「神奈川県議会基本条例制定10周年記念講演会」に出席しました。
神奈川県議会は平成20年2月、14回の特別委員会での議論を経て、
県民とともに築く、開かれ充実した神奈川県議会を目指して、
「神奈川県議会基本条例」を制定しました。
講師は東京大学先端科学技術研究センター牧原 出教授、
テーマは「2040年を見据えた自治体と地方議会の展望」です。
<未来社会をどう見通すか?>
◯20のアドバイス…ローマクラブ「2052年の世界」(2012)
人口減とデモクラシー、気候変動の危機…
●収入より満足に目を向ける
●消えゆくものに興味を持たない
●最新の電子エンターテイメントに投資しよう
●子ども達に無垢の自然を愛することを救えない
●生物多様性は今のうちに享受しよう
●大勢の人が荒らす前に世界の魅力的文化財を見ておこう
●気候変動の影響が小さい場所に住むこと
●多くの民主主義で決定できない国には住まないこと
●持続不可能性とは何かよく考えること
●サービス業・介護・省エネ・再生可能エネルギーが有望な就職先
●子ども達に北京語を習得するよう勧めなさい
●成長は良いことだという考えから脱却すること
●化石資源をもとにした資産はある日突然失われることを忘れない
●社会不安に敏感でないものに投資しよう
●相応の義務以上のことをしよう、将来後ろめたい思いをしないように
●選挙で再選を望むならば短期的に結果が出る公約を掲げよう
●未来の政治は物理的限界に左右されることを覚えておこう
●政治において、限りある資源の平等な入手は、言論の自由に勝る
<自治体戦略2040構想研究会とは?〜第32回地方制度調査会のゆくえ>
2040年は高齢化のピークであり、18歳人口は現在の半分 →
人口減少により、行政サービスの担い手である自治体職員が圧倒的に不足…
人口減少は徐々にその影響が多方面に現れる
2040年までのバックキャスティング →
現状を出発点とする課題ではない…
応急処置に追われるのでなく、長期的に必要な施策を選び直す、政策の総動員へ
●直近の課題と将来の課題との間でどう対応するか?
●政治的には将来については特に住民に丁寧に説明する必要
◯3つの危機
①若者を吸収しながら老いていく東京圏と支え手を失う地方圏
②標準的な人生設計の消滅による雇用・教育の機能不全
③スポンジ化する都市と朽ち果てるインフラ
広域的に空き家が増えることで維持が難しい…
◯3つの対策
①スマート自治体への転換
②公共私によるくらしの維持
③圏域マネジメントと二層制の柔軟化
東京圏のプラットホーム(どのように組み合わせて対処するか?)
※人口減への対策 →
和らげつつ起こりうる危機に対応する
●地方創生で成功している地域は適宜部分的に採用
●地方創生で苦労している地域は発想の転換を
<シビル・ミニマムからガバメント・マキシマムへの政策基準の転換>
松下圭一と革新自治体(武蔵野市や三鷹市等)
市民の住民参加により、工夫して底上げしていこう
→ 人口増と経済成長を前提していた…
◯ガバメント・マキシマム
職員も減少 → 圏域連携・公私連携のための
ガバメント・マキシマム
行政サービスの質を落とさないための政策基準
<公・共・私のベストミックス>
NPO、町内会、企業など、この20年間で様々な取り組みがあった。
しかし…
量的な下降を質的に補っていかなければいけない
→
住民一人ひとりの価値を高めるための基本概念として「尊厳」"dignity"を
どう各地でわかりやすく言い換えていくか?
<圏域マネジメント>
県と市町村との垂直的な連携について、具体的検討を進めるべき
奈良県の「奈良方式」… 行政サービスの維持へ
<スマート自治体と働き方改革>
「大企業30代悶々病」…30代がやりがいを感じていない。
「瞬間大量情報処理社会」での職場における個々人への重圧…
職場の担い手世代への暖かい手当
→ 「子育て・ワークライフバランス」
●文書の書式の共通化
●条例の共通化
●政策横断的な情報システムの構築
◯スマート自治体の意義
●円滑な連携へ
●自治体の人手不足に対応
遠隔操作の活用、リアリテイと空間の共有
<「自治」のための議会のあり方>
◯「人」の重要性
ターゲット世代となる団塊ジュニアと就職氷河期 40代
子育て世代としての30代
◯人口減を「尊厳」ととらえなおす
「人」の価値を重視する方向への転換は必須
その地域独自の言葉が必要?
①長期的検討を得意とするのは議会
②市町村に直接降りかかる問題としての人口減少
③都道府県とその議会の役割
垂直連携の適切な補完が求められる
自治体職員・議会職員に頼りきらない議会運営が議会には確実に求められる。
そのモデルを、早く示すこと
<今後の展望>
地方議会は未来社会における「プラットホームとしての地方自治体」において、
良質なアプリケーション」となりうるか?
◯世代間ギャップ…旧世代的発想からの脱却
◯AIなど技術革新への感度…議会現場への導入を
①地域独自の言葉の開発
「尊厳」を作り出すのは本来議会の役割
②連携の障害ではなく連携の触媒に
議会同士の交流、
不毛な自治体間競争をどう止めるか?
③人口減に何を代表するのか?
きめ細かい行政サービスは困難、
公共私のパートナーシップの推進母体へ