1987年からTEEの後継としてはじまったユーロシティの歴史を振り返っていく企画を立ち上げました。

 

ユーロシティは2022年現在でも現役の列車種別(コンセプト)であり、集大成の資料が存在しているわけではありません。そのためドイツから取り寄せた、Die EuroCity-Zuege - Teil 1 - 1987-1993: Europaeische Zuglegendenの翻訳を通じて、ユーロシティーの一端を知る、文字通り「備忘録」としたいと思います。

(いつかはユーロシティの辞書的なものを作りたい野望はありますが。。。)

まとめの対象ですが、前述の書籍内では1987〜1993年の間に運転開始されたユーロシティを扱っており、その中の列車名ごとに歴史や仕様がまとめられているページとします。書籍の紹介順に倣って、10回目は、レッチュベルク号を取り上げます。

 

EC Lötschberg

 

(以下原文訳、一部短縮名称等をブログ筆者で補足)

レッチュベルク:スイスのベルン州カンデル渓谷とヴァレー州レッチ渓谷の間のアルプス越えの渓谷

 

スイスのベルン州とヴァレー州を結ぶ全長14.6kmのレッチュベルクトンネルを通過するレッチュベルク号は、1982年5月23日、スイス国鉄(以下、SBB)の「新旅客列車コンセプト」によるダイヤ改正で日の目を見ることになった。前身となるラインクリエール号時代のスイス側始終着駅をバーゼルSBB駅からブリークに変更、新しい列車番号IC106/107に変更してレッチュベルク号が新設、国際都市間列車のネットワークの充実に寄与した。

なお、ラインクリエール号1979年5月27日から運行している西ドイツ国鉄(以下、DB)のインターシティであり、IC506/507としてバーゼルSBB駅〜ハンブルク・アルトナ駅間で運行されていた。

 さて、レッチュベルク号北行IC106はブリーク発10:54で、走行距離1,249kmを経てハンブルク・アルトナ駅に23:35着。一方、対向の南行IC107は、ハンブルク・アルトナ駅発5:26で、ブリーク着18:00という、始発時刻が大変早い運行だった。所要時間はそれぞれ12時間41分、12時間34分だったが、途中停車数の多さながら、表定速度はほぼ100km/hというのは非常に立派なパフォーマンスだ。またこの列車にはインターラーケン東駅行の2等客車を併結し、ベルン中央駅(17:20着/11:34発)で解結・併結が行われた。1985年6月2日からレッチュベルク号の運行区間が変更され、発着駅がハンブルク・アルトナ駅間からハノーファー中央駅となり、1日の走行距離は1,106kmと若干短縮された。他の多くの国際インターシティと同様に、レッチュベルク号1987年5月31日にユーロシティネットワークの「創立列車」の一つとなるが、列車番号と運行区間は維持された。なお、インターラーケン東駅発着の2等車編成は、インターラーケン東駅〜ベルン中央駅間をスイスの国内急行1723/1730列車として運行され、ベルンでレッチュベルク号と解併結する。 

 

 北行EC6はブリーク発11:01、レッチュべルクトンネルを越える前にゴッペンシュタインを経由し、カンデルステグ、フルティゲン、シュピーツ、トゥーン、ベルン、オルテン、バーゼルSBB駅(方向転換)、バーゼル・バディッシャー駅、フライブルク、バーデンバーデン、カルルスルーエ、マンハイム、マインツ、コブレンツ、ボン、ケルン、デュッセルドルフ、デュイスブルク、エッセン、ドルトムント、ハム、最後にビーレフェルトと続き、21:50にハノーファー中央駅に到着。スイス国内で8駅、ドイツ国内で15駅の途中停車駅があるにもかかわらず、発着駅間の距離1,106kmを10時間49分で、表定速度102km/hで走破した。逆方向の場合、EC7の所要時間は3分長がかった(ハノーファー発7:07、ブリーク着17:59)。ベルン - インターラーケン東駅間の車両は、トゥーン、シュピーツ、インターラーケン西駅に定期列車の先行、または後発で運行した:72kmのルートを53分(時刻表による、表定速度82km/h)で走った。

 

1988年5月29日より、EC7は土日を除きブラウンシュヴァイクを6:24に発車(走行距離61km延長)、ハノーバー発7:07が維持された。それは次年度以降も変更はなかったが、1991年6月1日、従来のレッチュベルク号に終焉を迎える。ドイツ高速新線(マンハイム - シュトゥットガルト、ハノーバー - ヴュルツブルク)の全面開業と、DBとドイツ帝国鉄道(DDR)の統合に伴うダイヤ改正で、EC103 レーティア号(クール発着)がハノーファー - バーゼル間の南北方向のレッチュベルク号のダイヤを引き継いだ。1995年5月24日(各種資料では1995年5月28日と明記)から、ブリークとベルリン・ツォー駅間を結ぶIC108/109が格上げされEC108/109となり、以前のユーロシティ トゥーナーゼー号(インターラーケン東駅〜ベルリン・ツォー駅)に代わってレッチュベルク号の名前が復活。その時刻表位置は、EC108は従来より2時間繰り上げられ、ブリーク発9:01に変更。逆にEC109は(ダイヤが)3時間繰り下げられた(ベルリン・ツォー駅発7:07、ハノーファー中央駅発10:00、ブリーク着20:59)。途中停車駅はブリーク〜ケルン中央駅は従来通りで、ケルン以降、ゾーリンゲン・オーリヒス駅、ブッパータール、ハーゲン、ドルトムント、ハム、ビーレフェルト、ハノーファー、ブラウンシュヴァイク、ヘルムシュテット、マグデブルク、ベルリン・ヴァンゼー駅、終着ベルリン・ツォー駅着22:52。走行距離1,110km、所要時間13時間51分で走破。

 

2年後(=1997年夏)、EC108の時刻はほとんど変更なくドルトムント(18:20着)までの運行となり、EC109の始発駅はベルリンからライプツィヒに変更された(5:54発、20:03着)。1年後(1998年5月24日)には「ライプツィヒのエピソード」は短命に終わり、レッチュベルク号の発着駅が再びハンブルク・アルトナ駅に戻った。8:57にブリークを発車したEC108は、1,243kmを走り21:21にハンブルク・アルトナ駅で旅を終えた(所要時間12時間24分、表定速度100km/h、土曜日はドルトムント中央駅が終着となり、レッチュベルク号の編成が翌朝にEC103 レーティア号の運用に回る)。EC109は7:38にハンブルク・アルトナ駅を発車し、ブリーク着20:03。EC108/109はケルン以北のゾーリンゲン・オーリヒス駅、ブッパータール、ハーゲン、ドルトムント、ミュンスター、オスナブリュック、ブレーメン、ハンブルク中央駅、ハンブルク・ダムトール駅に停車。2002年12月15日まで、目立った変更はなかったが、この大きなダイヤ改正(ケルン〜ライン/マイン間の高速新線開通)では、再びドルトムント中央駅までの路線制限と列車番号の変更(→EC8/9)が行われた。また経路も完全に入れ替わる。ブリーク(12:59発)を発車したEC8は、ドルトムント着22:21(所要時間9時間22分、走行距離892km、表定速度95km/hに相当)となった。対向列車EC 9はドルトムント発5:38、ブリーク着15:00。ケルン-ドルトムント間の経由駅がデュッセルドルフ、デュイスブルク、エッセン、ボーフムに変更された。1年後の2003年9月14日から、EC8は再びハンブルク・アルトナ駅深夜1:30着)に延長され、EC9のドルトムント始発は変更なし。翌2004年12月12日、EC 8/9のルートが再び変更されるが、今度はスイス国内で、ブリークから1991年と同様にクールへ運行された。つまり、この列車はついにその名を失うことになる(なにしろ、もうレッチュベルクを経由しないのだから)。EC8はクール発13:16で運行を開始し、ハンブルク・アルトナ駅には深夜1:29に到着(EC9は、ドルトムント発5:36、クール着14:43)、これによるドイツ国内の運転時間帯は変更なし。EC8/9は2006年12月10日に廃止されたが、2012年12月9日からチューリッヒ中央駅とハンブルク・アルトナ駅間で、時刻が大幅変更されつつも復活を遂げた(EC8 クール発9:16、ハンブルク・アルトナ駅着21:27/EC9 ハンブルク・アルトナ駅発6:30、クール着18:43)。1年後の2013年12月15日からは、チューリッヒ中央駅が発着駅となったが、時刻表での運転時間帯(EC8 チューリッヒ発11:00、EC9 チューリッヒ着17:00)はそのまま維持。これは、2019年においても、分単位の変更を除けば、概ね変更なし。

 

 

  編成例(書籍内イラストから)

 

1987年夏ダイヤ 

食堂車連結、1等・2等コンパートメント車、1等・2等オープン座席車をそれぞれ連結、途中でのバーゼル、ベルン(インターラーケン編成)で増解結。すべてドイツの車両。

 

 

今回は以上です。

 

今回参考にしているドイツ語の本です。写真に加え、編成イラスト入りで大満足!

 

 

参考資料:

・Die EuroCity-Zuege - Teil 1 - 1987-1993: Europaeische Zuglegenden /Jean-Pierre Malaspina, Manfred Meyer, Martin Brandt

・Thomascook European Timetable/Thomascook

参考ページ:

welt-der-modelleisenbahn.com

Datenbank Fernverkehr (Database long-distance trains)

ページ内写真:Flickr(引用元は写真とセットで明記)