1987年からTEEの後継としてはじまったユーロシティの歴史を振り返っていく企画を立ち上げました。ドイツから取り寄せた、Die EuroCity-Zuege - Teil 1 - 1987-1993: Europaeische Zuglegendenの翻訳を通じて、ユーロシティーの一端を知る、文字通り「備忘録」としたいと思います。

 

まとめの対象ですが、前述の書籍内では1987〜1993年の間に運転開始されたユーロシティを扱っており、その中の列車名ごとに歴史や仕様がまとめられているページとします。書籍の紹介順に倣って、31回目は、シュタッフス号マックス・ラインハルト号の2列車を取り上げます。

EC Stachus und Max Reinhardt

(この写真が参考文献に掲載されているわけではありません)

 

(以下原文訳、一部表現、短縮名称等をブログ筆者で補足)

・カールスプラッツ(ミュンヘン中心部の広場、交通の分岐点)の口語名「シュタッフス」。

・マックス・ラインハルト(元マキシミリアン・ゴールドマン、1873年 - 1943年)、オーストリアの演劇・映画監督、芸術監督、劇場プロデューサー、劇場創設者。

 

1985年6月2日夏ダイヤ改正を機に、ドイツ連邦鉄道(以下、DB)とオーストリア連邦鉄道(以下、ÖBB)は、オーストリアからバイエルンの大都市ミュンヘンを日帰りで訪れることができる直通列車となるD260/261 シュタッフス号を新設し、ウィーン〜ミュンヘン間465kmの従来の運行間隔を詰めた。D260はウィーン西駅発6:00、ザンクト・ペルテン、アムステッテン、リンツ、ヴェルス、アットナング=プッフハイム、ザルツブルク、ローゼンハイムで途中停車し、ミュンヘン中央駅着11:09。復路はD261がミュンヘン中央駅発18:48、終点ウィーン西駅着23:55。1986年夏ダイヤから、D260は10分(ミュンヘン着10:59)、D261は7分(ミュンヘン発18:58→ウィーン着23:58)加速され、表定速度93km/hを達成。

 

1987年5月31日より、シュタッフス号はEC66/67としてユーロシティに格上げされ、運用に就いていた4010系電車は継続使用される。格上げ後のダイヤは、EC66は旧D260を踏襲し、EC67についてはミュンヘン中央駅到着時刻が19:00となる変更のみとなった。1989年からは列車番号がEC18/19に変更され、途中停車駅のローゼンハイムの通過とオーストリア区間での加速により所要時間が約20分短縮された(表定速度100km/h以上)。1991年夏ダイヤから、シュタッフス号(EC166/167)は初めて大きな変化を遂げた。使用列車が、従来のÖBB電車列車から、ÖBBの2等車(Bmz)を増結したユーゴスラビア国鉄編成に交換された(ザグレブ発着のEC ミマラ号との2日間共通運用、1日目:EC10-EC167、2日目:EC164-EC11)。運行ダイヤについて、西行EC166は引き続きウィーン西駅発6:00でミュンヘン中央駅着10:35、対向の東行EC167も大幅に加速された(ミュンヘン発19:25、ウィーン着0:05)。

 

1992年5月22日、EC166/167がシュタッフス号の名として最後に運行された。翌5月23日からはEC16/17 マックス・ラインハルト号となり、編成担当もDBに変更、北側の終着駅がミュンスターに延長された(EC16 18:14着、EC17 10:44発)。ミュンヘン以北は103型または120型電気機関車に牽引され、アウグスブルク、ウルム、シュトゥットガルト、マンハイム、マインツ、コブレンツ、ボン、ケルン、デュッセルドルフ、エッセン、ヘルセンキルヘン、レックリングハウゼンに途中停車。運転区間がミュンスターへ大幅延伸運転されたことで、1日の走行距離は465kmから1237kmに増加した。EC16は、ウィーン→ミュンヘン間の時刻表上の位置はそのままだが、EC17のミュンヘン中央駅出発時刻が約1時間繰り上った18:25に出発し、ウィーン着23:05となった。

 

1994年5月29日、EC16/17の運行区間が短縮され、かつてのウィーン〜ミュンヘン間に戻り、使用編成もÖBB-4010系電車に変更された。また、EC17は、前年度に出発時間が繰り上げられたダイヤを維持。

 

1996年6月2日からは、マックス・ラインハルト号は機関車牽引(ÖBB-1044型電気機関車)のÖBB編成に変更(Amz、WRmz、Bmz、Bmpz、Bmpz)、所要時間が若干延びた(EC16 ウィーン発5:50→ミュンヘン着10:35/EC17 ミュンヘン発18:25→ウィーン着23:15)。2002年12月14日マックス・ラインハルト号の名を持つEC 17がミュンヘン中央駅を最後に出発し、翌日12月15日からはEC116/117として無名のユーロシティとして運行、このタイミングでEC 117の発車時刻は再び繰り上げられ、ミュンヘン中央駅発17:25となった(ウィーン西駅着22:05)。2006年12月10日からは、EC116/117は最終的にICE116/117(DB・ÖBB共同所有のICE-T型電車を使用)に置き換えられ、2010年12月12日からはレイルジェット編成(RJ260/261)に変更され、現在も引き続きオーストリアのレイルジェットはウィーンとミュンヘンを約4時間で結び、115km/hの表定速度を実現しています。

 

 

  編成例(書籍内イラストから)

 

1989年夏ダイヤ 

1・2等の合造コンパートメント車、2等コンパートメント車、1等・2等オープン座席車、食堂車、増解結なし。オーストリアの電車列車(4010系)。

 

 

1991年夏ダイヤ 

2等コンパートメント車、1等・2等オープン座席車、食堂車、増解結なし。ユーゴスラビア(JŽ)とオーストリア両国鉄の混合編成。

 

今回は以上です。
 

参考資料:

・Die EuroCity-Zuege - Teil 1 - 1987-1993: Europaeische Zuglegenden /Jean-Pierre Malaspina, Manfred Meyer, Martin Brandt

・Thomascook European Timetable/Thomascook

参考ページ:

Datenbank Fernverkehr (Database long-distance trains)

Harrys Bahnen

ページ内写真:Flickr(引用元は写真とセットで明記)