プロレスを見るきっかけは橋本真也の試合で、当時IWGPの若きチャンピオンとなった橋本を格好いいと思い、追いかけ始めました。それがプロレス見るようになったキッカケ。
闘魂三銃士と呼ばれた、橋本と武藤と蝶野の世代。
甘いマスクで身体能力抜群で絶対的なベビーフェイスの武藤さん。橋本さんの対角に立つライバルとして認識。武藤さんより、橋本さんが好きだった。
それがそれで終わらなかったのは、グレート・ムタを見ちゃったせい。武藤さんのアメリカ修行時代の姿のムタは、新日の絶対的なベビーフェイスとしての武藤さんの1面を180度変えて、絶対的なヒールとしてリングに現れる。しかも、こんなのありか…というくらい、それまで思っていたプロレスの試合の概念を覆す、間の取り方、試合の運び方、進め方。
ムタの武藤さんを大好きになると、いかにこの人がセンスの固まりなのかがわかる。
格闘技色が強いと言われたUWFインターとの対抗戦で、格闘王と呼ばれた高田延彦さんを破った技は、プロレス技の足4の字固めだなんて、面白すぎる。
そうなると気になるのが全日本プロレスで、どんなプロレスやってるんだろうと思って、深夜の日テレを見ると、そこは三沢さんを中心とした四天王プロレスを繰り広げていて、馬場さんが解説席で涙を流すくらいもの凄い事をやっている。
プロレスに夢中になったのは、そんな時代。
プロレスとはゴールのないマラソンみたいなものと言っていた武藤さんが、ゴールとして引退する。
満身創痍の体の事くらいファンはわかっていて、足が駄目になるくらいなら、無理しないでいて欲しいって、そう思ってる。
橋本さん、三沢さんが、引退試合をする前に死んでしまって、この2人の分も含めて、引退試合をするんだってコメントを武藤さんが発した時に、武藤さんの引退試合は見届けなければならない、義務みたいな物。そう思った人は多いでしょう。
だから、武藤さんの入場の時、若手時代の入場曲の「ファイナルカウントダウン」からの…「ホールド・アウト」、ドームで何度も聞いた「トライアンフ」が流れた時には、周りの観客と同じ気持ちで、おおおおっ…って声に出して興奮したし、「nwoトライアンフ」からの「アウトブレイク」、歴代の入場曲で、それぞれの思い出の武藤敬司とファンはリンクしていく。
そして、最後にもう1回「ホールド・アウト」が流れると、本当に引退試合が始まってしまう…これが見納めなんだ…と、最後に悔いのないように「武藤、武藤、武藤」って、声に出して、最後の試合に送り出す。
武藤さんと橋本さんのIWGP戦を見て、プロレスに夢中になって、自らもプロレスラーになって、あの日に憧れた武藤敬司のマネをして、引退試合の対戦相手として最後の介錯人となったのは、内藤哲也。
武藤敬司になりたかった男は、新日で次期エースと呼ばれ、未来を背負わされたベビーフェイスは、将来を約束されているはずだった。
そこに現れたオカダカズチカ、いわゆるレインメーカーショック。新体制の会社で、新しいスターとしてオカダ君が後押しされて、気がついたら次期エースは、何をやってもファンにそっぽを向かれる、そんな立場に落とされる。落とされ、失意のままでメキシコへ旅立ち、メキシコでロスインゴベルナブレスというユニットと出会い、再生し、日本へ戻って来る。
その時に見せたファイトスタイルは、ヒールのそれとなっていて、独自の間で、試合を止め…動かし…すかし、ベルトをほおり投げ、悪態をつき言いたいことを言う、今まで内藤哲也を180度変えたもの。
自分は、ここにペイントをしないムタの姿を見てしまい、内藤さんのファンになっていく。
この2人で行う、武藤敬司の引退試合。
「引退試合をしていない人間の分も背負って試合する」そう言っていた武藤さん。
STFは、蝶野正洋のフィニッシュホールド。
袈裟斬りチョップにDDTは、橋本真也。
エメラルドフロウジョンは、三沢光晴の技。
引退を決めた最後の試合で、引退試合をしてない男達の技を繰り出す武藤敬司。…受ける内藤。
憧れ続けた武藤敬司の技は全部コピー済みという内藤哲也は、武藤敬司のシャイニングウィザードを本人にぶつける。ドラゴンスクリューだって足四の字だって。もちろん…受ける武藤。
最後は、プロレスLOVEポーズからのデスティーノ。
武藤敬司●
内藤哲也○
28分58秒
デスティーノ → 片エビ固め
終ってしまった。
武藤さんの試合が、これで終ってしまった。
マイクを持って、最後に何を言うのだろうと思ってたら…
「どうしても、1つやりたい事があるんだよな…。
蝶野、俺と戦え!
あれっ…服部さん居ない?服部さん?
服部さん、あの…裁いて、レフェリーして」
知ってますよ、本当は引退試合の相手
蝶野さんを希望してたって事。
でも、蝶野さん歩くのやっとの体だから…
武藤敬司●
蝶野正洋〇
1分37秒
STF
※特別レフリー:タイガー服部
古舘さんが言ってたように、限界なんてとっくに過ぎていた…、人工関節にしてるのだって公表してるし、ボロボロだって、ファンは皆知ってます。
それでもリングに上がれるのが不思議で、試合無事に終わってほしいって…
涙ものの引退試合かと思ったら、意外と自分はそうならず、見送れた嬉しさの方が強い。
ありがとうございました。
お疲れさまでした。
昭和のプロレスは、これでお終い。
残された人達が、これをどう受けて、どうつないで行くのか。
ムーンサルトは、封印したまま。
武藤さん、終了。
ずっと頭の中で鳴り響いているホールド・アウト。
3万人で見送った東京ドーム。