2023年に通年で、1987〜1993年の間に運転開始されたドイツ・オーストリアを走るユーロシティの歴史を振り返りました。その参考にしたのが、Die EuroCity-Zuege - Teil 1 - 1987-1993: Europaeische Zuglegendenというドイツ語本であり、この続編がDie EuroCity-Zuege: Teil 2: 1993 bis 2020 として出版されています。そのため、引き続き私の後学、備忘を兼ねて原文訳を補足しながらまとめていきます。位置づけは前回に続き第2編となります。

 

第2編の9回目は、キームガウ号を取り上げます。

EC Chiemgau

 

(以下本文を参照に日本語訳、一部表現、短縮名称等をブログ筆者で補足)

キームガウとは、バイエルン州南東部の文化的景観の名称

 

すでに述べたように、2008年12月14日から、オーストリアのシュタイアーマルク州々都グラーツが2組の新しいユーロシティ列車(どちらも列車名なし)の始終着駅となった。EC316/317はザールブリュッケン発着、EC318/319はフランクフルト発着である。ここではEC318/319の詳細を見ていくことにする:

 

EC318はグラーツ発5:45で、シュトゥットガルト中央駅までは、EC316と同じルートを経由、シュトゥットガルト含む4つの駅で方向転換を実施(ゼルツタール[7:13着/7:19発]、ビショフスホーフェン[8:48着/8:57発]、ミュンヘン中央駅[11:37着/11:43発])。さて、シュトゥットガルト中央駅発14:05で、ハイデルベルク中央駅、ヴァインハイム駅、ベンスハイム駅、ダルムシュタット中央駅を経由してフランクフルト中央駅着15:40。対向列車のEC319は、フランクフルト中央駅発12:20→グラーツ着22:22で終点を迎える(途中方向転換する駅を列挙すると、シュトゥットガルト中央駅13:53着/13:58発、ミュンヘン中央駅16:16着/16:22発、ビショフスホーフェン19:02着/19:13発、ゼルツタール20:40着/20:46発)。つまり、EC 318/319は総走行距離895kmをそれぞれ9時間55分と10時間02分の所要時間で走破、表定速度それぞれ90km/h、89km/hである。EC318/319は、EC114、115、117、390、391と共通運用に加わり、EC316/317と同様、DB-101形電気機関車牽引のDB制御客車を含む編成で構成される。

 

2010年12月12日以降、この列車ペアにはEC218/219という新しい列車番号が付与され、同時に所要時間も若干延びる:EC219はフランクフルト発12:18→グラーツ着22:23となる。2014年から2017年にかけて、両列車の表定速度は90km/h達する。EC218:グラーツ中央駅発5:45→フランクフルト中央駅着15:40(所要時間9時間55分)、EC219:フランクフルト中央駅発12:20→グラーツ中央駅着22:14(所要時間9時間54分)。

 

2018年ダイヤ(2017年12月10日)より、キームガウ号という愛称が付与され、同時に北行のEC218が月〜木限定でエアフルト中央駅まで延長運転される。この結果方向転換の回数がフランクフルト中央駅での方向転換が加わって5回に増えた(!)。この列車名は1979年〜2002年まで間ケルン中央駅(またはフランクフルト中央駅)〜ザルツブルク中央駅間のインターシティ列車で使用されていたもの。

 

EC218のグラーツ発車時刻は9分繰り上げられ5:36となり、フランクフルト中央駅着15:55となった(途中停車駅がフランクフルト・ニーダーラート駅が加わる)。フランクフルトで5回目の方向転換を行った後、フランクフルト中央駅発16:40で運行が続く。途中、ハーナウ、フルダ、ヒュンフェルト、バート・ヘルスフェルト、アイゼナハ、ゴータに途中停車後、エアフルト中央駅着18:56。金〜日のみ終着となり、フランクフルト中央駅着15:40。2018年5月16日から8月5日まで、ミュンヘン東駅には途中停車せず、ザルツブルク〜ビショフスホーフェン間は運休。一方、EC219は従来通りのダイヤ。

 

2019年ダイヤ(2018年12月9日)より、エアフルトからは毎日運行(18:59発)となるが、工事のため、EC218は2019年8月11日~2019年9月29日の間の日曜日はダルムシュタット中央駅止まり、2019年8月12日~2019年10月24日の月~木はフランクフルト止まりとなる。2020年ダイヤ(2019年12月15日)では、引き続きEC218は2019年12月20日から2020年1月5日まで、金〜日はフランクフルト止まりで運行される。1991年開通したマンハイム・シュトゥットガルト高速新線の全面改修の影響で、2020年4月11日から2020年10月31日まではミュンヘン中央駅止まりとなる(グラーツ→ミュンヘンでの運転)。

 

2020年の休工日には、EC218はグラーツ中央駅発5:45→エアフルト着19:01、EC219 フランクフルト中央駅発12:20→グラーツ中央駅着22:14)。EC218の所要時間は13時間16分という驚異的な時間を記録、総走行距離1050kmを表定速度79km/hという極めて緩やかな速度で走行した!

 

 

  編成例(書籍内イラストから)

2018〜19年冬ダイヤ

コンパートメント客車(1等)、オープン座席車(1等、2等)※制御客車含む、1等・ビストロ合造車

ドイツの客車列車、途中増解結なし

 

今回は以上です。

 

 

参考資料:

・Die EuroCity-Züge: Teil 2 1994-2020 /Jean-Pierre Malaspina, Martin Brandt

・Thomascook European Timetable/Thomascook

参考ページ:

Datenbank Fernverkehr (Database long-distance trains)

Harrys Bahnen

ページ内写真:Flickr(引用元は写真とセットで明記)