【登場人物】

・佐藤さん…40代。去年「班長」を経験済み。絶対にもうやりたくない。

・田中さん…50代。押しに弱い。

・鈴木さん…60代。やたらノリがいい。

・町内会長…現在の会長。そろそろ引退したい。

【場面】

公民館の和室。「来期町内会役員選出会」が始まっている。

テーブルの上にはお茶とせんべい、その横に「ジャンケンで決定」と書かれた紙。

会長「それじゃあ例年どおり、公平に“ジャンケン”で次期会長を決めたいと思います」

佐藤さん「(心の声)全然公平に感じない……」

田中さん「あの〜、立候補って……」

会長「立候補は“ありがたく受け入れます”」

全員「……(そっと目をそらす)」

鈴木さん「じゃあ、ジャンケンでパッと決めましょうや! 雪かきの話より早く終わらせましょう!」

佐藤さん「(心の声)この人、絶対パー出しそうだな……」

会長「はい、それでは会長候補の方、前に三名出てくださーい」

(なぜか押し出されて前に出る3人)

会長「では行きます!せーの――」

3人「ジャン、ケン――」

(全員、一瞬フリーズ)

佐藤さん「(心の声)グーか…チョキか…いや待て、ここで—」

田中さん「(心の声)“人と同じ”出せば当たらない…はず…」

鈴木さん「(心の声)ここは景気よくパーだろ!」

3人「ポン!!」

出た手:

佐藤さん「グー」

田中さん「グー」

鈴木さん「パー」

全員「……」

鈴木さん「あっ……」

会長「はい! 鈴木さん、新会長決定〜!」

鈴木さん「待って! 今の“ノリパー”はノーカウントで!」

佐藤さん「ノーカウントは“ノー”です」

田中さん「“町内のためにパーを出した人”が選ばれましたね……」

【ラスト】

帰り道。

佐藤さん「でも、あの場でパー出せるの、鈴木さんしかいなかったですよ」

田中さん「そうそう。あれはもう、会長の器でしたよ」

鈴木さん「……そんな“ほめ殺し”いらないて……」

とはいえ、公民館の掲示板にはすでに、

「新会長:鈴木」の名前が印刷されているのだった。

いかがでしたか?笑っていただけましたか?

「公平にジャンケンで決めましょう」と言いつつ、全員が本気で“負けに行こうとしている”あの空気、町内会あるあるをギュッと凝縮してみました。

とくに、勢いでパーを出してしまった瞬間に「やっちまった…」と本人だけが悟るあの表情は、世界一ささやかな「運命の瞬間」かもしれません。

でも、あの場面で堂々とパーを出せる人こそ、実は一番“会長向き”だったりもするんですよね。

次にどこかの公民館でジャンケン大会が始まったら――

自分の手を見ながら、鈴木さんのことを少しだけ思い出してもらえたら嬉しいです。