短命シリーズ38回目は、国鉄時代に千葉県房総エリアで活躍した2組の急行列車を取り上げます。

 

ひとつは、1967年から1年弱で消滅したディーゼル急行「うちうみ」「そとうみ」と、もうひとつは、電化後の電車急行「なぎさ」「みさき」を取り上げます。

 

 

循環列車は房総半島の優等列車の歴史を雄弁に物語ります

房総半島の循環列車の歴史がそのまま短命列車の歴史では?とうがってしまうほど、多彩な列車名が次々と登場します。ちょっとまとめてみると、


1959年  7月 準急「房総(内房)」「房総(外房)」 

1961年 10月 準急「房総」に統一

1962年 10月 準急「内房」「外房」

1966年  3月 急行「内房」「外房」 ※1968年7月から「うち房」「そと房」に表記変更 

1967年 10月 急行「うちうみ」「そとうみ」

1968年  7月 急行「うち房」「そと房」 ※1969年7月で循環運転が廃止

 

1972年  7月 急行「なぎさ」「みさき」で循環運転復活 (〜1975年

 

ちなみに、現在では「内房」→うちぼう、「外房」→そとぼう と読むのが常識ですが、60年代なかばまでは がいぼう、ないぼう と読むのが正だったようです。。。

 

 

「うちうみ」「そとうみ」がペアで房総循環

前述の通り、歴々と房総半島を単独、もしくは終点で連携する形で循環する列車が設定されてきた中で、かなり短命で終わった列車がありました。
 
1967年10月1日 「内房」「外房」のうち、循環運転する列車を「うちうみ」(新宿・両国〜【館山経由】〜安房鴨川)、「そとうみ」(新宿・両国〜【大網経由】〜安房鴨川)として運転開始
※臨時列車としては、1967年夏ダイヤで登場している
 
1968年7月1日 「うち房」「そと房」に吸収されて愛称消滅。
 
使用車両は、キハ26、キハ28といった急行型車両で、5〜6両の編成だったようです。
 
下記は房総西線(内房線)→房総東線(外房線)の紙面から。
当時は両線とも非電化、ディーゼル急行が幅を効かせた時代。かつての千葉県がディーゼル王国と呼ばれた所以ですね。
一例として、うちうみ・そとうみ5号のダイヤを記述しておきます。この2列車は列車番号はかわりますが、通し運転された列車です。
109D うちうみ5号 新宿発14:39 →木更津経由→ 安房鴨川着18:06/1202D そとうみ5号 安房鴨川発18:12 →大網経由、千葉から1102D→ 両国着20:50

交通公社の時刻表 1967年10月号より

 

 

「なぎさ」「みさき」で房総循環列車が復活

さて、次は なぎさ号、みさき号の略歴です。
 
1972年7月15日 房総エリアの夏期ダイヤ改正にともない循環急行列車が復活し、その愛称に「なぎさ号(反時計周り)」「みさき号(時計回り)」が採用される。
 
1975年3月10日 急行内房号、急行外房号へ改名と同時に、循環運転が消滅。

 

この列車が登場する契機となる1972年7月ダイヤ改正に先にふれておきますが、

当時の房総エリアでは大規模なダイヤ改正だったようです。この改正の目玉といえば、
  • 総武快速線開業
  • 錦糸町~津田沼間複々線化
  • 外房線、内房線に改名(従来は房総東線、房総西線という名称)
  • 外房線(旧房総東線)蘇我~安房鴨川間電化開業
  • 183系特急「わかしお」「さざなみ」新設
  • 大網駅移転による大網駅スイッチバック解消 ←何気に大きな出来事!

など、かなりインパクトのある改正でした。そのタイミングで登場したのが、今回とりあげる「なぎさ号」「みさき号」です。

 

使用車両は、両列車ともに165系10両編成。グリーン車も含む立派な編成でした。

 

下記は内房線→外房線の紙面。俗に言う「反時計回り」の循環列車「なぎさ号」のダイヤが確認できます。「うちうみ」「そとうみ」と決定的に異なるのは同一列車名で房総半島を一周するところです。間違った乗った人、多かったんじゃないかなと邪推してしまいます。

急行なぎさ3号 105M 両国発13:30→館山着15:33→館山〜勝浦間普通列車1286M → 206M 勝浦発17:00→新宿着19:02

交通公社の時刻表 1973年8月号より

 

 

こちらは、外房線→内房線、時計回りの循環列車「みさき」のダイヤが確認できる紙面。

急行みさき1号 201M 新宿発6:50→勝浦着8:54→勝浦〜館山間普通列車1281M → 102M 館山発10:18→新宿着12:42

 

急行みさき号と並んで特急わかしお号、さざなみ号が設定されています。特に特急が急行を追い抜くようなダイヤではなく、かつ所要時間も特急、急行で大差がないのに、料金に大幅に差のある当時の国鉄運送体系に不満があった方が多かったようです。

交通公社の時刻表 1973年8月号より

 

 

今回は以上となります。

 

なお、過去のシリーズをまとめたページがあります。よろしかったらバックナンバーもご覧ください。

 

参考サイト:外房線、内房線(ともにWikipedia)

参考資料 交通公社の時刻表 1967年10月号、1968年10月号、1973年8月号

列車名変遷大事典 三宅俊彦 ネコ・パブリッシング

日本鉄道旅行歴史地図帳 3号関東 新潮「旅」ムック

鉄道ピクトリアル 2021年9月号 電気車研究会