イギリスの鉄道雑誌Today's Railways誌を参考に、2003年ダイヤでのヨーロッパ各国の動向に関する記事を日本語でまとめてみました。各記事にそれなりのボリュームがあるため、複数回に分けています。今回はヨーロッパの国際列車、ならびにオーストリア国内のダイヤ改正後の動きです。

 

なお、原本は英語のため、機械翻訳で日本語への変換後、当時の鉄道状況などを別に調査したうえで追記、構成を変えて文章化しております。一部ブログ筆者により情報を補足している点もあります。その点は  と緑で塗っております。

 

 

  国際列車

 

 ウィーン発の越境の準急(Semi-fast)便が増便 

 2003年ダイヤでは、オーストリアのウィーンから近隣諸国へのEURegioブランドの準急(Semi-fast、ドイツ語でEilzug)が導入された。2002年6月15日から運行されているハンガリーのギュール行の列車に、4往復目の列車が追加された。

 ウィーン北駅〜ベルンハルトシュタール間の列車の大半は、1014型機関車を使用したプッシュプル式で運行され、チェコ共和国のブジェツラフまで延長運転される。現在、4往復の列車がフロリッドドルフ・バイパス線を経由してウィーン南駅〜レッツ(Retz)〜ズノイモ間を運行している。ウィーン北部からの乗客にとって、ウィーン郊外が無停車である点は歓迎されないが、ウィーン南駅での乗り継ぎが可能なので、チェコからの乗客に歓迎されている。ウィーン〜マルヒェッグ間の6往復の列車がスロヴァキアのブラチスラヴァまで延長運転された。[Jan.2003より]

 

 ブダペスト〜サラエボ間、ついに開通

 ブダペスト〜サラエボ間の直通夜行列車は、コソボ紛争時のNATOによるセルビア空爆以来初めて、2002年12月15日に再開される予定。この列車のペーチュ〜オシイェク間の牽引機はMÁV M41型ディーゼル機関車となる。[Jan.2003より]

 

 

 ウィーナー・ノイシュタット〜ショプロンの接続改良

本誌では、ブダペスト〜ショプロン間のインターシティ列車をウィーナー・ノイシュタットまで延長運転する計画があることを紙面ですでに掲載した。2003年ダイヤでは、ブルック・アン・デア・ムーア方面へのインターシティ列車4本が確認できる。5往復の各駅停車がソンバトヘイまで延長運転されることになり、インターシティ同様に機関車牽引の客車列車に変更されたため、この路線でのディーゼル列車の運用は大幅減少した。週末には、ウィーナー・ノイシュタット~ショプロン~ソンバトヘイ~シャーヴァール~ケストヘイ間の列車が新設される!インターシティ列車の牽引に新型2016型ディーゼル機関車が使用されるかどうかはまだわからない。本稿を掲載する時点では、2016型ディーゼル機関車がMÁV(ハンガリー国鉄)客車に電気暖房を供給することができていない。

2016型ディーゼル機関車(2011年グラーツ駅にて、ブログ筆者撮影)

 

 

  オーストリア

 

 ウィーン〜ザルツブルク間の速達化

 ÖBBの2003年ダイヤの最大の特徴は、ウィーン〜ザルツブルク間の所要時間短縮である。ユーロシティ列車は2分、インターシティ列車は10分の速達化を実現、ウィーン〜ザルツブルグ間の所要時間は2時間57分(ユーロシティー)、3時間18分(インターシティ)となった。ウィーン〜インスブルック間の所要時間は5時間均一となった。これらは、ザンクト・ペルテン〜ザンクト・ヴァーレンティーン間の新線開通の結果が反映されたのだが、10年前、すでにいくつかの列車で同様の所要時間を達成していたことは言うまでもない。[Jan.2003より]

 

 

 旧型電気機関車の撤退

 2003年ダイヤ改正に伴い、ÖBBは多くの旧型電気機関車を定期運行から撤退させた。1010型1110型1110.5型1041型は、2003年春までは臨時列車に登場することもあるが、ダイヤ上の定期運行の予定はなくなった。撤退の理由は、1116型電気機関車の納入が続いているためである。

 なお、ウィーン・フランツ・ヨーゼフ駅発着で運用されている1046型電気機関車は、2003年末までウィーン・フランツ・ヨーゼフ駅〜グミュント/クレムス(クレムス・アン・デア・ドナウ)までの路線で運行を続ける。アッテナング・プッフハイム機関区の1141型電気機関車は、以下の路線の旅客列車に使用される(番号はすべて列車番号、曜日が記載ない列車は毎日運転):

  • リンツ〜ザルツブルク間 3028(月〜金)
  • アムシュテッテン〜クライネライフリング間:3500 (月〜土), 3519 (土), 3520(土), 3526 (月〜土, 3531 (月〜土),3539 (月〜金、日)
  • クラインライフリング〜ゼルツタール〜ビショフスホーフェン間:3553 (月〜土), 3554 (月〜土), 3556,3560 (月〜金、日), 3561 (月〜土),3562, 3564, 3565, 3567, 3568,3570 (月〜土), 3571, 3573 (月〜土),3582, 3583, 3585 (月〜土), 3597(月〜金、日), 3681 (日), 3692 (土),3693 (土), 3694
  • リンツ〜ザンクト・ヴァーレンティーン〜クラインライフリング間:3601 (月〜金), 3608 (月〜金), 3632(月〜金、日)
  • リンツ〜ズンメラウ間:3840 (月〜金), 3847 (月〜金)
  • リンツ〜キルヒドルフ〜ゼルツタール間:3901 (土・日), 3943 (月〜金), 3952(月〜金).
  • ザンクト・ミヒャエル〜ウンツマルクト間:4203 (月〜土), 4208 (月〜土)
  • ゼルツタール〜ザンクト・ミヒャエル間:4473(月〜土)、4476(月〜土)、4478、4483(月〜土)、4487、4488(日) [Jan.2003より]

 

 ÖBBの電車列車の入れ替え 

 2002年12月15日にウィーン空港線が運行再開されて以来(この出来事については本誌86号で詳しく報告する予定)、ÖBBは空港経由のウィーン北駅〜ヴォルフシュタール線に使用できる4020型電車を増やそうとしている。これまでピーク時の運行には旧型4030型電車が使用されるなど、ウィーン地区では4020型電車が不足していたため、Sバーン幹線(フロリッズドルフ〜リージンク)の運行にもこの老朽化した旧型4030型電車が使用されていた。 2002年12月15日以降、ÖBBはウィーン南駅〜ヴァンパースドルフ〜ウィーナー・ノイシュタット間の4020型電車をプッシュプル式客車列車に置き換え、またインスブルックで運用している一部電車列車をウィーンに移した。新型の4023/4024型【タレント】電車の納車は2004年以前には予定されていない。[Jan.2003より]

4020型電車(2016年ブログ筆者撮影)

 

 
 

 インスブルック〜ヴェルグル/ミッテンヴァルト間の運行体系再編

 2013年ダイヤ改正に伴い、インスブルック〜ヴェルグル間の1時間等間隔で運行される各駅停車がドイツのローゼンハイムまで延長運転されることになり、従来のクーフシュタインで乗り換えが不要となった。この新しい列車の大半はÖBB-1142型電気機関車によるプッシュプル編成客車で運行されるが、一部にはインスブルックまでDB-111型電気機関車が牽引して運行される。こうして、クーフシュタイン行のDB-425系電車の使用は終了した。

 新型の電車の運用は、2002年6月からローゼンハイム〜クーフシュタイン間の旅客列車の一部のみであった。さらに、ザルツブルグ〜ザールフェルデン〜ヴェルグル〜インスブルック間の準急列車「ザルツァッハ・スプリンター」は、プッシュプル式客車編成に1等コンパートメント車が連結されるようになった。一方、インスブルック〜ミッテンヴァルト間の大半の便は、ドイツのミュンヘンまで延長運転されている。これらはDB-111型電気機関車牽引のプッシュプル式客車編成で運行されている。

 

 

 マリアツェル線(Mariazellerbahn)のダイヤ改正

 ÖBBのダイヤ改正と時を同じくして、ÖBBと地方政府の旅客輸送当局であるNÖVOG(低地オーストリア交通機関会社)との間で、狭軌のマリアツェル線(Mariazellerbahn)のダイヤ改正内容について合意に達した。それには、ザンクト・ペルテンとマリアツェルを結ぶ3往復準急列車の設定に加え、同ルートの各駅停車に関する内容が含まれている。また、ザンクト・ペルテン〜ローベンバッハミューレ間で増便され、この区間はほぼ1時間1本の運行となる。さらに、5090型ディーゼル列車がマリアツェル〜ゲージング〜ラウベンバッハミューレ間でシャトル運行される。

 ここで重要なのは、一般時刻表に観光列車も掲載されるようになったことで、これらは電気機関車(「Panoramic 760 Touristik」)または蒸気機関車(「Panoramic 760 Nostalgie」)がそれぞれ牽引し、その運行日も記載されている。オーバー=グラーフェンドルフ〜ルプレヒトホーフェン間の支線はマンクまでに短縮された。最近ではルプレヒトホーフェンまでは数本の列車が運行されたのみのため、鉄道車両のメンテナンスの改善とともにダイヤ改正が実施されるかどうかはまだわからない。

 NÖVOGはÖBBと10台の1099型電気機関車を中期メンテナンス契約を結んでいるものの、2002年夏にはそのうち6台しか稼働しておらず、その6台の中でも時々故障が発生していた。このような事態は旅客客車でも同様で、客車はメンテナンス不足のため運休せざるを得なかった。この状況のため旅行会社からチャーターされた臨時列車は運休を余儀なくされている。ÖBBに多額の補助金を支払っているNÖVOGは現在、運行会社に大きな圧力をかけているが、状況が本当に改善されるかどうかはまだわからない。

 

 

 ウィーン市内の駅名変更

2002年12月の時刻表導入に伴い、ÖBBはいくつかの駅名を変更した。ウィーンの境界線内にある駅名はすべてWien-xxxとなった。また、Inzersdorf-MetzgerwerkeがWien-Blumentalになるなど、完全に変更される駅もある。

 

 

本日は以上です。

 

参考資料:Today's Railways の2003の各紙面内、News Round Upより当該記事をピックアップ