以前私のブログ内でTrans Europ Express(TEE)を、当時のトーマス・クック鉄道時刻表の紙面から振り返りました。その後続として、1987年からはじまったユーロシティの歴史を振り返る企画を立ち上げました。

 

ユーロシティは2022年現在でも現役の列車種別(コンセプト)であり、集大成の資料が存在しているわけではありません。そのためドイツから取り寄せた、Die EuroCity-Zuege - Teil 1 - 1987-1993: Europaeische Zuglegendenの翻訳を通じて、ユーロシティの一端を知る、文字通り「備忘録」としたいと思います。

(いつかはユーロシティの辞書的なものを作りたい野望はありますが。。。)

 

まとめの対象ですが、前述の書籍内では1987〜1993年の間に運転開始されたユーロシティを扱っており、その中の列車名ごとに歴史や仕様がまとめられているページとします。書籍の紹介順に倣って2回目は、ベルナー・オーバーラント号を取り上げます。

 

EC Berner Oberland

(写真は参考文献の掲載とは関係ありません)

 

 

(以下原文訳、一部短縮名称等をブログ筆者で補足)

ベルン州のアルプス山脈に位置する地域(トゥーン湖、ブリエンツ湖周辺と州南部)の呼称。

 

ユーロシティおいて、1991年夏ダイヤは決定的な出来事であった。国際列車としての長い歴史を有する列車に運転区間等の大幅な変更が生じる一方で、多くの新設ユーロシティが時刻表に組み込まれたのだ。その中で、スイス・ベルン州のインターラーケンとオランダの首都アムステルダムを結ぶEC104/105 ベルナーオーバーランド号は、ドイツ国内のユーロシティ/インターシティ・ネットワークではケルン〜アムステルダム間の等間隔ダイヤに組み込まれる形で、1991年6月2日から運転開始した。

 

ベルナーオーバーラント号編成について、主にSBBが提供する新型のユーロシティ向け客車(1等車・2等車)で構成された。

ただし、スイス連邦鉄道(以下、SBB)は最高速度200km/hで走行できる国際線用の食堂車を保有していないため、SSG(スイスの食堂運営会社)が管理を引き継ぐ形で、ドイツ連邦鉄道(以下、DB)からWRmh132(1999/2000年ダイヤおよび2004年ダイヤではWRmz 133.1、 2003年ダイヤではARkimbz 262)の該当車両をレンタルしていた。なお、2000年代半ばに入ると自社の食堂車を所有するようになる。そのほか、DBネットワーク内ではBm235(2等コンパートメント車)をバーゼルSBB駅で増結・解結を行い、週末や休日ではさらに増結されていた。例外となる1995年夏ダイヤの1年に限って2等車がすべてDB客車(BvmzとBpmz)の「製品色」で構成されていた。

最後に、1992年夏ダイヤから(当初は1年間)SBB1等展望車が加わり、ベルナーオーバーランド号はまさに「アイキャッチャー」となり、旅行者(その快適さから)、鉄道ファン(その多彩な車両から)に等しく人気を博した。

 

1991年6月2日から、EC105は、通常6両の基本編成で始発駅アムステルダム中央駅を8:00に出発し、ユトレヒト中央駅、アーネム(またはアルンヘム)を経てオランダ・ドイツの国境駅エメリッヒ着9:23。そこで、オランダ国鉄(以下、NS)1600型電気機関車から、DB-103型電気機関車に機関車交換、増結の結果、所定の11両編成(需要に応じて増結)となり、エメリッヒ発9:34でオーバーハウゼン、デュイスブルク、デュッセルドルフ、ケルン、ボン、コブレンツ、マインツ、マンハイム、カールスルーエ、オッフェンブルク、フライブルク、バーゼル・バディッシャー駅に途中停車。その後、バーゼルSBB駅(15:45着/16:01発)でDB-103型電気機関車からSBB-Re 4/4 II型電気機関車に機関車交換、方向転換後に出発。オルテン、ベルン(17:12着/17:21発、BLS-Re 4/4型電気機関車に交換)、トゥーン、シュピーツ、インターラーケン西駅を経て、インターラーケン東駅着18:21。

 

北行の対向列車EC104はインターラーケン東駅発11:39で、アムステルダム着21:51。主な途中主要駅はベルン(12:32着/12:48発)、バーゼルSBB駅(13:59着/14:15発)、エメリッヒ(20:24着/20:34発)。

 

1993年5月23日より、EC105のみ始発駅がスキポール空港駅に変更(7:38発、アムステルダム中央駅は7:56着、8:00発)→インターラーケン着18:21に変更。翌年(=1994年)、EC 104も運転時刻を1時間繰り上げた上で、スキポール空港まで延伸運転された(21:16着)が、1年間限定だった(=1995年夏ダイヤ施行まで)。

 

1997年6月1日より、EC105の出発時刻が2時間繰り下げ(アムステルダム中央駅発10:00に変更)、インターラーケン東駅着20:15となった。なお、従来の8:00発のダイヤは、EC3 レンブラント号に引き継がれた。

対向列車EC104は逆に始発駅出発時刻が繰り上げされ(インターラーケン東駅発10:45→アムステルダム中央駅着20:52)。所要時間はわずか10時間07分(表定速度94km/h)というこの列車の真価を発揮した。しかしそのパフォーマンスは翌年には維持できていない(2002年夏ダイヤ:EC104:インターラーケン発10:40→アムステルダム着20:54/EC105:アムステルダム発9:55→インターラーケン着20:20)。

2002年12月15日より、従来のレンブラント号が廃止にともない、そのEC2/3という列車番号がベルナーオーバーランド号のものになった。EC2はインターラーケン東駅発9:39→アムステルダム着19:54、EC3はアムステルダム発7:55→インターラーケン着18:20。それからわずか1年後、オランダ方面のユーロシティは、DBとNSが共同所有するICE3MによってICEインターナショナルの名の下、すべてのサービスを引き継ぎ、この区間でのキャリアの決定的な終わりを迎えた。

 

それでもベルナー・オーバーラント号は、2003年12月からハンブルク・アルトナ駅を新しい発着駅とし、EC100/101として、かつてのマッターホルン号の列車番号を引き継ぎ、1年間存命するした。北行EC100はマッターホルン号のダイヤを継承し、デュイスブルク以北はエッセン、ボーフム、ドルトムント、ミュンスター、オスナブリュック、ブレーメンの主要駅に乗り入れ、ハンブルク・ハールブルク駅、同中央駅、同ダムトール駅経由で終着駅ハンブルク・アルトナ駅着21:26(月~金)。EC100は土曜日のみドルトムント中央駅が終着となり、日曜日にはEC102として、アルトナ駅ではなく、ハンブルク・ダムトール駅からノイミュンスター経由キール中央駅まで運行された(22:20着)。EC103は月曜日のみキール発5:34を出発し、インターラーケン着18:21。月〜土はEC101としてハンブルグ・アルトナ駅発6:31。

 

2004年12月12日からは、スイス側の始発・終着駅がインターラーケンに代わってクールに変更され、事実上ベルナーオーバーラント地方へ乗り入れなくなり、列車名も消滅するという、大幅な変更が生じた。SBB-Re460型電気機関車牽引のEC100は、クール発9:16で、ラントクアルト、バート・ラガッツ、ツェーゲルブリュッケ、プフェフィコーン、ヴェーデンスヴィル、タールヴィル、チューリッヒ中央駅(10:47着/11:02発、SBB-Re 4/4 II型電気機関車に交換)、バーゼルSBB駅(11:54着/12:16発、DB-101型電気機関車に交換)、そしてドイツ鉄道ネットワークを経由しハンブルグ・アルトナ駅に向かう。日曜日はEC102として終点キール中央駅着22:21、月曜日のEC103はキール発5:34→クール着18:43。翌年以降も、さらなる変化が見られる(たとえば、2005年12月からわずかな間、日曜日の始発駅がキールからフレンスブルクに変更されている)。2012年12月9日より、EC100/101および102/103は、インターシティーエクスプレス ICE 100/101に置き換えられ、運転区間もバーゼルSBB駅〜ドルトムント中央駅間に短縮された。

 

 

  編成例(書籍内イラストから)

 

1992年夏ダイヤ

食堂車、展望車連結、1、2等車ともにオープン座席車、基本編成6両、付属編成3両(エメリッヒで増解結)。スイスの車両を中心に、食堂車のみドイツ車両。

 

今回は以上です。

 

 

 

参考資料:

・Die EuroCity-Zuege - Teil 1 - 1987-1993: Europaeische Zuglegenden /Jean-Pierre Malaspina, Manfred Meyer, Martin Brandt

・Thomascook European Timetable/Thomascook

参考ページ:

・ICE3M について、鉄道世界旅行ホームページ より

Datenbank Fernverkehr (Database long-distance trains)

ページ内写真:Flickr(引用元は写真とセットで明記)