しばらくの間、JR西日本で現在も運転されている企画列車「かにカニエクスプレス」の一派、ならびにそれ以前からの「かにシーズンの臨時列車」の運転の歴史を振りかえります。

 

味めぐりタンゴエクスプローラー号

 

 今回紹介する味めぐりタンゴエクスプローラー号は、丹後半島の天橋立や、京丹後エリアでのかにツーリズムのメッカともいえる間人(たいざ)、夕日ヶ浦温泉の最寄り網野を経由するかにシーズンに運転される臨時列車です。

 このかにシーズン臨時列車グループの中では、同じ目的地を目指すのに、運行経由路線を二度大幅に変更した列車として、個人的に注目しています。また、定期列車の派生列車とはいえ、乗り入れ先の私鉄線所有の車両(編成)で運行された、珍しい運行形態の列車です。

 

 この列車の歴史を辿る際抑えておきたい2つの出来事として、1996年3月ダイヤ改正と1999年10月ダイヤ改正が挙げられます。いづれも電化開業を契機に行われており、前者は山陰本線園部〜綾部間、北近畿タンゴ鉄道宮福線、北近畿タンゴ鉄道宮津線宮津〜天橋立間が、後者は舞鶴線が電化開業。これを背景に京都口をはじめ、北近畿エリアの特急列車の運行系統整理が行われています。

 1996年3月での味めぐりタンゴエクスプローラー号は、海沿い観光拠点に出る山越えコースが、従来の北近畿タンゴ鉄道宮津線経由からJR西日本舞鶴線に変更されました。電化区間ではなく非電化区間を経由することでメリットを最大限に活かすべく、観光拠点である西舞鶴に停車することで利用者増も狙ったと言えます。

 1999年10月の舞鶴線電化開業後は味めぐりタンゴエクスプローラー号は運転取りやめされますが、そのスジを活用して、定期のタンゴディスカバリー号が運行されるようになります。そうです、お気づきかと思いますが、この改正をもって、タンゴエクスプローラー号タンゴディスカバリー号の運転区間が「交換」されています。

 

 

  シーズンごとの運転状況

全シーズン共通 全車指定席、KTR001系を使用

 

 列車種別と運転区間 

 運行開始は1993〜94年シーズンから。京阪神エリアから北近畿タンゴ鉄道宮津線経由で久美浜までの往復が最初の運行経路。そしてこの1シーズンのみ、復路(かえり)が京都非経由になる「梅小路短絡線」経由という、なかなかレアな経路で運行されました。

 その後、大阪と京都の経由順が「入れ替え」され、福知山線経由で2シーズン運行されます。そして、1996年3月の宮津線ほか電化開業をうけて、西舞鶴経由に変更。そのまま最後のシーズンまで同じ経路で運行されています。

 一連の運行経路の詳細について、今回はブログ筆者も書きながら混乱するほど「迷走」しましたので、チャート化し、資料価値をグッと上げることにしました。

運行シーズン 列車種別
1993〜94年 特急 大阪〜(京都か梅小路短絡線)〜久美浜 
 ※山陰本線、北近畿タンゴ鉄道経由
 行き:京都経由、かえり:梅小路短絡線経由(京都非経由)
1994〜95年 特急 京都→大阪→久美浜、豊岡→大阪→京都 
 ※大阪・福知山線、北近畿タンゴ鉄道経由
1995〜96年 特急 京都→大阪→久美浜、豊岡→大阪→京都
 ※大阪・福知山線、北近畿タンゴ鉄道経由
 ※マップは1994〜95年と同じ
1996〜97年 特急 京都→久美浜、豊岡→京都 
 ※山陰本線、北近畿タンゴ鉄道経由
1997〜98年 特急 京都〜豊岡 ※北近畿タンゴ鉄道経由
 ※行き 網野→豊岡間は普通列車
 ※マップは1996〜97年とほぼ同じ(マップからの変更点は久美浜発着なしになった)
1998〜99年 特急 京都〜豊岡 ※北近畿タンゴ鉄道経由
 ※行き 網野→豊岡間は普通列車
 ※マップは1996〜97年とほぼ同じ(マップからの変更点は久美浜発着なしになった)

 

 

 往復の始発・終着駅発時刻と所要時間

 前述の通り、発着地、経由線がコロコロかわる列車ですが、京阪神エリアを昼過ぎに出発し、現地に夕方前に到着する往路と、往路の翌日午前〜昼過ぎに京阪神エリアに向けて戻っていくダイヤである点は6シーズン通じて変わらないトレンド。些末な点でいうと1995〜96年シーズンの復路、始発駅出発時刻が12時台だったものが、翌1996〜97年シーズンには8時台に移っているのは、1996年3月の山陰本線園部〜綾部間の電化開業による北近畿エリアの運行体系を白紙化した影響だと見るのは妥当でしょうか。

 とはいえ、8時台の乗車率が例年よりも低下したのか、1997〜98年シーズンでは10時台にまで繰り下げたダイヤに変更されており、それが続いていることからも、ここが収まりのよいスジだったことがわかります。それにしても旅客動向を単年度で見極めるのは大変むずかしいのだなと、一連の動向を見ながら思います。

運行シーズン 始発・終着駅発時刻と所要時間
1993〜94年 大阪発12:07 → 久美浜着16:07(4:00)●

久美浜発13:14 → 大阪着16:48(3:34)★

1994〜95年

京都発12:50 → 久美浜着16:40(3:50)●

豊岡発12:52 → 京都着16:47(3:55)★

※1995年1月17日発生した阪神淡路大震災以降は運休されており、その後1995年3月号時刻表上では2月18日(京都発)から運転されていたようです。

1995〜96年

京都発12:50 → 久美浜着16:41(3:51)●

豊岡発12:52 → 京都着16:47(3:55)★

1996〜97年

京都発12:51 → 久美浜着16:07(3:16)●

豊岡発8:55 → 京都着12:26(3:31)★

1997〜98年

京都発12:51 → 豊岡着16:15(3:24)●

         ※網野→豊岡間は普通列車

豊岡発10:38 → 京都着14:26(3:48)★

1998〜99年

京都発12:51 → 豊岡着16:15(3:24)●

         ※網野→豊岡間は普通列車

豊岡発10:38 → 京都着14:26(3:48)★

●:土曜日運転、★:日曜・休日運転、※一部日程で上記ルール以外の運転もあり

 

 

 使用車両・編成: 

 使用している車両(編成)を列車名にしているため、もっぱら当時の北近畿タンゴ鉄道所有の特急用ディーゼル列車、KTR001系による運用についています。なお、3両編成2本を保有しておりますが、定期列車でフル稼働する合間での運用スケジュールだったようですので、3両編成が基本と推察しています。

運行シーズン 使用車両
1993〜94年 KTR001系3両編成
1994〜95年 KTR001系3両編成
1995〜96年 KTR001系3両編成
1996〜97年 KTR001系3両編成
1997〜98年 KTR001系3両編成
1998〜99年 KTR001系3両編成

※運転日よって編成両数の増減の可能性があります。

※使用形式については、当時の雑誌、ならびにインターネット上にアップされている写真などから判断しておりますが、運行実績をすべて網羅したものではありません。

 

本日は、以上です。

 

参考資料:JR時刻表、JTB時刻表(各年)、鉄道ダイヤ情報(臨時列車運転情報)、国鉄・JR列車名大事典 寺本光照著 中央書院、列車名変遷大事典 三宅俊彦著 ネコ・パブリッシング、カニという道楽: ズワイガニと日本人の物語 広尾克子著 西日本出版社、年鑑日本の鉄道’97 鉄道ジャーナル社