親友トモに言われたことが引き金になり、

母に、マンションを買おうと思っていること、名義を私にすることで、トモに「彼に騙されている」と言われたことを話した。

「ママもマンションを買うんは反対。どうしても買いたいんなら、あっちの名義で買うべきや。あの人の名義で買えないんやったら、賃貸でええんや。あんたの名前で買うことはない」

「一戸建ての自宅兼会社のローン払いよるから、マンションが買えんのやったら、その一戸建てのローンを会社の経費で払うようにするようにしたらええんとちゃう?」

「いまどきマンション買ったって、絶対売れんで。そんなたった10年だけ住んで、そのあと売って、東京に移り住むって、そんなことできるわけない」

「何であんたがずっと働かないかんの?仕事辞めて彼の会社手伝ったらええんや」

「そんな仕事を続けたいっていうけん、そんなもめごとがおきるんや」


そう、母はもともと、私が仕事をやっていることにあまりいい顔をしていなかった。

自分が専業主婦で3人の子供を育てたということもあるのだろう。

私が、なりたかった仕事に就けて、喜んで、仕事での面白かったことなどを話してると、すごく嫌そうな顔をしていた。

「ママはあんたがそんな日本語教師しとるってこと、何もすばらしいと思ってない」

「仕事なんか辞めて、とっとと結婚して子供産むべき。子供を産んで一人前。子供ができない夫婦いくらでもおるけん、できないんだったらできないんでいいんやけど、最初からそれを放棄するんはいかん」

と、前から言われ続けていた。


「だいたい、夫婦ってのは男のほうがお金を出すもんや。奥さんが旦那の給料をもらって、その中でやりくりしていくもんや。向こうのほうが給料多くもらいよんやけん、そうやって、あんたの給料は手つけずに貯金していって、旅行とかに使うようにしたらええんや」

「でも私は、最初から、自分の分は自分の給料の中から払う、ていうつもりだったけど」

「あほか。そんなんは、ただの同居人や。夫婦ではない」

私も世間知らずのところがあるから、そう言われると、そうかなと思ってしまう。


「離婚して子供がおるんはやっぱりいかんわ。子供の養育費を払いよるけん、マンション買うどころか、あんたを養っていくことができんのやろ?それにずっと養育費を払い続けて、子供に会って、前の家族と繋がっていて、ずっとそんなんが付きまとうんよ。そんなん嫌やろ?」

「あんたが20代でもっと若かったら、ママも反対しとった。でもあんたももういい年やけん、いいと言えばしょうがないやん」

「あんたが仕事ずっと続けていかないと生活できんっていうんもどうかと思う。子供やって作れんし」

「とにかくマンション買うんは反対」


「トモは、彼に騙されとるって言うんやけど」

「それはママもわからん。あんたが判断せな。あんた一緒におって、分からんか?まあ、騙すようなそんな悪い人ではないような気もするけど」

「でもそういえば家に来て結婚するも何も言わんかったな。まあこっちも聞かんかったけど」

「うん、私もそれは気になっとった。やっぱり私を騙そうとしとったんかいな。私を安心させるために実家に行こうって言ったんかいな」

「そうかもしれんの。あんた、それ彼に言わんかったん?何で結婚の挨拶してくれんかったって」


自分でもよく分からない。やっぱり私は騙されていたのだろうか。

しかし、彼のこれまでの言動が全て嘘偽りだったとは思えない。

やはり私のことを想っていてくれたとは思うのだ。

だが、最初のころ、離婚してまだ間もないのにすぐ結婚話。

この早急な流れに戸惑ったのは事実だ。

離婚の寂しさを埋めるために、だれでもよかったのではないだろうか。

私を愛してくれているのではなく、だれでもいいからそばにいてほしくて、

愛している、と思い込もうとしていたのではないのだろうか。

そして、「好き」「愛している」という意思表示。

そういうのは普段はそんなに言わなくて、たまに言うから真実味があるもので、

頻繁に言うのは嘘っぽく聞こえたものだ。

そういうのは恥ずかしくて言えない私とは違って、何でも口に出して言ってしまう彼の性格なのかもしれないが。

だが、「自分に自信がない、こんな私をここまで想ってくれる人がいるはずがない」

という気持ちと

「人が信じられない、真実の愛ってあるの?それにたとえどんなに好きでもいつかは冷めるんでしょう?」

という私のひねくれた思いが「騙されているのか」と疑ってしまう一番の大きい理由だったように思う。