「日本のイベントと臨時列車(80、90年代)」をひたすら取り上げてみようという長期企画です。手元の時刻表はもとより、当時の鉄道ダイヤ情報やインターネット上の情報を参照しつつまとめてみました。
第15回目は、大分県玖珠町で開催されている、日本童話祭に関する臨時列車の運転履歴を追っていきます。
日本童話祭とは、玖珠町出身であり「日本のアンデルセン」と呼ばれ、日本の児童文学史に大きな足跡を残した久留島武彦氏の偉業を記念し、昭和25年5月5日にはじまった子どものためのお祭りとのこと。
彼の作品として、下記のような本が出ていました(Amazonアフィリエイトリンクです)。私も読んだことがあるのかも。懐かしいタッチの画でほっこりしますね。
久留島武彦評伝 日本のアンデルセンと呼ばれた男 [ 金成妍 ]
さて、このイベントは長い歴史を有しており、国鉄時代から臨時列車が設定されていた模様です。玖珠町に大分自動車道が開通したのは1995年であり、それまでの時代、このイベントへのアクセスのためには鉄道(久大本線)と道路(国道210号線、同387号線)しかなかったわけですから、普段は長閑な町に、多数の観光客を輸送するには臨時列車は欠かせなかったと推察します。
お祭り、催事の概要
日本童話祭
会 期 |
毎年5月5日(こどもの日) |
会 場 | 大分県玖珠町 おとぎ劇場、三島公園、玖珠川河川敷 など |
お祭り、催事の概要 |
玖珠町の公式ページでの説明によると、
が行われる(た)ようです。 ※コロナウィルス感染症の影響での近年の開催実績などは未調査 |
公式サイトを参考にまとめてみました。もっと詳細を知りたい方はこちらをご覧ください!
臨時列車の運行概要
日本童話祭関連の臨時列車(1980〜99年)
昭和25年から開催されているイベントだけあって、かなり大昔まで歴史を遡れるようです。1970年代から、おとぎ号という列車名で大分(別府?)〜豊後森間で運転されており、今回の年表の1980年ではすでに童話号として運転されています。1984年からは博多駅発着の快速列車が設定され、10年近く運転されています。
運転区間は、童話号、メルヘンフェスティバル号ともにほぼ固定(変わらず)ですが、1985年のメルヘンフェスティバル号のみ、佐賀県の唐津発着が設定されていたことは特記しておきたい点となります。なお、1994年のメルヘン〜号、1995年の童話号を最後に童話祭関連の臨時列車は時刻表紙面から消えているのは、大分自動車道開業と無関係ではないと推察します。
1995年 3月 : 日田IC - 玖珠IC開通 ←メルヘンフェスティバル号廃止の契機
1996年 3月 : 大分自動車道の全線開通 ←童話号廃止の契機
【凡例、備考】
・運転日については、特記がない限り5月5日のみ
1980 | 普通 童話号
9630レ 別府発6:53 → 豊後森着9:23 9639レ 豊後森発16:07 → 別府着19:02 ※西別府、東大分は通過
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1981 |
普通 童話号 9630レ 別府発6:51 → 豊後森着9:20 9631レ 豊後森発16:15 → 別府着19:14 ※西別府、東大分は通過 |
1982 |
普通 童話号 9630レ 別府発6:51 → 豊後森着9:20 9631レ 豊後森発16:20 → 別府着19:14 ※西別府、東大分は通過
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1983 |
快速 童話号 9630レ 別府発6:50 → 豊後森着9:20 9631レ 豊後森発16:40 → 別府着19:12 ※西別府、東大分は通過
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1984 |
快速 メルヘンフェスティバル号 9633D 博多発8:39 → 豊後森着11:02 9634D 豊後森発15:11 → 博多着17:38 途中停車駅(博多発着):二日市、鳥栖、久留米、筑後吉井、夜明(博多行のみ)、日田
普通 童話号 9630レ 別府発6:50 → 豊後森着9:18 9631レ 豊後森発16:40 → 別府着19:12 ※西別府、東大分は通過
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1985 |
快速 メルヘンフェスティバル号 ※博多・西唐津→豊後森、豊後森→唐津・博多 9633D 博多発8:23 → 豊後森着11:00 ⎣724D~9330D 西唐津発6:56で鳥栖まで運行、その後博多発と併結 9634D 豊後森発15:18 → 博多着17:37 ⎣9737D 唐津着19:04、博多行と鳥栖で分割され唐津まで運行 途中停車駅(博多発着):南福岡、二日市、鳥栖、久留米、南久留米、筑後吉井、日田、天ヶ瀬、(西唐津→鳥栖)西唐津〜佐賀間は各駅停車と、神埼、(鳥栖→唐津)神埼、佐賀、久保田、小城、多久、厳木、岩屋、相知、山本
普通 童話号 9630レ 別府発6:49 → 豊後森着9:15 9637レ 豊後森発16:34 → 別府着19:01 ※別府発のみ鬼瀬、天神山、南由布、野矢、引治は通過
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1986 |
快速 メルヘンフェスティバル号 9633D 博多発8:10 → 豊後森着11:00 9634D 豊後森発15:18 → 博多着17:48 途中停車駅(博多起点):南福岡、二日市、鳥栖、久留米、南久留米、筑後吉井、日田、天ヶ瀬
普通 童話号 9630レ 別府発6:49 → 豊後森着9:17 9637レ 豊後森発16:34 → 別府着19:00 ※別府発のみ東別府、西大分、鬼瀬、南由布、野矢、引治は通過
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1987 |
快速 メルヘンフェスティバル号 9657D 博多発8:17 → 豊後森着11:02 9660D 豊後森発16:38 → 博多着19:32 途中停車駅(博多起点):南福岡、二日市、鳥栖、久留米、田主丸、筑後吉井、夜明、日田、天ヶ瀬、北山田
普通 童話号 9630レ 別府発6:52 → 豊後森着9:19 9637レ 豊後森発15:37 → 別府着17:56 ※東別府、西大分、鬼瀬、南由布(別府発のみ)、野矢、引治は通過
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1988 |
快速 メルヘンフェスティバル号 9645D 博多発8:04 → 豊後森着10:20 9660D 豊後森発16:30 → 博多着19:09 途中停車駅(博多起点):二日市、基山、鳥栖、久留米、田主丸、筑後吉井、夜明、日田、天ヶ瀬
普通 童話号 9830レ 別府発6:48 → 豊後森着9:12 9833レ 豊後森発16:44 → 別府着19:08 ※東別府、西大分は通過
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1989 |
快速 メルヘンフェスティバル号 9845D 博多発6:32 → 豊後森着9:09 9860D 豊後森発16:38 → 博多着19:12 途中停車駅(博多起点):南福岡、二日市、基山、鳥栖、久留米、善導寺、田主丸、筑後吉井、夜明、日田、天ヶ瀬、北山田
普通 童話号 9830レ 別府発6:36 → 豊後森着9:16 9833レ 豊後森発17:04 → 別府着19:38 ※途中すべての駅で停車
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1990 |
快速 メルヘンフェスティバル号 9845D 博多発6:50 → 豊後森着9:11 9860D 豊後森発16:38 → 博多着19:12 途中停車駅(博多起点):南福岡、二日市、基山、鳥栖、久留米、田主丸、筑後吉井、夜明、日田、天ヶ瀬、北山田
普通 童話号 9830レ 別府発6:36 → 豊後森着9:19 9833レ 豊後森発17:04 → 別府着19:38 ※途中すべての駅で停車
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1991 |
快速 メルヘンフェスティバル号 9845D 博多発6:50 → 豊後森着9:10 9860D 豊後森発16:38 → 博多着19:12 途中停車駅(博多起点):南福岡、二日市、基山、鳥栖、久留米、善導寺、筑後吉井、夜明、日田、天ヶ瀬、北山田
普通 童話号 9830レ 別府発6:36 → 豊後森着9:19 9833レ 豊後森発15:28 → 別府着17:54 ※途中すべての駅で停車
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1992 |
快速 メルヘンフェスティバル号 9845D 博多発6:30 → 豊後森着9:10 9860D 豊後森発16:38 → 博多着19:12 途中停車駅(博多起点):南福岡、二日市、基山、鳥栖、久留米、善導寺、筑後吉井、うきは、夜明、日田、天ヶ瀬、北山田
普通 童話号 9830レ 別府発6:36 → 豊後森着9:19 9833レ 豊後森発15:28 → 別府着17:54 ※途中すべての駅で停車
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1993 |
快速 メルヘンフェスティバル号 9845D 博多発6:33 → 豊後森着9:05 9860D 豊後森発15:33 → 博多着17:51 途中停車駅(博多起点):南福岡、二日市、基山、鳥栖、久留米、田主丸、筑後吉井、うきは、夜明、日田、天ヶ瀬、北山田
普通 童話号 9830レ 別府発6:36 → 豊後森着9:22 9833レ 豊後森発15:24 → 別府着17:42 ※途中すべての駅で停車
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1994 |
快速 メルヘンフェスティバル号 9845D 博多発6:28 → 豊後森着9:05 9860D 豊後森発15:33 → 博多着17:51 途中停車駅(博多起点):南福岡、二日市、基山、鳥栖、久留米、田主丸、筑後吉井、うきは、夜明、日田、天ヶ瀬、北山田
普通 童話号 9830レ 別府発6:36 → 豊後森着9:22 9833レ 豊後森発15:24 → 別府着17:42 ※途中すべての駅で停車
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1995 |
普通 童話号 9830レ 別府発6:34 → 豊後森着9:19 9833レ 豊後森発15:23 → 別府着17:40 ※途中すべての駅で停車
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1996 |
当該月時刻表にて運行を確認できず(4月号) |
1997 |
当該月時刻表にて運行を確認できず(4月号) |
1998 |
当該月時刻表にて運行を確認できず(5月号) |
1999 |
当該月時刻表にて運行を確認できず(4月号) |
使用された車両について(推察含む)
前述の通り、1970年代にはおとぎ号として運行されていた童話号ですが、おとぎ号紹介の文脈で、1981年童話号時代のモノクロ写真が拝見できましたので、リンクをシェアさせていただきました。
写真から判別できるのは、DE10形ディーゼル機関車での牽引で、12系客車6連で運転されているとのこと。あくまでもこれは1981年の話ながら、このパターンは少なくとも国鉄時代は続いたのではないかと推察するのです。
メルヘンフェスティバル号については、ネット上でも一切使用車両に関する具体的な情報を確認できませんでした。おそらく急行型気動車(キハ58系、65系)あたりが運用に入っていると推察します。編成両数は4〜6連あたりだったのでしょうか。
当時の時刻表紙面での臨時列車
1984年当時の久大本線(大分→久留米)の紙面。当時の運転総数はが少なく、2023年現在の紙面の半分でした。この中には童話号と、設定初年度のメルヘンフェスティバル号の両方を確認できます。メルヘン〜号の停車駅数は、急行並であるため、俊足ぶりを期待したいところですが、途中の離合などの影響か、豊後森〜久留米間で急行よりも20分前後所要時間が長いダイヤで運行されました。
交通公社の時刻表 1984年4月号より
1985年の鹿児島本線下り紙面。左側に快速メルヘンフェスティバル号が確認できます。この年に限り、西唐津発(復路は唐津着)のメルヘンフェスティバル号の設定があり、かなりレアな紙面といえます。西唐津発列車は、佐賀までは唐津線定期列車のスジを利用し、佐賀〜鳥栖間を臨時ダイヤで運転され、鳥栖では先に到着していた「唐津編成」の後方に、「博多編成」が併結されて出発したと推察します。末期とはいえ、国鉄を色濃く感じられる列車名、運転区間にため息がでます。
交通公社の時刻表 1985年4月号より
本日は以上です。
まとめページはこちらから
参考資料 1980年〜1999年の交通公社時刻表、JTB時刻表、JR時刻表
参考ページ:日本童話祭公式サイト、大分自動車道(Wikipedia)、はてなブログ「転轍機」様