久々に面白い学園もの(桐島、部活やめるってよ/2012/吉田大八監督)を見ました。
シーンの冒頭に「金曜日」と出てきてまた次のシーンの冒頭に「金曜日」と出てくる何で?と思っていたら見ているうちにその訳が解ってくる。
まったく同じ金曜日のシーンでも見ている目を変えているのである。つまり同じ日の事件をクラスメートや部活の人間の各立場から映し出しているのである。それがクラスの男のグループだったり女子のグループだったり、バレー部、野球部、吹奏楽部、映画部、帰宅部と立場の違う人間のアングルから写し出している。
だから主役は?と聞かれると答えられない。みんな主役だから。
いろんな立場のいろんな人間が学校という一つの枠の中に集まっている。
学校というものをこういう多角的に扱った物語は中々ないと思う。
よく考えてみるとセットも同じセットでキャストも同じキャストなのに同じ事件で2本も3本も別の物語を創っている経済的かつユニークな作品である。
ある意味グランドホテル形式の作品であるがグランドホテルではホテル以外は各キャスト別のストーリーが展開するがこちらは同じストーリーで主役を変えている。
(マルフジブログ「グランドホテルを見て」を参照ください。)↓
またタイトルの桐島君はストーリーには登場するが、映像に人物は最後まで出てこない。何時でるかと待ち構えていた視聴者の予定を裏切り「やられたな」という楽しい気持ちになる。
原作の小説(朝井リョウ/2010/集英社)の方は各シーン各人のオムニバスになっているとのことでこちらも相当面白そうである。
その中でもNHK朝ドラの「ごちそうさん」の通天閣(東出昌大)演ずる菊池(彼は野球部でNO.1の実力を持ちながら休部して帰宅部グループで不毛な学生生活をしている)がいつも優しく試合にでてくれと目をかけてくれる3年の野球部キャプテンに尋ねる。
菊池 :「キャプテンは夏の大会も終わっているのにどうして、
野球部に残っているのですか?」
キャプテン:「ドラフト終わるまでは・・」
:「ドラフト終わるまではな・・」
菊池 :「キャプテン、(プロの)スカウトに声かけられ・・」
キャプテン:「無いよ」「でも、ドラフト終わるまではな・・・」
笑ってしまうが、このキャプテンかっこよく見えてくる!
また菊池はクラスメートでクラスでも地味で肩身のせまい映画部のリーダーに同じような質問を投げかける。彼も胸を張って自分の好きな映画の世界を菊池に話し出す。
野球部のキャプテンも映画部のリーダーもどちらも菊池には無いものを持っている。
彼らのその素晴らしい精神を前に自己を問いただす菊池、物思いにふけった彼が野球部の練習風景を見つめるところで映画は終わる。
よい物語でお勧めです!
ユイちゃん(橋本愛)も、すこし意地悪なキャラでかわいい!