池のほとりにある弁財天としては井の頭公園の弁財天が有名)。弘法大師ゆかりの池というのも「霊場」らしいですが、この円照寺も境内の池が弁財天を祀るに相応しい場所と考えられたのでしょう。お寺の案内書には、「高野山より丹党の氏神である丹生明神、また厳島より弁財天を勧請して丹党一族の鎮守として…」云々と書いてあります。円照寺が通称「野田の弁天様」と呼ばれるのはそのためです。
また、このお寺は一流芸術家や角界有名人が描いたたくさんの絵馬が奉納されていることで有名になり、それで「絵馬寺」とも呼ばれているのです。
お寺の本尊は加地氏の守り本尊、行基菩薩作の阿弥陀如来像。それを安置している本堂は昭和三十五年改築。また、北向不動尊は運慶の作。観音霊場札所本尊としての如意輪観音は小野賢一郎氏寄進によるもの。
寺宝として、重要文化財の板碑があります。加地氏累代の板碑で、六基が国の重要文化財、三基が県の重要文化財です。
境内の池は七不思議の池ともいわれていて、その七つとは、
1、流水のつきることなし
2、鉱泉の瑞現
3、蛙なくことなし
4、雑草生えることなし
5、水濁れば3日のうちに雨ふる
6、うなぎの片目
7、たにしの金色
だということです。