1987年からTEEの後継としてはじまったユーロシティの歴史を振り返っていく企画を立ち上げました。ドイツから取り寄せた、Die EuroCity-Zuege - Teil 1 - 1987-1993: Europaeische Zuglegendenの翻訳を通じて、ユーロシティーの一端を知る、文字通り「備忘録」としたいと思います。

 

まとめの対象ですが、前述の書籍内では1987〜1993年の間に運転開始されたユーロシティを扱っており、その中の列車名ごとに歴史や仕様がまとめられているページとします。書籍の紹介順に倣って、22回目は、パガニーニ号を取り上げます。

 
EC Paganini

(この写真が参考文献に掲載されているわけではありません)

 

(以下原文訳、一部表現、短縮名称等をブログ筆者で補足)

ニコロ(またはニコロ)・パガニーニ(1782年 - 1840年)は、イタリアのヴァイオリニスト、ギタリスト、作曲家。

 

1991年夏ダイヤまで、ミュンヘンとミラノを結ぶユーロシティ列車は、標高1,372mのブレンナー峠を経由する2列車だけであり、アルプス横断路線では唯一峠越えトンネルが存在しない。1991年6月2日、この路線にEC10-11/12-13 レオナルド・ダ・ヴィンチ号、EC 80/81 ミケランジェロ号に加えて、3組目のパガニーニ号が新設された。この列車は、ミュンヘン発着に短縮されて、編成も従来のレオナルド・ダ・ヴィンチ号のドイツ鉄道(以下、DB)編成を譲り受け、イタリア国鉄(以下、FS)所有となった。また、列車番号はブラウエル・エンツィアン号を引き継ぎEC12/13となり、代わりにブラウエル・エンツィアン号にはEC 114/115の列車番号が付与された。

 

パガニーニ号はボローニャ中央駅〜ドルトムント中央駅間1,281kmを走破する。北行EC12はボローニャ発8:00で、途中ヴェローナ・ポルタ・ヌヴォーナ駅、ロヴェレート、トレント、ボルツァーノ、ブレッサノーネ、フランツェンスフェステを経て、国境駅であるブレンナー(13:49着/14:04発、ここでミュンヘン中央駅車両基地所属のDB−111型電気機関車に交換)、インスブルック、ヴェルグル、クーフシュタイン、ローゼンハイムを経てミュンヘン中央駅(16:30着/16:49発)でDB-103型電気機関車に機関車交換、方向転換し、ミュンヘン・パージング駅、アウグスブルク、ウルム、シュトゥットガルト(19:03着/19:11発)で再度DB-120型電気機関車に交換と方向転換を行い、ハイデルベルク、マンハイム、マインツ、コブレンツ、ボン、ケルン、デュッセルドルフ、デュイスブルク、エッセン、ボーフム経由で終着ドルトムント駅着23:48。走行時間15時間48分。対向のEC13は、ドルトムント発6:11でボローニャ着21:30。ミュンヘン中央駅〜ブレンナー間は、オーストリア国鉄(以下、ÖBB)の1044型電気機関車が牽引し、所要時間は15時間19分とEC12より大幅短縮し、表定速度は85km/h(EC12は81km/h)である。

 

翌年(=1992年)のダイヤでは、EC12の所要時間が大幅に短縮され(ボローニャ発8:18→ドルトムント着23:48)、対向のEC13は従来通り。最初の大きな変更は、1993年5月23日の夏ダイヤで行われ、具体的にはEC12/13の南側の始発・終着駅がヴェネツィア・サンタ・ルチア駅に変更となった。これで、EC12はヴェネツィア発8:45でドルトムント着23:48、EC13はドルトムント発6:11でヴェネツィア着20:42で運行された。

 

1995年夏ダイヤでは早くも次の変化が起こる。列車番号がEC88/89に変更され、運行区間がミュンヘン中央駅〜ヴェローナ・ポルタ・ヌオーヴァ駅間に短縮、その上編成担当がFSに切り替わった。牽引機はミュンヘン〜国境駅ブレンナー駅間はÖBB-1044型電気機関車が従来通り使用され、イタリア区間はFSのE-652型電気機関車が牽引担当した。EC88は従来通りヴェローナ発9:00、ミュンヘン着14:30、終着駅でちょうど1時間の折り返し時間を経て、南行EC89としてミュンヘン発15:30でヴェローナ着21:04。2000年5月28日には、ユーロシティ レオナルド・ダ・ヴィンチ号パガニーニ号は再び編成、列車番号、運行ルートが交換された。EC12/13はパガニーニ号としてヴェローナ(8:58発/21:03着)とドルトムント(8:04発/21:54着)を92km/hの表定速度で結んだ。なお、南行のEC13は、以前より2時間遅い時間帯で運行された。途中停車駅にデュッセルドルフ空港とミュンヘン東駅が追加され、ミュンヘン以北は、新型DB-101型電気機関車が牽引担当することになった。しかし、2002年12月ダイヤ改正では、早くもパガニーニ号の運転区間が、ミュンヘン中央駅〜ヴェローナ・ポルタ・ヌオーヴァ間に運転区間が短縮され、運転時間帯も大幅に変更された(EC 82: ヴェローナ発11:00→ミュンヘン着16:28/EC 89:ミュンヘン発15:30→ヴェローナ着21:01)。2007年12月9日にはブレンナー峠を越える他のユーロシティ列車と同様、インターシティに格下げされた。

 

2009年12月13日にÖBB、DB、LeNord(註:トレノルド、トレニタリア主導の運行会社)の協力により、ミュンヘン、チロル、北イタリア各都市間の長距離サービスが引き継がれたことを受け、ÖBBまたはDB所有の編成の列車には「ユーロシティー・ラベル」が復活したものの「DB-ÖBB ユーロシティ」というブランドに統一され、個別の列車愛称は存在しない。2019年ダイヤ改正(=2018年冬〜)では、ユーロシティ(EC82/83)は引き続きヴェローナとミュンヘンを結んでいる。

 

 

  編成例(書籍内イラストから)

1991年夏ダイヤ 

コンパートメント車(1等・2等)、オープン座席車(1等・2等)、

食堂車連結、旅客車の途中増解結はなし(ドイツ国内で郵便車の併結あり)。ドイツの車両のみ。

 

今回は以上です。

 

参考資料:

・Die EuroCity-Zuege - Teil 1 - 1987-1993: Europaeische Zuglegenden /Jean-Pierre Malaspina, Manfred Meyer, Martin Brandt

・Thomascook European Timetable/Thomascook

参考ページ:

Datenbank Fernverkehr (Database long-distance trains)

Harrys Bahnen

ページ内写真:Flickr(引用元は写真とセットで明記)