2023年に通年で、1987〜1993年の間に運転開始されたドイツ・オーストリアを走るユーロシティの歴史を振り返りました。その参考にしたのが、Die EuroCity-Zuege - Teil 1 - 1987-1993: Europaeische Zuglegendenというドイツ語本であり、この続編がDie EuroCity-Zuege: Teil 2: 1993 bis 2020 として出版されています。そのため、引き続き私の後学、備忘を兼ねて原文訳を補足しながらまとめていきます。位置づけは前回に続き第2編となります。

 

第2編の6回目は、パッチャーコーフェル号を取り上げます。

EC Patscherkofel

(以下本文を参照に日本語訳、一部表現、短縮名称等をブログ筆者で補足)

パッチャーコーフェルは、トゥックス・アルプスにある標高2246mの山である。チロル地方州都インスブルック郊外の「地元の山」として知られている。

 

1993年5月23日から、ザールブリュッケン〜ミュンヘン間のインターシティ ザール・クーリエ号(IC812/813)がインスブルック発着に延長運転されるタイミングで、ユーロシティ(EC14/15)に格上げされ、パッチャーコーフェル号という列車愛称が与えられた。なお、延長運転するミュンヘンとインスブルック間は、急行列車 D280/281が代替えしたもの。

 

EC15はザールブリュッケン発6:26、途中停車駅として、ホンブルク、カイザースラウテルン、ノイシュタット、ルートウィヒスハーフェン、マンハイム、ハイデルベルク、シュトゥットガルト、ウルム、アウクスブルク、ミュンヘン・パッシング駅に停車し、ミュンヘン中央駅(11:11着/11:30発)。この駅で方向転換と機関車交換を行い、引き続きローゼンハイム、クーフシュタイン、ヴェルグル、イェンバッハに途中停車し、インスブルック着13:20。

この列車の走行距離684km、所要時間6時間54分、表定速度99km/h。EC14はインスブルック15:39発、ミュンヘン中央駅経由(17:30着/17:48発)、ザールブリュッケン着22:30というダイヤで、途中停車駅はEC15/14とも共通。ただEC14の所要時間が6時間51分と若干短く、表定速度も100km/hとなる。

 

パッチャーコーフェル号の車両運用だが、他の列車との共通運用(ローテーション)はなくEC14/15のみで1日のローテーションが組まれた。必要なDB客車(Apmz、Avmz、ARmz、Bvmz 2両、Bpmz 4両、さらに夏季のみBpmz 1両増結)は、ザールブリュッケン中央駅隣接の車両基地から供給される。

 

パッチャーコーフェル号は、ユーロシティの中でも短命な列車のひとつである。1995年5月27日、運行開始からわずか2年余りで廃止。とはいえ、ザールブリュッケン〜ミュンヘン間では、IC611/612という列車番号、かつて同区間で活躍したザール・クーリエ号の愛称による高品質の長距離列車サービスが、該当する時刻表の位置に残っている。ミュンヘン以南の朝の時刻表は、EC87 ティエポロ号(ミュンヘン中央駅~ヴェネチア・サンタ・ルチア駅)に引き継がれた。

 

 

  編成例(書籍内イラストから)

1994/95冬ダイヤ

コンパートメント客車(1等、2等)、オープン座席車(1等、2等)、食堂車

ドイツの客車列車、途中増解結なし

 

今回は以上です。

 

 

参考資料:

・Die EuroCity-Züge: Teil 2 1994-2020 /Jean-Pierre Malaspina, Martin Brandt

・Thomascook European Timetable/Thomascook

参考ページ:

Datenbank Fernverkehr (Database long-distance trains)

Harrys Bahnen

ページ内写真:Flickr(引用元は写真とセットで明記)