しばらくの間、JR西日本で現在も運転されている企画列車「かにカニエクスプレス」の一派、ならびにそれ以前からの「かにシーズン列車」の運転の歴史を振りかえります。

 

今回は、2001〜02年から2シーズン、それも片道のみのみ設定されていたかにカニ文殊号を取り上げます。関西で名前の上がるかに産地の一つとして丹後地方があります。具体的には高級ブランド・間人(たいざ)かにが上がる京丹後市が有名で、天橋立はその隣町に位置します。有名観光地にあやかって軒を並べる割烹旅館では間人かにをはじめとした各種かにを提供しています。今回紹介する列車はその丹後エリアへの送客に寄与するために設定された列車です。ちなみに列車名にある文殊とは仏教における菩薩様のおひとりを指しますが、天橋立駅のある住所も宮津市文珠であることは、どこまでありがたい街なのだろうかと一人感嘆しております。

 

かにカニ文殊号

 まず、親となる特急文殊号について。1996年3月ダイヤ改正で北近畿タンゴ鉄道(現在の京都丹後鉄道)宮津線が電化開業されたのをうけて、それまでの急行みやづ号を格上げする形で設定されてキャリアがスタートします。ちなみに、同タイミングで京都口(ぐち)の特急もディーゼル列車から電車化され、特急きのさき号(城崎行)、同はしだて号(天橋立行)、同たんば号(福知山行)と既存急行列車を置き換える形で登場しています。その後、2011年3月のダイヤ改正で、タンゴエクスプローラー号文殊号こうのとり号に統合される形で発展的消滅を遂げました。

 定期列車の特急文殊号は細々とした本数であり、設定当初でも新大阪発1本(16:56発)、天橋立発2本(9:02、12:41)というダイヤは、同区間で運転されたタンゴエクスプローラー号用編成本数が限られており、増発が難しい時間帯を文殊号が補完していたといえます。

 その文殊号の名前に、かにカニを冠につけた、かにカニエクスプレスの一派列車ですが、この列車の設定背景には、下記2点のいづれかが該当するのかなと思います。

1)旺盛な大阪からの需要にあやかった増便

2)当時延伸を繰り返していた丹後半島方面への高速道路との対抗馬として設定

いづれにせよ、2シーズンで運行が取りやめられたところから、芳しい結果が得られなかったのでしょう。

 

 さて、文殊号があまり「ぱっとしない」歴史しか有しない列車のためか、かにカニ文殊号としての運転記録についても充分に確認できませんでした。強いて言えば、途中停車駅について、定期の文殊号では停車している柏原(かいばら)、大江はかにカニ文殊号では通過している点でしょうか。

 

 

  シーズンごとの運転状況

 

全シーズン共通 全車指定席(グリーン車連結)、福知山線、北近畿タンゴ鉄道宮福線経由

 

 列車種別と運転区間 

運行シーズン 列車種別
2001〜02年 特急 大阪→天橋立 ※片道のみ設定
2002〜03年 特急 大阪→天橋立 ※片道のみ設定

 

 

 往復の始発・終着駅発時刻と所要時間

運行シーズン 始発・終着駅発時刻と所要時間
2001〜02年 大阪発8:42 → 天橋立着11:08(2時間26分)
2002〜03年 大阪発8:24 → 天橋立着11:00(2時間36分)

 

 

 使用車両・編成

運行シーズン 使用車両
2001〜02年 定期列車と共通運用と推察(その場合、183系特急電車4両か)
2002〜03年 定期列車と共通運用と推察(その場合、183系特急電車4両か)

※運転日よって編成両数の増減の可能性があります。

※使用形式については、当時の雑誌、ならびにインターネット上にアップされている写真などから判断しておりますが、運行実績をすべて網羅したものではありません。

 

本日は、以上です。

 

参考ページ:文殊(列車)、北近畿タンゴ鉄道、北近畿ビッグXネットワーク(いづれもWikipedia)

参考資料:JR時刻表、JTB時刻表(各年)、鉄道ダイヤ情報(臨時列車運転情報)、国鉄・JR列車名大事典 寺本光照著 中央書院、列車名変遷大事典 三宅俊彦著 ネコ・パブリッシング

写真:Frickrのリンク