低利子、ゼロ成長の時代、いよいよ資本主義が終わりを迎える?
日本こそ、新しい経済社会システムを作る力がある…
水野和夫著『資本主義の終焉と歴史の危機』を読み終えました。
「資本主義は、未来世代が受け取るべき
利益もエネルギーもことごとく食いつぶし、
巨大な債務とともに、エネルギー危機や環境危機という
人類の存続を脅かす負債も残そうとしているのです」
「資本主義は「中心」と「周辺」から構成され、
「周辺」つまり、いわゆるフロンティアを広げることによって
「中心」が利潤率を高め、資本の自己増殖を推進していくシステムです。
「アフリカのグローバリゼーション」が叫ばれている現在、
地理的な市場拡大は最終局面に入っていると言っていいでしょう。
もう地理的なフロンティアは残っていません。
日本を筆頭にアメリカやユーロ圏でも
政策金利はおおむねゼロ、10年国債利回りも超低金利となり、
いよいよその資本の自己増殖が不可能になってきている。
・・・
歴史のなかで、もっとも国債利回りが低かったのは、
17世紀初頭のイタリア•ジェノヴァの「長い十六世紀」です。
金利2%を下回る時代が11年間続いたのです。
日本の10年国債利回りは、400年ぶりにそのジェノヴァの記録を更新し、
2.0%以下という超低金利が20年近く続いています。
この「利子率革命」は、利潤を得られる投資機会が
もはやなくなったことを意味します。
・・・
9.15のリーマン・ショックは、
金融工学によってまやかしの「周辺」をつくり出し、
信用力の低い人々の未来を奪いました。
リスクの高い新技術によって低価格の
資源を生み出そうとした原子力発電も、
3.11で、福島の人々の未来を奪っただけでなく、
数万年後の未来にまで放射能という災厄を残してしまいました。
資本主義は、未来世代が受け取るべき利益もエネルギーも
ことごとく食いつぶし、巨大な債務とともに、エネルギー危機や環境危機という
人類の存続を脅かす負債も残そうとしているのです。
・・・
グローバル資本主義の暴走にブレーキをかけるとしたら、
それは世界国家のようなものを想定せざるをえません。
・・・少なくともG20が連帯して、
巨大企業に対抗する必要があります。
具体的には法人税の引き下げ競争に歯止めをかけたり、
国際的な金融取引に課税するトービン税のような仕組みを導入したりする。
そこで徴収した税金は、
食糧危機や環境危機が起きている地域に還元することで、
国境を越えた分配機能を持たせるようにするのがよいと思います。
…
ミヒャエル・エンデが言うように、豊かさを
「必要な物が必要なときに、必要な場所で手に入る」と定義すれば、
ゼロ金利・ゼロインフレの社会である日本は、
いち早く「定常状態」を実現することで、
この豊かさを手に入れることが出来るのです。
そのためには「より速く、より遠くへ、より合理的に」
という近代資本主義を駆動させてきた理念もまた逆回転させ、
「よりゆっくり、より近く、より曖昧に」と転じなければなりません。
その先にどのようなシステムをつくるべきなのかは、
私自身にもわかりません・・・」