【登場人物】

・木村…久保田推し。理屈っぽい。

・斎藤…八海山推し。キレを信仰。

・高橋…景虎推し。飲みの場の空気担当。

・店長…日本酒に詳しすぎる居酒屋店長。


【場面】

新潟駅近くの居酒屋。テーブルの上には、久保田・八海山・景虎の飲み比べセット。

木村「まずは久保田からだろ。香りを楽しんでから――」

斎藤「待て待て。最初は八海山のキレで、舌を“初期化”するのが正解」

高橋「いやいや、最初は景虎でしょ。“場があったまる”一本だから」

木村「日本酒で“場あっためる”って新潟ワードすぎない?」

店長「皆さん、どれからでも正解ですよ〜」

斎藤「いや、ここは譲れません。テイスティングには“順番理論”があるんです」

木村「久保田→景虎→八海山。香り→ふくらみ→キレ。この“三段活用”が——」

高橋「そんな授業みたいに飲むなよ!」

店長「じゃあ、ブラインドで飲んで当てっこしてみます?」

(3種類をシャッフルして注ぐ店長)

店長「はい、A・B・C。どれがどれでしょう?」

木村「こんなの簡単だって。Aが久保田、Bが景虎、Cが八海山!」

斎藤「いやいや、Bの後味、このキレは絶対八海山だって!」

高橋「オレは“どれもおいしい”派なんだけど」

木村&斎藤「すぐ逃げるな!」

(しばし真剣なテイスティングののち)

店長「正解を発表します。

 A:景虎、B:久保田、C:八海山でした〜」

木村「……全問不正解だ……」

斎藤「オレもだ……」

高橋「ねぇ、結局“どれもおいしい”ってことじゃない?」

店長「ではまとめますと――

 久保田派も、八海山派も、景虎派も、

 “酔ってくると全部好き派”に収束する、ということでよろしいですか?」

木村「異議なし……」

斎藤「(グイッ)やっぱ八海山うまいわ……これ多分八海山……」

高橋「それ、さっきからずっと景虎なんだけど」

木村「もうラベル隠すのやめて……心が負けそう……」

(その夜、“日本酒テイスティング合戦会議”は、

 最終議題「全部うまい」で満場一致となった)


いかがでしたか?笑っていただけましたか?


久保田派、八海山派、景虎派――

立場だけ見ると、まるで三つ巴の戦国合戦みたいなのに、

フタを開けてみたら「全員ブラインドテスト全問不正解」という、

じつに平和なオチになりました。


銘柄を語るときはみんな妙に偉そうなのに、

ラベルを隠した瞬間、「あれ? これどっちだっけ?」と急に自信がゼロになるあの感じ。

結局のところ、日本酒って

“味の違いを語る遊び”と“みんなで笑う時間”をセットで楽しむ飲み物

なのかもしれません。


最後は

「全部うまい」で満場一致。

いちばん真剣に議論したのは、

どれを“最後の一杯”にするかという、とてもささやかな幸せでした。