2022年前半「日本の博覧会関連の臨時列車」を取り上げています。

 

第11回目は岐阜県岐阜市で開催された「ぎふ中部未来博」の臨時列車を取り上げます。

 

この企画で調べるまでは、博覧会の存在すら存じ上げませんでした。岐阜県民のかたには有名なイベントだったんでしょうか。この博覧会の15周年事業とやらも2003年に開催されています。

 

 

  博覧会の概要

博覧会については、Wikipediaのページもご紹介します。

会 期 1988年7月8日 〜 9月18日
来場実績 407万人 ※Wikipediaより
会 場 岐阜市長良川河畔 岐阜メモリアルセンター、長良川公園など

 

会場の位置関係を図示してみました。長良川公園と隣接する現在のメモリアルセンターをあわせたくらいの敷地規模で開催されたようですね。

 

 

  臨時列車(定期列車の延長)の運行概要

ぎふ中部未来博の臨時列車は、中央本線(西線)、関西本線(名古屋口)の定期列車の延長運転に加え、往年の鉄道ファンでは語り草となっている、幻の「岐阜しなの」とよばれた、名古屋止まりのL特急しなの号の岐阜延長ダイヤが設定されたのは、まさにこの博覧会送客のためでした。

 

下記は当時の臨時列車(定期列車の延長運転)の一覧です。特急しなの号を除き、7月8日〜9月18日 の開催期間中毎日運転となっています。

 

【東海道本線下り】 中央西線からは、南木曽、坂下、中津川、瑞浪始発の定期列車が、関西本線からは亀山、四日市始発の定期列車が名古屋〜岐阜(一部大垣)まで快速列車として延長運転されました。

「岐阜しなの」下りは2号のみ。岐阜到着後はおそらく、次の長野行の仕業にむけてそのまま回送されたと推察します。

 

 

【東海道本線上り】 車両運用の関係からか大垣始発となった分に加え、岐阜始発の臨時快速が運転された。また中央西線方面への帰宅客向けに名古屋〜中津川間で臨時快速の設定も確認できました。

「岐阜しなの」上りは29号のみ。おそらく名古屋から岐阜まで送り込み回送されたと思われます。

 

 

上記とは別に、会期中毎日運転された気になる列車、ダイヤがあります。

  • 大垣〜米原間、大垣〜関ヶ原間で設定された臨時列車
  • 会期中の一部期間で関ヶ原に臨時停車した急行たかやま号

 

この博覧会の会期とぴったりあった運転日なのに、最寄り駅岐阜駅になんら関係のない「大垣以北」のエリアの臨時列車、停車に当初「???」しかわきませんでした。

 

その後、この大垣〜米原間で、博覧会と同時に開催されたイベントがあるのか?と仮設を立てて調査をしていましたところ、たまたまネットで検索できた、1988年7月の岐阜県垂井町の広報紙「広報たるい」で、この臨時列車の設定背景と思われる記事がありました。

http://www.town.tarui.lg.jp/docs/2018020200018/files/630701.pdf

 

広報紙面では、県下市町村をあげてぎふ中部未来博を成功させたい機運が感じられます。その2ページ目に下記のような記事が。

 

未来博88バイク(BYK)作戦にご協力を!!

未来博88の開催に伴い、岐阜市およびその周辺は相当な混雑が予想されます。

そこで県では、次のような交通混雑緩和対策を推進します。

B = 分散(BUNSAN)

Y = 抑制(YOKUSEI)

K = 効率(KOURITU)

また、みなさんが会場へ行かれる場合には、次のことにご協力ください。

○混雑が予想される日曜、祝日をさけ、なるだけ平日に

○マイカーでの来場を自粛し、公共機関の利用を

 

あくまでも仮説ですが、この県下一斉の「バイク(BYK)作戦」キャンペーンにJR東海が呼応する形で垂井、関ヶ原からの利用客(おそらく学校とか敬老会とか)向けの臨時列車を設定。平日利用も推進するけれども期待する利用者数は見込めないエリアなので、普通なら送り込み、営業後回送される区間も「客扱い」して、多少なりとも収入を得ようとしていたのでしょうか。また、急行たかやま号の臨時停車も同じキャンペーンのもとに行われたと推察します。

 

 

  当時の時刻表紙面での臨時列車

東海道本線下りの紙面より。博覧会会場時間にあわせて岐阜駅にむかっていく列車の数々。そのなかでも「L特急しなの2号 岐阜行」が異色を放っています。

交通公社の時刻表1988年7月号

 

 

夜間の米原〜大垣間に博覧会会期中のみ運転された臨時列車。これこそ初見では「なにこれ?」的な列車でした。勝手な推察で、岐阜→米原への臨時列車運行後、回送にしがちな仕業で営業運転を行ったと推察します。

交通公社の時刻表1988年7月号

 

 

急行たかやま号の関ヶ原臨時停車。大阪〜飛騨古川間の急行列車に、岐阜県内の30分程度の博覧会輸送のために臨時停車させるのは、遠距離利用者にとっては「好まない」対応だと思いますが、たかやま号の岐阜県内通過時間と、たかやま号自体の利用率を鑑みて設定されたと推察します。

交通公社の時刻表1988年7月号

 

 

本日は以上です。

 

まとめページはこちらから

 

参考資料:交通公社の時刻表1988年7月号

参考ページ 博覧会、ぎふ中部未来博(ともにWikipedia)、岐阜県垂井町広報紙1988年7月1号