ただのゴッホ -6ページ目

ピンクの恐竜 1

あるところにピンクの恐竜が住んでいました

恐竜は いつも一人でいて
食事をするのも 水遊びするのも 排泄をするのも 一人でまったく差し支えありませんでした

誰かに「食べかたが汚いよ」と注意されるのも腹が立つし
まだ遊びたいのに「日が暮れたから もう帰ろう」と打ち切られるのも気にくわない

一人でいれば そんな嫌な思いをする心配はありません
星座にくわしい友だちと一緒じゃなければ 心ゆくまで新しい星座を作りだすことができます
“いたずら座”は、元気な子猫でもいいし
いじわるそうなシャパクリャクばあさんでも 構わないわけです
どうしても点が足りなければ 自分だけに見える(本当はない)惑星を 一つ加えて
いたずら座を完成させたところで 誰にも非難されません
だから誰かといるより ひとりでいるほうが ずっと都合が良かったのです



ある朝 ピンクの恐竜は ルーペを発明しました
発明といってもたいしたものではありません
目を覚ましたとき 葉っぱにのった朝露の向こうに 今まで見たことのない生き物がいたので
ピンクの恐竜はもっとよく見てみようと顔を近づけたのです
すると偶然 まわりの葉っぱからスラスラと朝露が集まってきて
結果的に 先よりよく生き物を見ることができたというだけのことです
ピンクの恐竜は 思わぬ発明によろこびました
そしてこれを「朝露のルーペ」と名付けました
あるいはルーペは ピンクの恐竜が生まれるもっとずっと昔からあったのかもしれません
恐竜には友だちがいないので ルーペを知らなかっただけかもしれません
でもとにかく ピンクの恐竜にとって 朝露の集合体から覘く世界は 生まれて初めて見る光景で
それは彼を興奮させました

朝露の向うには 甲羅に黒い斑点のある赤い小さな生き物がいて
向こうもずっとこちらを見ているようでした
ピンクの恐竜は、甲羅に黒い斑点のある赤い小さな生き物に興味津々でした
なぜ 甲羅に斑点なんかつけたのか?
なぜ からだが全体的にピンクではなく赤いのか?
ここで何をしているのか?
ピンクの恐竜は とりあえず彼の知っている言葉で話しかけました
「君は誰?」
すると向こうも話しかけてきました
「#($’#&’」
「僕はピンクの恐竜。友達はいない、今のところは。水遊びが好きだ。君は?」
甲羅に黒い斑点のある赤い小さな生き物は言いました
「+ヨウQ”(DY()”!%&」

ピンクの恐竜は困りました
甲羅に黒い斑点のある赤い小さな生き物の言うことが まったくわかりません
だいいち相手の呼び名が いちいち長すぎます
「どうだろう 勝手に決めて申し訳ないけど 君をてんとう虫と呼んでもいい?
君はお天道様のように赤いし 斑点が黒点のような生き物だ 
だから 君をてんとう虫と呼んでも構わないかな?」

“てんとう虫”良い名前だ
ピンクの恐竜は この呼び名に大満足でした
でも 相手が気に入っているかどうかが分からないので ちょっと不安になりました
「もし君が気に入らないなら コキネリでもマリエンフェーバーでもかまわないよ
 少し呼びにくいけど…。」
甲羅に黒い斑点のある赤い小さな生き物は
「&’%&’」
と言うと、どこかへ飛んでいってしまいました

ピンクの恐竜は とても悲しい気持ちになりました
もともと友達が欲しかったわけではありません
ことばが理解できなかったのは ピンクの恐竜が悪かったのでもありません
でも なんだかとても淋しく悲しくなってしまいました

ピンクの恐竜は 朝露を払いのけ 二度寝することにしました
もう一度 目が覚めた時、もしかしたら
甲羅に黒い斑点のある赤い小さな生き物が また葉っぱの上に戻ってきているかもしれないと思ったからです





byまる

時間とお金と女

時間にルーズな奴は

お金にもルーズだ


お金にだらしない奴は

女にもだらしない


お前が遅刻したら 必ずこのレッテルを貼るからな


俺にどう思われようが痛くも痒くもないだろうが
ベタベタに貼ってやるからな


覚悟しておけ

我が子へ

探しておくれ   どうか  あなただけの輝きを
見つけておくれ  どうか  あなただけのよろこびを
見つめておくれ  どうか  あなただけのしあわせを
育てておくれ   どうか  あなただけの生きる糧を

苦しさや 忙しさや 悲しさや 虚しさに動じず

美しいものだけを求めて 淡々と 淡々と 生きて


生きておくれ

ねばならぬ

いけ好かない誰かが探るような目で「まさか、こんなことできませんよね?」とわたしに言ったなら、
わたしは、その挑発に乗らねばならない

知り合いが立て続けに仕事に失敗して、負のオーラを撒き散らしているなら、
わたしは、その知り合いの良いところを最低一つは見つけて誉めなければならない

偶然、事故を目撃したなら、たとえどんなに急いでいても、
倒れている人を助け、119番通報をし、救急車が到着するまでの間、その場を離れてはならない

およそ世の中の役に立っているとは思えない雑事に忙殺されて、
自分の立ち位置が分からなくなっても、決して生きることを諦めてはならない

道に迷った外国人を見つけたら、
目的地に辿り着ける目処が立つまで、一緒に歩かなければならない

最低1年に1度は家族に会い、
いつも感謝していること、気にかけていること、一緒に過ごせて嬉しかったことを、
言葉と行動で伝えなければならない

国民の義務は遂行せねばならない

明日の日本について憂慮せねばならない

未来の子どもたちのために美しい自然を残さねばならない

家族の生活を守らねばならない

自分の健康は自分で管理せねばならない

いつも上を目指さねばならない
下を向いてはいけない

大人は忙しい



byまる

感謝



わたしをとりまく
すべての幸せと不幸せに



ただただ感謝です



私を追い立ててくれた人、
私にプレッシャーを与えてくれた人、
私を陰で支えてくれた人、
私を愛してくれた人、


すべての人に





ありがとうございました



by まる


ノストラダムスさん、

世の中は  まだ


消えませんが?

特別な才能を持った僕の、ごくありふれた人生

僕の父は、いつも僕にこう言った。
「お前には特別な才能がある。」


「お前は、これから何にだってなれるんだ」と。
記憶の中の父は、いつも笑っている。
母は、いつも微笑んでいる。
二人とも朗らかで、健康そうで、やさしい。
二人は僕を誉め、励ます。
「なんて頭のいい子だろう」
「将来が楽しみだわ」
「あと少し、頑張ってごらん」
「あら、じょうずにできたわね」
そして二人は期待する。
「お前には無限の可能性がある。輝かしい未来があるのだよ」


時に僕は、記憶の中の両親が、こんなに人間として素晴らしくなければ良かったのに と思った。
もっと僕を叱りつけたり、威圧的だったり、生活に疲れた様子をしていたら。
僕は、父と母を憎めたかもしれない。
「なぜ、無責任に僕を生んだんだ?」
「なぜ僕を、さも優秀な子のように、褒めそやしたんだ?」
そしてなぜ、こんなにも早く僕を独りにしたのだ?


僕は、公園の遊具の中で膝を抱えた。
空腹なんて辛くなかった。
自分の命が明日、尽き果てたとしても、別段悲しくはない。
手足がしびれるほど凍えたとして、それが何だろう。人間、いつかは死ぬのだ。
生身の誰にも悲しまれず、誰にも看取られなかったとして、それがいったいなぜ悲しいのだろう。
僕は冷たい空気も、空っぽの胃袋も、しびれる手先も、
僕を取り巻く全ての事実を、ありのままに、容易に受け入れることができた。


父の言う通り、確かに僕には特別な才能があった。
それは、なんと表現すればいいのだろう?
自分でもうまく言い表すことができないのだが…。

僕には人や物の未来の姿を的確に見ることができた。
でもそれは外側についている両の目で見ている感覚とはまるで違う。
頭の中で想像している感覚ともぜんぜん違う。
それは…それは…何とも言えない光景なのだ。

この能力が、どうやら一般的では無いらしいと気づいた時、僕は少し動揺した。



つづく。

きれいな心でまるいものを数える

しゃぼん玉    ボール    地球    たまご    すごく使った消しゴム


    平和    虫めがね    ハタハタの卵    紙風船    天使の輪


波紋    梅のつぼみ    こぎつねの目    浮き輪    水晶の玉  愛


   満月    だんご虫    あめちゃん    空から見た盆踊り   真珠


雪だるま    笑い声    ゼロ    



ぼくの国

ある日、ちび王子は旅に出た。
 ——自分の国を探すために。——

「どの国の王子になろうかな」

わく わく わく わく
 てく てく てく てく…


ちび王子は、森にやってきた。
森には、りすがいた。
ちび王子は、りすに話しかけた。
「ここには、王子はいる?」
「いやあ、いないね。
 最近、王子なんて、とんと見かけないよ。」
りすは、答えた。

「君は王子が欲しい?」
「ああ、欲しいね。
 王子がいれば、さぞかし楽しいだろうな。」

「どんな王子が欲しいの?」
「そうだな、すらっと背の高い王子がいいね」
 ——ちび王子は、黙って森を後にした。——


てく てく てく てく
 てく てく てく てく…


ちび王子は、川にやってきた。
川では、かわうそがちょうどお昼ご飯を食べているところだった。
ちび王子は、かわうそに聞いてみた。
「ねえねえ、かわうそさん。この辺りに王子はいる?」
「かわうそさんなんて呼ぶな。一太郎さんとお呼び。」
かわうそは、のっけから不機嫌だった。

「ごめんなさい。あなたが一太郎さんだなんて、ぼく知らなかったんだ。」
「知らないで済んだら、町奉行なんていらないんだ。」
かわうそは、思ったほど魚が捕れなかったのでやつあたりしているのだった。

「一太郎さん、王子が欲しいとは思わない? 王子がいたら、きっと楽しいよ。」
「そんな場合もあるだろうよ。
だけど、ここには一太郎さんがいる。
 もう満員なんだ。失せやがれ。」
 ——ちび王子は、退散した。——

しく しく しく しく
 てく てく てく てく…

「だれか、王子を必要としている人はいないかな。」


しばらく歩くと、ちび王子は“市民いこいの広場”に出た。
広場の噴水では、たくさんの子どもたちが遊んでいた。
みんなきれいな身なりをしていたが、
そんなことは、まったくおかまいなしに水を掛け合って遊んでいた。
ちび王子は考えた。
「ここには、王子が多すぎる」

てく てく てく てく
 てく てく てく てく…

ちび王子は噴水の脇を通り過ぎて、雑木林の小道に入っていった。
雑木林の小道には、ところどころにベンチがあった。
ベンチでは、顔に新聞紙を掛けたおじさんが寝ていた。
「こんにちは、おじさん。ここには王子はいる?」
おじさんは、ちっともこっちを見なかった。

「ねえ、おじさん。もしまだいないなら、
 ぼくがここの王子になろうと思うんだけど。」
おじさんは、ぜんぜん動かない。

「…死んでるのかな。」
「死んでないわいアホ。オレがここの王様じゃ、くそガキが。」
王様はすごい剣幕で怒った。
 ——ちび王子は逃げ出した。——


残念なことに、ちび王子は自分の国を見つけることができなかった。
ちび王子は考えた。
「よし。あしたは北のほうを当たってみよう。」
ちび王子は、満足して眠りについた。


てぃんとん てぃんとと てぃんとんとん



めでたし、めでたし。




byまる

マックとジャメの木

ある日、マックとお兄さんはジャメをいくつかもらった。


お兄さんはジャメを全部食べた。
マックはジャメを食べなかった。

お兄さんは、マックのジャメを半分取り上げ、食べてしまった。
お母さんは、マックに言った。
「おまえは、ほんとうに、うすのろだよ。」
マックは庭に行って、残りのジャメを植えた。


お兄さんのジャメは無くなったが、
マックのジャメは、しばらくして庭で芽を出し実をつけた。
マックのジャメは10倍にも20倍にも増えた。
お母さんはマックを誉めた。
「この子はなんて頭がいいんだろう」


ある日、野良犬がやってきて
マックのジャメを食べ散らかした。
お母さんはマックに言った。
「お前はなんて愚かなんだ、阿呆にもほどがある。野良犬にジャメをガメられるなんて。」
お母さんはマックを口汚く罵った。

怒るお母さんの、その後ろで、一本のジャメの木がどんどん伸びていく。
天に向かってまっすぐに伸びていく。
マックはジャメの木を見上げた。
ジャメの木はとうとう天まで届いた。

マックはジャメの木に登った。
雲の上まで登った。




雲の上ではマリオが金貨を集めていた。
マックも集めた。


マックは金持ちになった。
マックはお腹を空かせたお母さんとお兄さんにハンバーガーを買ってあげた。

お母さんが言った。
「ああ、お腹がいっぱいで眠くなってきたよ」




めでたし、めでたし。


by yoshizumi&まる