【登場人物】

・佐藤…40代。ひとりで静かに湯に浸かりたいタイプ。

・謎のおじさんA…地元トークスイッチ入りやすい。

・謎のおじさんB…話を広げがち。




【場面】

新潟の日帰り温泉。

露天風呂に一人で浸かる佐藤。雪見風呂でしみじみしたい——はずが。




(ちゃぽん、とおじさんAが入ってくる)


おじさんA「いや〜、雪の日の温泉は、選挙より大事だわ」


佐藤「(心の声)いきなりワードが重いな…」


おじさんA「この辺、誰に入れた?」


佐藤「あ、いや、それはちょっと…」


(そこにさらにおじさんBが入ってくる)


おじさんB「選挙の話かい? まぁ政治も大事だけどさぁ、

 健康保険料も上がってるんだわね〜」


佐藤「(心の声)トークが急に“NHK日曜討論”……」




おじさんA「ワシ、血圧180あったんさ」


おじさんB「オレなんかコレステロール“オール☆スター”だよ」


佐藤「(心の声)数字の殴り合い始まった……」


おじさんA「でもな、温泉だけは“無料の薬”だて」


おじさんB「そうそう。ここで2時間しゃべれば、心の薬にもなる」


(2人、ニコニコしながら佐藤を見る)


おじさんA「ねぇ兄さん、どこから来なさった?」


佐藤「(観念して)……北区です」


おじさんB「おお、北区! あそこはカモと渋滞がな〜」


佐藤「(心の声)さっきまで選挙と血圧だったのに、

 話題のジャンル、県議会レベルから用水路レベルまで自由すぎる…」




【ラスト】


30分後。


おじさんA「いや〜、兄さんもよくしゃべる人だわね!」


おじさんB「最初は静かそうだったのにな!」


佐藤「(心の声)温泉って、湯気で警戒心が溶けてくるんだよな……」


脱衣所の貼り紙には、こう書いてあった。


——「長湯にご注意ください。

 ※地元トークしすぎにもご注意ください。」


いかがでしたか?笑っていただけましたか?


静かに雪見風呂を楽しみたいだけだったのに、

気づけば知らないおじさん2人と一緒に、

選挙→税金→血圧→カモ渋滞までフルコースで語らされる——

温泉あるあるをギュッと詰めてみました。


不思議なのは、最初は「巻き込まれた側」だったはずの人が、

30分後にはしっかり自分の地元の話までしてしまうところ。

湯気で温まるのは体だけじゃなくて、

口と心のガードも、一緒にゆるんでいくんでしょうね。


もし今度ひとりで温泉に行ったとき、

隣のおじさんに

「兄さん、どこから?」と話しかけられたら——

それは“地元トーク温泉コース”への招待状かもしれません。