2024年11月、個人旅行でマレーシアを訪れました。今回は、現地の知り合いに案内していただき、クアラルンプールからイポーまで日帰り旅行に出かけたときの記録です。
利用したのは、マレーシア国鉄KTMが運行するETS(Electric Train Service)。マレーシアを代表する都市間電車列車であり、クアラルンプールからイポーへの移動手段としても定番の存在です。
本記事では、ETSとはどんな列車なのか、クアラルンプール〜イポー間の乗車体験、そして車内設備や乗り心地について、実際に利用した印象を交えながらまとめていきます。
ETSとは?
ETSは、Electric Train Serviceの略称として知られる、マレーシア国鉄(KTM)の都市間高速電車列車です。
マレーシア国鉄の電車列車には、大きく分けてKTM Komuter(近郊列車)とETSという種別があり、ETSは日本の感覚でいえば「急行列車」から「特急列車」に近い位置づけと考えると分かりやすいかもしれません。
ETSは2010年に運転開始しました。マレーシア国鉄の路線はメーターゲージ(軌間1,000mm)ですが、ETSが走行する主要区間は高規格に整備されており、最高速度140km/hをマークする高品質な都市間列車として知られています。
写真は、中国中車(CRRC)製の93形(Class 93)交流電車、6両固定編成です。クアラルンプール駅に、今回乗車するEG9022列車が入線してきました。
ETSの運行ダイヤと列車種別
ETSというブランドの中には、いくつかの列車種別があります。基本的には停車駅の数やサービス内容によって区分されているようです。
- ETS Express(Ex) 速達列車(特急列車的位置づけ)
- ETS Platinum(EP) ビジネスクラス連結の列車
- ETS Gold(EG) 準速達列車(急行列車的位置づけ)
- ETS Silver(ES) 緩行列車(各駅停車)
こちらは南行ETS列車の時刻表です。この時刻表における北端は、タイ国境の街パダン・ブサール(Padang Besar)、南端はグマス(Gemas)となっています。
なお、グマスはあくまで電化区間の終端であり、そこから先も路線自体は非電化でジョホールバル方面へ続いています。
下記時刻表画像をクリックすると拡大され、より詳細にご覧になれます
こちらは北行ETS列車の時刻表です。クアラルンプールからイポー、さらに北部方面へ向かう流れがよく分かります。
下記時刻表画像をクリックすると拡大され、より詳細にご覧になれます
クアラルンプールからイポーまでの乗車体験
今回オンライン予約したのは、クアラルンプール駅発9:01 → イポー着11:29のEG9022列車です。
列車グレードはEG(ETS Gold)で、運賃はMYR42.5。当時のレートで日本円にすると約1,470円ほどでした。
片道の移動距離はおよそ200km程度あるので、日本の在来線に置き換えると普通運賃だけでも3,000〜4,000円ほどかかってもおかしくありません。そう考えると、マレーシアの都市間鉄道はかなり手頃だという印象を受けます。
車両側面の行先表示です。スマホで撮るとLED表示がうまく写らないのは日本でもよくありますが、この場合は単なるシャッタースピードの問題ではなく、表示器そのものが画素欠けしているようでした。
とはいえ、かろうじて「イポー行き」であることは推察できる程度には表示されていました。
ETSの座席と車内設備
車内の写真も撮りたかったのですが、指定された私の座席は他の団体客と同席する、正直あまり居心地の良くない配置で、撮影しづらい雰囲気がありました。
そのため、ここではWikipediaに掲載されている座席写真を参考としてお借りします。座席配置は2+2列で、車両中間を起点に車端方向へ向けて固定されています。リクライニングは一応可能ですが、日本の特急列車に比べると傾きは控えめでした。
また、車端部には向かい合わせのボックス風座席もあり、窓側から張り出した固定テーブルが特徴的です。
Chuanzheng1901, CC BY-SA 4.0 <https://creativecommons.org/licenses/by-sa/4.0>, via Wikimedia Commons
号車の数え方も少しユニークです。日本や多くの国で一般的なアラビア数字(1、2、3…)ではなく、アルファベット(A、B、C…)で表記されています。
私が乗車したのはE号車なので、6両編成の5両目にあたります。ちなみにAが南側、Fが北側という並びでした。
車内から車端部を撮影。全体として非常に近代的なつくりで、背面の液晶モニターには現在時刻や停車駅情報、各種広告などが表示されていました。
日本の新型特急や通勤電車でよく見る車内モニターをイメージすると、かなり近い感覚です。
デッキ部分にはKTMのキャンペーンポスターも掲出されていました。思わず撮影してしまった1枚です。
さらに、座席上の天井にもモニターが設置されており、写真のように現在地や速度情報が表示されていました。
特に注目したいのは、モニターに表示されたTrain Speed 134km/hの数字です。Sungkal駅を過ぎたあたりでこの速度を記録していました。
出発後しばらくは停車駅が多く、加速と減速を繰り返すため、高速列車らしい印象はやや薄かったのですが、それは列車グレードと停車駅数の影響だったようです。
今回の旅で特に印象的だったのは、マレーシア鉄道の軌道状態、車両の品質、駅設備が、想像以上に良かったことでした。乗車したETSは、その象徴のような列車で、行きも帰りも非常に快適に移動できました。
車内販売スペースと独特な設備
編成中間のC号車には、軽食提供スペースが設けられていました。カウンター越しにやり取りをする形式ですが、このときはまだ営業開始前だったこともあり、かなり静かな雰囲気でした。
このスペースについては、車内を歩いて探検したから気づいた程度で、車内放送などでの案内がほとんどなく、正直なところ「もっと案内すればいいのに」と感じました。せっかく設備があるのに、ややもったいない印象です。
軽食提供を担当していたのは、マレーシア企業のSEGI SERIグループでした。ケータリングなどを手がけるコントラクトフード会社とのことです。
そのほかの車内設備も興味深く、イスラム教国らしく祈祷スペースが用意されていたり、トイレはWashing Roomと呼ばれ、手洗い用のハンドシャワーも備えられていました。
こうした点は、日本の鉄道にはあまりない、マレーシアらしい車内設備と言えそうです。より詳しい内容はKTM公式ページにもまとめられています。
イポー駅に到着|近代的な屋根と歴史的駅舎の共存
列車はイポー駅にほぼ定刻で到着しました。
駅全体を覆う近代的な大屋根がまず目を引きますが、一方で駅本屋そのものは歴史的な建築物であり、新しい設備と伝統的な駅舎が同居する魅力的な駅になっています。
クアラルンプールからのアクセスも良く、鉄道旅の目的地としてもかなり印象の良い駅でした。
まとめ|マレーシア国鉄ETSは想像以上に快適な都市間列車だった
今回利用したマレーシア国鉄ETSは、単なる移動手段というより、マレーシアの鉄道水準の高さを実感できる列車でした。
ポイントを整理すると、次のようになります。
- ETSは、KTMが運行する都市間高速電車列車
- メーターゲージながら高規格路線を走り、最高速度140km/hに対応
- 列車種別にはExpress・Platinum・Gold・Silverがある
- 今回乗車したETS Goldでも、クアラルンプール〜イポー間を快適に移動できた
- 車内は近代的で、モニター設備や軽食スペース、祈祷スペースなども備える
- イポー駅は、近代的設備と歴史的駅舎が同居する印象的な駅だった
日本の鉄道ファンの感覚で見ると、マレーシアの鉄道はまだ発展途上という印象を持ってしまいがちですが、実際に乗ってみると、軌道・車両・駅設備のいずれも予想以上にしっかりしていることに驚かされました。
クアラルンプールからイポーへの日帰り旅行において、ETSはとても満足度の高い移動手段だったと思います。
本日は以上です。
参考資料:KTM ETS、Class93(Wikipedia)












