Trans Europ Express(TEE)を、当時のトーマス・クック鉄道時刻表の紙面から振り返る企画です。

 

47回目は、フランス国内のTEE、ヴァトー(Watteau)号を紹介します。

 

前回まで紹介したTEEフェデルブ号、ガヤン号とは、パリ〜トゥールコワン間で同じ編成を共通運用する間柄でしたが、この列車はその後「第2期」という、パリ〜ブリュッセル間での2等車連結のTEE時代がありました。

 

列車名の由来は?

18世紀にフランスで活躍した画家の名前が由来のようです。

 


運行されていた国 フランス、ベルギー(第2期のみ)

 

運転時期と区間

国内急行列車からTEEに格上げする形で登場

 

【第1期】

1978年10月1日 〜 1991年5月31日(38列車は1990年9月28日

パリ北駅 〜 トゥールコワン

 

【第2期】

1993年5月23日 〜 1995年5月26日(89列車は1995年1月20日

パリ北駅 〜 ブリュッセル南駅

 

使用された車両、編成

客車

【第1期】

ミストラル69型客車 ほか

ミストラル69型客車が使用されましたが、運転開始当初編成が不足していた影響で、SNCFの従来の客車も投入されていたようです。なお、同区間で運転されたTEEガヤン号フェデルブ号と共通運用でした。

 

編成の詳細ですが、

1978年10月 下記2本の編成をローテーションで運用

・ミストラル69型客車 7両編成(1 A4Dtux、4 A8u、1 A3rtu、1 Vru)

・フランス国鉄の客車(ステンレス) 9両編成(7 A9tj、1 A5rtj、1 Vr(赤「GrilExpress」)

フランス国鉄の客車(ステンレス)は、ミストラル69型の追加編成が賄われるまでの暫定運用として投入されていたようです。暫定運用だった理由の一つに、この車両にはエアコンが装備されていなかったことが挙げられます。

 

1979年5月夏ダイヤ 

ミストラル69型客車 11両編成(1 A4Dtux、5 A8u、3 A8tu、1 A3rtu、1 Vru)

 

フランス国鉄の客車(ステンレス)は下記のような車両です。写真は A9tj。 

 

 

【第2期】

ミストラル69型客車、PBA型客車 

この時代には、第1期と同様に、ミストラル69型客車に加え、TEE PBA型と呼ばれるステンレス製客車(フランス・ベルギー共同開発)も使用され、共通運用されていました。両型とも当時の1等車から2等車への改造を行っています。実際の運用と編成数ですが、TEE83(ブラバント号)/88(ヴァトー号)とEC82/87(ともにエトワール・デュ・ノール号)という2組の2日間サイクルで運用に入る12両編成と、1日サイクルの運用に入る11両編成が存在しました。

※PBA=Paris、Brussel、Amsteldamの3都市の頭文字をとった略称。

 

 

牽引機

【第1期−1】1978〜82年 リール以北非電化時代

BB16000型交流電気機関車 ほか

パリ〜リール間(電化) BB16000型交流電気機関車(1978〜83年)

リール〜トゥールコワン間(非電化) BB66400型ディーゼル機関車(1978〜80年)、BB67400型ディーゼル機関車(1980〜82年)。

 

写真はBB67400型です。BB66400型は、日本の国鉄DLであるDE10に似た形状の電気式ディーゼル機関車のようです。

 

 

【第1期ー2】1982年〜 リール以北の電化開業後
BB16000型交流電気機関車 ほか
ディーゼル機関車による牽引は一掃された時代です。パリ〜トゥールコワン間 BB16000型交流電気機関車(1978〜91年)、またはBB22200型交直流電気機関車(1982〜86年)。機種としてはBB16000型が一番の活躍期間の長さとなりました。写真はBB22200型交直流電気機関車。
【第2期】1993〜95年 パリ〜ブリュッセル間2等車連結TEE時代
他のTEE列車も同様にパリ〜ブリュッセル間は機関車無交換での「通し運転」を行っておりました。フランス、ベルギー各々の国鉄の機関車が相互乗り入れを行っています。
 
【フランス】
CC40100型交直流電気機関車

 

 

【ベルギー】

12型、15型、18型交直流電気機関車

上記3機種がそれぞれ運用に入っていました。写真は15型交直流電気機関車。

 

 

実際の時刻表紙面

1980年冬ダイヤ ★第1期★
39列車 パリ北駅発18:07 → トゥールコワン着20:37 ※月〜金のみ(夏のバカンスを除く)
38列車 トゥールコワン発17:43 → パリ北駅着20:07 ※月〜金のみ(夏のバカンスを除く)
TEE化して間もない頃のヴァトー号。往復とも夕方の便として活躍していました。停車駅について、アラスにはパリ北駅発列車のみが停車するダイヤになっていました。
ThomasCooks Continental Timetable September 1980 より
 
 
1990〜91年冬ダイヤ ★第1期★
39列車 パリ北駅発18:07 → トゥールコワン着20:37 ※月〜金のみ(一部日程のぞく)
この時代には38列車のみ運転取りやめとなり、片運転で運行が続きました。運転曜日は変わらず平日(月〜金)のみとなります。ビジネス色の強い列車である点は変わらずですね。
ThomasCook European Timetable November 1990
 
 
1994〜95年冬ダイヤ ★第2期★
89列車 パリ北駅発11:52 → ブリュッセル南駅着14:15 
88列車 ブリュッセル南駅発15:04 → パリ北駅着17:41
パリ〜ブリュッセル間は無停車。その点は往年のTEEと変わらずですが、大人の事情で2等車を連結した編成にもかかわらずTEEを名乗っていました。なお、89列車のみ、1991年1月に一足先に運転取りやめとなり、その約半年後に88列車も取りやめとなり、消滅します。
トーマスクックヨーロッパ鉄道時刻表 日本語解説版1995年初春
 
今回は以上です。

 

すでに取り上げたTEE列車の一覧ページです。こちらもご参考ください!

 

 

参考資料:

・Cook Continental Timetable、Thomascook International Timetable

・Das Grosse TEE-Buch 40 Jahre Trans-Europ-Express /Jörg Hajt/HEEL 1997年

・Die Geschhichte Des Trans Europe Express /Maurice Mertens、Jean-Pierre Malaspina 2009

参考サイト:TEE、リール(フランス)、SNCB Class BB 22200(ともにWikipedia)

ページ内写真:Flickr の各リンク

カバー画像:Deutsche Bahn AG, converted by , Public domain, via Wikimedia Commons