たまたま入手した交通公社の時刻表1971年12月号をもとに、九州の玄関駅である門司駅にブログ筆者が「定点観測している想定」でその成果を共有するシリーズです。今回は、1971年12月30日に運転されていた「関東・関西・中国の主要都市と九州島内を接続する優等列車」という長距離列車に絞ってまとめています。
1971年12月30日の門司駅妄想定点観察
② 6:00〜11:59 の発着列車 ←このブログ
24時間ひっきりなしに列車の往来があったのですが、第2回目は朝帯の列車にフォーカスをあて、6:00〜11:59に門司駅を往来する列車を時刻表として一覧化して、その様子を妄想していきます。
当日の天候(気象庁下関管区発表、1971年12月30日午前6時)
天気概況:東北東の風、曇、気温8.0℃、風速5.7m/s、降水なし
→まだ日の出前の時間帯、冷たい東北東からの風がやや強く吹き、空一面は厚い雲に覆われ、気温8.0℃と寒さが身にしみる門司駅。降水はないものの吹きっさらしのホームは、年末の慌ただしさとは異なり、静けさと乾いた冷気に包まれた一日だったと思います。さあそんな状況を妄想しながら、朝の定点観測を始めましょう。
AM6:00〜AM7:59 の出発列車
・この時間帯、帰省列車 急行しろやま54号/急行日南51号 を除いて、すべて下り列車(本州からの夜行列車)です。
・7:37発 急行くまもと号、7:43発 急行高千穂51号はなんと、沼津始発の急行列車!門司駅で分割されてそれぞれの方向に出発していきます。全車指定・寝台車未連結という「The 帰省列車」たる編成でした。
・急行天草号は、定期列車として筑豊本線経由で熊本に向かう珍しい列車です。
・寝台電車は機関車付け替えがないので門司駅を通過してもいいのでしょうが、特急明星2号は短時間ながら停車をしています。乗務員の交代を兼ねて客扱いを行っていたのでしょうか。
時間 (24時間制) |
門司駅発車(通過)時刻/列車番号/列車名/終着駅(時刻) |
6 |
↓6:02 25レ 特急あかつき2号 西鹿児島12:11、佐世保9:32 ※鳥栖で分割 ↓(6:06ごろ) 臨時9005M 特急月光51号 博多7:09 ↓6:13 帰省9405M 急行しらぬい52号 博多7:45 ↓6:24 205レ 急行日南1号 宮崎13:12 ↓6:35 臨時6205レ 急行日南2号 宮崎14:32 ↓6:49 31レ 荷物列車 熊本12:30 ↓(6:55ごろ) 13M 特急月光2号 博多7:52 ↑6:57 帰省9214レ 急行しろやま54号/急行日南51号 新大阪16:49 ※門司で併結 |
7 |
↓7:08 207レ 急行天草号 熊本10:34 ↓7:24 15M 特急明星2号 熊本10:13 ↓7:28 209レ 急行日南3号 都城16:05 ↓7:37 帰省6033レ 急行くまもと号 八代11:15 ※門司まで急行高千穂51号と併結 ↓7:43 帰省6033レ 急行高千穂51号 宮崎15:48 ※門司まで急行くまもと号と併結 ↓7:49 帰省8209レ 急行しろやま54号 西鹿児島14:50/急行西海52号 佐世保11:45 ※鳥栖で分割 |
凡例 | ↓:下り(本州→九州)、↑:上り(九州→本州) 無記:定期列車(毎日運転)、臨時:臨時列車(指定日運転)、帰省:年末年始帰省列車紙面に掲載された列車(超繁忙期のみ運転)、(時刻)は通過列車のため推定通過時刻 |
583系特急型電車の側面方向幕:九州鉄道記念館にて、ブログ筆者が撮影
AM8:00〜AM9:59 の出発列車
・定期列車の発着がひしめき、かろうじて帰省列車のダイヤがねじ込まれています。下りは夜行列車、上りは昼行特急・急行という大まかなトレンドが見て取れます。
・つきなみながら、長駆山陽路を下ってきた夜行列車はここで機関車付け替え(EF30→EF76)、その時間を見計らって朝食の買い求めや洗顔などをする多くの乗客がホームに降り立っている時間でしょうか。帰省列車の大半は硬いボックスシートで痛めつけられた乗客がホームで伸びをしている姿さえ想像できます。
・帰省列車である急行北九州号、はかた号の始発駅はそれぞれ大阪、東京で、目的地を明示した列車名です。そこで、現在のはかた号といれば西日本鉄道の長距離夜行高速バスの愛称でもありますが、時代を超えてこのはかた号の運行区間が符合しているのは偶然なのでしょうか?
・急行天草52号は、定期列車同様、筑豊本線経由で熊本いますが、運転日によっては熊本以南、三角まで運転されています。おそらく熊本で編成の一部が分割されて三角に乗り入れたようです。
・本州〜九州で異色だった、山陰本線経由のディーゼル特急まつかぜ号(上り)も9時台に発車していきます。終着京都は12時間後。
時間 (24時間制) |
門司駅発車(通過)時刻/列車番号/列車名/終着駅(時刻) |
8 |
↓8:00 帰省8211レ 急行天草52号 熊本11:25 |
9 |
↓9:02 帰省8109レ 急行はかた 博多10:16 |
凡例 | ↓:下り(本州→九州)、↑:上り(九州→本州) 無記:定期列車(毎日運転)、臨時:臨時列車(指定日運転)、帰省:年末年始帰省列車紙面に掲載された列車(超繁忙期のみ運転)、(時刻)は通過列車のため推定通過時刻 |
AM10:00〜AM11:59 の出発列車
・8時台につづいて本州からの寝台列車の到着がピークを迎えます。特に博多行のあさかぜ号においては、臨時列車を含めて、ほぼ連続で出発していきます。ちなみに急行あまみ2号は後発のあさかぜ2号に抜かれたりするのかな?と追跡しましたが、あまみ2号の2〜3分後にあさかぜ2号が到着するという「ほぼ追尾」するダイヤだったようです。
・9時台に続き11時台でも通過していく特急はと号は、新大阪〜博多間に設定された電車特急。戦後特急の愛称の歴史でいえば、つばめ号に次ぐ歴史を有していた列車で、東海道新幹線開業後に活躍の舞台を西に移してきた名特急です。月光号はじめ夜行の運用直後に昼行列車に充当される昼夜兼用の象徴列車です。
・10時台に急行つくし51号が2本ならんでいるのは誤記ではありません!当時、上りが偶数、下りが奇数というルールが適用されていたのは東海道新幹線だけで、上り、下りとも同じ列車号数がつくことは在来線列車に限り一般的でした。その後、在来線にも上りが偶数、下りが奇数というルールが適用されるのは1978年10月ダイヤ改正からです。
・急行青島号は、広島・門司港〜西鹿児島間を日豊本線経由で結んだディーゼル列車使用の急行列車。門司駅では門司港発の編成を併結しています。グリーン車連結の広島編成8両と、門司港編成4両の合計12両という長大ディーゼル急行列車がエンジンを吹かして出発していく様を想像するだけでも身震いします。
時間 (24時間制) |
門司駅発車(通過)時刻/列車番号/列車名/終着駅(時刻) |
10 |
↓10:01 7レ 特急富士 西鹿児島18:57 ↑(10:05ごろ) 6M 特急つばめ 名古屋19:56 ↑10:16 臨時6204M 急行つくし1号、7204M 急行べっぷ1号 新大阪19:05 ↓10:20 9レ 特急あさかぜ1号 博多11:20 ↓10:32 帰省8605レ 急行あまみ2号 西鹿児島17:18 ↓10:40 11レ 特急あさかぜ2号 博多11:40 ↓10:48 臨時9015レ 特急あさかぜ51号 博多11:54 ↑10:52 帰省9206M 急行つくし51号 大阪21:01 ↓10:59 帰省8201レ 急行つくし51号 博多12:06 ※門司まで急行べっぷ51号と併結 |
11 |
↑(11:10ごろ) 4M 特急はと2号 新大阪18:42 |
凡例 | ↓:下り(本州→九州)、↑:上り(九州→本州) 無記:定期列車(毎日運転)、臨時:臨時列車(指定日運転)、帰省:年末年始帰省列車紙面に掲載された列車(超繁忙期のみ運転)、(時刻)は通過列車のため推定通過時刻 |
本日は以上です。
参考資料:
・永久保存版 昭和43年10月改正時刻表を愉しむ本/三宅俊彦監修/洋泉社
・国鉄・JR列車名大事典/寺本光照著/中央書院
・交通公社の時刻表1971年12月号/日本交通公社
・国鉄の基礎知識/所澤秀樹著/創元社
・気象庁 過去の気象データ(下関)