2023年に通年で、1987〜1993年の間に運転開始されたドイツ・オーストリアを走るユーロシティの歴史を振り返りました。その参考にしたのが、Die EuroCity-Zuege - Teil 1 - 1987-1993: Europaeische Zuglegendenというドイツ語本であり、この続編がDie EuroCity-Zuege: Teil 2: 1993 bis 2020 として出版されています。そのため、引き続き私の後学、備忘を兼ねて原文訳を補足しながらまとめていきます。位置づけは前回に続き第2編となります。

 

第2編の29回目は、カール・マリア・フォン・ウェーバー号を取り上げます。

EC Carl Maria von Weber

(以下本文を参照に日本語訳、一部表現、短縮名称等をブログ筆者で補足)

カール・マリア・フォン・ウェーバー(1786~1826)ドイツの作曲家、指揮者、ピアニスト。

 

1994年5月29日より、EC178/179 カール・マリア・フォン・ウェーバー号がプラハとハンブルクを結ぶ。この列車は、コメニウス号、ヴィンドボナ号、ハンガリア号、ポルタ・ボヘミカ号といったプラハとベルリンを結ぶ2時間等間隔運行のユーロシティ列車グループの一員となった。

 

DB(ドイツ鉄道)の客車とČD(チェコ鉄道)の食堂車で構成される北行EC178は、DB-180型交直流電気機関車に牽引され、プラハ・ホレショヴィツェ駅発8:47で、終着ハンブルク・アルトナ駅着17:15。その後、ウースチー・ナド・ラベム、ジェチーン、バート・シャンダウ、ドレスデン中央駅、ドレスデン・ノイシュタット駅、ベルリン・シェーネフェルト空港駅、ベルリン市内のベルリン中央駅、同フリードリッヒ駅、同ツォー駅、シュパンダウ、ハンブルク中央駅、ハンブルク・ダムトール駅に途中停車する。機関車交換として、ドレスデン中央駅(11:25着/11:36発)でDB-112型電気機関車に、ベルリン中央駅(当時は東駅、13:26着/13:40発)ではDB-218型ディーゼル機関車またはMaK社製DB-240型ディーゼル機関車(プロトタイプ3両のうちの1両)に付け替えられて運行された。対向列車の南行きEC179は、ハンブルク・アルトナ駅発12:38で、終着プラハ・ホレショヴィツェ駅着21:13。所要時間は8時間28分/35分で、走行距離687km、表定速度80km/h、81km/h。

 

カール・マリア・フォン・ウェーバー号は、ベルリン中央駅の改修による一時的閉鎖にともない、1994年9月25日からは暫定的にナウエンを終着駅となり、ベルリン・リヒテンベルク駅とベルリン北部の外環線を経由することになった。運行区間が短縮されるということは、EC178/179に必要な編成数は1本で十分ということになり、その結果IC500/501 ヤン・ペルナー号(プラハ・ホレショヴィツェ駅〜ボフミーン間)と編成を共用した。

 

1995年9月24日から、カール・マリア・フォン・ウェーバー号はの北側の始発・終着駅がベルリン・リヒテンベルク駅に変更(13:11着/16:31発)、IC870/871 ケーテ・コルヴィッツ号(ベルリン〜ドレスデン間)とEC176/177 ポルタ・ボヘミカ号(ベルリン〜プラハ間)と編成の共通運用ローテーションを行った。

 

1996年9月28日以降、カール・マリア・フォン・ウェーバー号の北の始発・終着駅がヴェスターラントに変更、距離にして235km分延長運転され、ズィルト島にも初のユーロシティ列車乗入れが実現。EC178は現在、プラハ本駅発8:18で、ヴェスターラント着19:22(所要時間11時間4分)。ベルリン〜ハンブルク間の電化により、DB-112型電気機関車はハンブルク・アルトナ駅までそのまま走行できるようになった。そこからヴェスターラントまでの最後の区間では、DB-218型ディーゼル機関車が重連牽引し、ハイデ、フースム、ニービュルに途中停車。対向列車の南行きEC179はヴェスターラント発10:36で、プラハ本駅着21:40。EC178/179の所要時間は両方向とも同じ、表定速度は83km/h。

 

カール・マリア・フォン・ウェーバー号は、1998年5月24日から、ベルリン東駅とツォー駅、シュパンダウ経由で運行される。加えて、途中停車駅にハンブルク・ベルゲドルフ駅が追加されたため、ハンブルク・アルトナ駅へのアプローチがRainwegから延びる連絡線経由に変更。その結果DB-112型電気機関車からDB-218型ディーゼル機関車(重連)への交換駅がイッツェホーに変更された。とはいえ、ユーロシティ ポルタ・ボヘミカ号と共同運用するEC178(プラハ発8:07→ヴェスターランド着19:22)とEC179(ヴェスターランド発10:41→プラハ発21:41)の所要時間は、4分減/11分増と比較的一定している。

 

2000年5月28日以降、EC178/179は再びハンブルク北部のマルシュ線を離れ、キール中央駅発着となる。時刻表の位置も変更される。EC178はプラハ本駅発7:18で、ドレスデン駅(10:04着/10:16発、機関車交換)、ノイミュンスターへの途中停車も追加されたうえでキール中央駅着16:11(表定速度88km/h)。折り返し、EC179はキール中央駅発13:48で、プラハ本駅着22:43(途中、ドレスデン中央駅19:42着/19:55発、機関車交換)。

※この時期の時刻表は、ユーロシティ ポルタ・ボヘミカ号を参照されたい。

 

2001年6月10日で、運転区間が短縮され、北の始発・終着駅がキール中央駅から再びハンブルク・アルトナ駅発着に変更された(EC178:プラハ本駅発6:44→ハンブルク・アルトナ駅着15:12/EC179:ハンブルク・アルトナ駅発14:44→プラハ本駅発23:09)。そして2002年12月15日から、カール・マリア・フォン・ウェーバー号の北の始発・終着駅は再びヴェスターラントに戻るが、時代は進んでも逆説的に、1996年当時の所要時間を下回り、表定速度は78km/hと79km/hにとどまり、ユーロシティ列車の目標値である90km/hを大幅に下回っている!2003年12月14日以降、EC178/179は、プラハ〜ベルリン〜 (ハンブルク)路線の他のユーロシティ列車と同様、カール・マリア・フォン・ウェーバー号という列車名を失った。

 

しかし、2008年12月14日からは、新しい列車番号(EC378/379)と、ウィーン南駅→オストゼーバート・ビンツまたはオストゼーバート・ビンツ→ブルノと、往復非対称ルートで、カール・マリア・フォン・ウェーバー号の名称が復活した。ČD編成のEC378はÖBB-1216型電気機関車牽引でウィーン南駅発5:58、国境駅ブジェツラフ(6:55着/7:04発、ZSSK-350型電気機関車に交換)、ブルノ本駅、チェスカー・トゥジェボヴァー、パルドゥビツェ、コリーン、プラハ・ホレショヴィツェ駅(10:29着/10:40発、ČD-371型電気機関車に交換)、ウースチー・ナド・ラベム、ジェチーン、バート・シャンダウ、ドレスデン中央駅(12:46着/13:04発、DB-101型電気機関車に交換)、 ドレスデン・ノイシュタット駅、エルスターヴェルダ、ベルリン・ズュートクロイツ駅、ベルリン中央駅、ベルリン・ゲスントブルンネン駅、ベルナウ、エーベルスヴァルデ、アンゲルミュンデ、プレンツラウ、パセウォーク、アンクラム、ツュッソー、グライフスヴァルト、シュトラールズント(18:22着/18:30発、DB-115型電気機関車に交換、方向転換)、ベルゲン・アウフ・リューゲン、プローラ、そして終点のオストゼーバート・ビンツ着19:17。走行距離1,085km、表定速度82km/h、所要時間13時間19分。一方、対向列車EC379は、オストゼーバート・ビンツ発10:42、終着ブルノ本駅着22:14。共通運用ローテーションにはカール・マリア・フォン・ウェーバー号に加え、EC70/71 グスタフ・マーラー号、EC172/173 ヴィンドボナ号、EC177/178 ヨハネス・ブラームス号というユーロシティ列車も含まれる。2010年ダイヤ(2009年12月13日有効)〜2012年ダイヤ(2012年12月8日まで有効)では、ウィーン南駅の取り壊しに伴い、EC378はウィーン・プラターシュテルン駅始発となる。また、シュトラールズント〜オストゼーバート・ビンツ間の短い区間で活躍していた、老朽化したDB-115型(旧110型)電気機関車がDB-120型電気機関車に置き換えられている。

 

2013年ダイヤ(2012年12月9日有効)から、EC378は一時的にカール・マリア・フォン・ウェーバー号からスロヴェンスカー・ストレラ号に名称が変更された(DBによる時刻表媒体には掲載されない、ちなみにEC379はカール・マリア・フォン・ウェーバー号のまま変更なし)。2014年12月14日から、EC379はオストゼーバート・ビンツ始発は変わらず、終着駅がプラハ本駅着19:25と変更された。さらに1年後の2016年ダイヤ(2015年12月13日有効)には、従来の列車番号EC378/379は、EC170/171に変更され(従来はハンガリア号で使用)、EC170はカール・マリア・フォン・ウェーバー号の名に戻った。加えてベルリン以北への運行は取りやめ、EC170/171はプラハ本駅〜ベルリン中央駅間のみとなった。南行EC171はベルリン中央駅発6:58でプラハ着11:28。対向列車の北行EC170は、プラハ中央駅発16:27でベルリン中央駅着20:58と、午後遅くから夕刻にかけて運転された。EC170/171は、EC378/379 ポルタ・ボヘミカ号(プラハ〜キール間)との間で使用編成を共同運用していた。また、2016年ダイヤまでは、EC171では夜行列車CNL457 コペルニクス号から車両交換してケルン〜プラハ間の車両も連結していた。

 

2018年12月9日(2019年ダイヤ)からプラハとドイツ国内の目的地を結ぶ全ユーロシティ列車の名称がベルリナー号と統一された(ユーロシティ列車 カール・マリア・フォン・ウェーバー号の名は2018年ダイヤまで)。カール・マリア・フォン・ウェーバー号としての最後のダイヤとなった2018年ダイヤでは、ČDの「Najbrt」デザインのヴェクトロン機関車ČD-193型電気機関車は最高速度200km/hの認可を受けており、機関車側面には運行都市に関するモチーフが描かれ、これまでカール・マリア・フォン・ウェーバー号を牽引してきたČD-371型電気機関車と置き換えた。これで、ドレスデン中央駅での停車時間はわずか5分に短縮された。このダイヤでの所要時間は、双方向とも4時間20分から4時間8分に短縮される(プラハ発16:33→ベルリン20:41着/7:16発→プラハ着11:24)。その結果、表定速度は94km/hとかつてない速度に達した!

 

 

  編成例(書籍内イラストから)

1994年夏ダイヤ

コンパートメント客車(2等のみ)、オープン座席車(1等、2等)、食堂車

ドイツの客車列車、食堂車はチェコ鉄道担当、途中増解結なし

 

今回は以上です。

 

 

参考資料:

・Die EuroCity-Züge: Teil 2 1994-2020 /Jean-Pierre Malaspina, Martin Brandt

・Thomascook European Timetable/Thomascook

参考ページ:

Datenbank Fernverkehr (Database long-distance trains)

Harrys Bahnen

ページ内写真:Flickr(引用元は写真とセットで明記)