毎年６月ごろに、チェコ鉄道の鉄道管理公団（SŽ）が１２月改正予定のダイヤに関する情報をリリースしていますが、今年は草案とともに付記されいたのは「国内鉄道網で一部区間の線路容量が大幅超過」という異例の警告文でした。
ご存知の通り、チェコの鉄道には、国有のチェコ鉄道（ČD）による旅客列車をはじめ、オープンアクセス会社や貨物列車が運行されており、与えられた条件に基づいて旅客、事業者双方の利害調整を行っているのが鉄道管理公団（SŽ）となります。
異例の警告文の中身は？
今回発信された「警告」について、国内鉄道全体で発生していると指摘しているのですが、その中でもプラハ方面の混雑にフォーカスされています。
警告には、長距離旅客列車が減速を余儀なくされる点であり、それを回避するために「列車本数を減らす」「１両あたりの積載容量を増やす」など利用効率を高める努力を求められています。
これについて、関係各社からの声までは拾えていませんが、間違いなく旅客列車のオープンアクセス会社や貨物列車運行会社にしわ寄せが来ると考えられますので、今後の動きに注目です。
ここで、何をもって警告となっているのかですが、顕著な例として「プラハ〜コリーン間幹線の混雑」が挙げられています。チェコの首都プラハから東部の主要都市、ならびにウィーン、ブダペストに向かう列車が経由する大幹線なのですが、速達列車と緩行列車が「同居」せざる得ない線路構造のため、２０２５年ダイヤ草案も長距離列車の所要時間が現在より５〜７分程度延びるダイヤで作成されているようです。また、この幹線で運行されている郊外列車「City Elefants（シティ・エレファント、２階建て郊外電車）」の運転区間がコリーン、時間帯によってはクトナー・ホラまでのラッシュ時列車が３０分間隔で運転されるダイヤといった、プラハ〜地域間接続の増強も逼迫の一因となります。
City Elefants、プラハ・マサリク駅にて、２０１６年、ブログ筆者撮影
プラハへの一極集中する列車の例は、世界中の大都市にはつきものであり、日本でいえば、東海道本線や東北本線の東京口のダイヤをイメージするとわかりやすいでしょうか。湘南新宿ラインや大阪の東西線が東京駅、上野駅といったターミナル駅を「迂回する（パイパス）」運行することで、輸送力を維持・増強する事例がありますね。
ダイヤ逼迫の一因は新規開業のSバーン
プラハの話に戻ります。チェコ国内でも高速新線の建設準備が進んでいますが、少なくとも２０２５年ダイヤの問題解決できるスケジュールではありません。この「プラハ〜コリーン間幹線の混雑」で最も注目されるボトルネックがプラハ市内の「プラハ・リベニ駅」である点に注目しておきます。この「プラハ・リベニ駅」が悪いわけではなく、実はあるプラハ市内鉄道の新規開業が影響しているようです。
２０２５年ダイヤ改正よりS-61号線がプラハ・フルショヴィツェ駅（Praha-Vršovice）〜プラハ・ビィエチョヴィツェ駅（Praha-Běchovice）で開業予定であり、これは既存の貨物線を活用する形（詳細は不明）がウリの市内線でした。これは市内〜郊外を連結するバイパス線なので、長距離列車等で逼迫する幹線の線路容量への影響は限定的となる見込みだったと思います（貨物列車は別の話です。なぜなら現行の貨物列車が通る線に駅ができるわけですから）。
※S-61号と関連するS-49号の市内鉄道（Sバーン）の路線図は下記の通り。
https://pid.cz/wp-content/uploads/2021/04/eSko-schema_S49-S61.png
なのに、S-61号線内の途中駅の開業準備が「遅延」していることから「この線で運転しても意味ないよね？」となり、予定通り納入される車両をつかって、新線を経由せずに「混雑する幹線を経由」して運行する逆迂回運転とあいまったようです。その大幹線との結節点となるのはプラハ・リベニ駅ですが、突然湧いた「迂回」騒動で線路設備の増強などインフラ面でのなす術はないようです。
そんななか、鉄道管理公団（SŽ）の「スジ」職人によって草案にこぎつけたようです。この調整にオープンアクセス会社であるレギオジェット社の名前も挙げられて具体的な調整も明記されていましたが、詳細は割愛します。
ということで、２０２５年ダイヤ発表はもうじきなのか、例年よりも遅れるのか、趣味的には大変興味深いため、半年後のダイヤ改正にむけて追跡を開始していきます。
本日は以上です。
参考資料：European Rail Atlas Book2、Atlas Drah Ceske Republiky 2006-2007
参考ページ：チェコ鉄道の鉄道管理公団（SŽ）内 Návrh jízdního řádu na rok 2025
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