今回は、時刻表には載らなかったイベント列車「アメリカントレイン」について。
本来、スジ鉄ブログなのですが、備忘として取り上げます。
先に断っておきますと、全国行脚を行った列車ではありますが、
そのすべてのダイヤ、記録が追いついていません。分かり次第更新しています。
アメリカ建国記念日に運転開始
この列車の運行目的について、鉄道ダイヤ情報内では「アメリカに対する理解を深めることと、魅力的なアメリカ商品を広く理解し、販売すること」と記載されています。
事実、1980年代から1990年代初頭で、いわゆる日米貿易摩擦が大きな問題になっていたわけで、その状況下で仕掛けられた「火消し」だったと見る方もいらっしゃるようです。後述しますが、米軍基地内でのイベント開催もありましたので、多分に政治力を強く感じることもできます。なので、後刻京都での展示を前に、このような「反対運動」あったようです。
https://www.jcp-kyotofukai.gr.jp/document/uploads/moushiire_19890602.pdf
当時JR九州が作成したアメリカントレインのオレンジカード。手元にありましたw
イラストからなんとなく雰囲気はつたわりますかね。
客扱いは一切行わない「パビリオン(展示会)」のための列車
ジョイフルトレインのひとつとしてカウントしたくなるのですが、この列車編成自体が「展示会会場」のため、実際に移動中の客扱いは一切行っていません。実際ダイヤの策定時も団体臨時列車担当者が、臨時急行荷物列車、または臨時荷物列車として列車計画を手配していたとのこと。
ちなみにこのパビリオン(展示会)列車は、アメリカントレインで第4弾だったようで、
過去には、第1弾 サイエンストレイン (つくば万博)、第2弾 オランダ見本市列車、第3弾 バーボンエクスプレス
が存在したそうです。
1988年7月4日、アメリカ独立記念日から1年間JR東日本間区内を中心に回るイベントとしてスタートしました。私が把握している展示スケジュールは下記の通り。
7月4日 | JR東日本 | 東京駅(出発式 9番線) |
7月5〜10日 | 原宿駅(宮廷ホーム) | |
7月14〜20日 | 両国駅(3・4番線ホーム) | |
7月24〜31日 | 品川駅 | |
8月2・3日 | 鶴岡駅 | |
8月5〜8日 | 秋田駅 | |
8月9〜11日 | 弘前駅 | |
8月12〜18日 | 青森駅 | |
8月23〜28日 | JR北海道 | 函館駅 |
9月1〜7日 | 苗穂駅 | |
9月10・11日 | ー | 米軍三沢基地 |
9月13〜15日 | JR東日本 | 盛岡駅 |
9月16〜18日 | 北上駅 | |
9月19〜25日 | 仙台駅 | |
9月27・28日 | 山形駅 | |
※この期間のスケジュール | 不明 | |
10月15〜18日 | 福島駅 | |
10月20・21日 | 新津駅 | |
10月22〜25日 | 新潟駅 | |
10月27・28日 | 長岡駅 | |
10月30・31日、11月1日 | 松本駅 | |
11月3〜7日 | 長野駅 | |
11月11〜13日 | 甲府駅 | |
11月15〜16日 | 桐生駅 | |
11月18〜23日 | 高崎駅 | |
11月24・25日 | 熊谷駅 | |
11月26・27日 | 上尾駅 | |
12月3・4日 | 成田駅 | |
12月6・7日 | 銚子駅 | |
12月10〜12日 | 伊東駅 | |
12月20〜25日 | 両国駅 | |
1989年1月14〜22日 | ー | 沖縄(那覇) |
計画上での各駅での展示時間は10:00〜21:00と長時間のため、検査、清掃のための入庫のダイヤも苦労された模様。
パビリオン車両とその内容
使用された機関車、客車は下記の通り
専用機:EF60 19 所属は高崎運転所
専用車両:種車は南秋田区、山形区のオハ50形とオハフ50を改造した合計12両編成で全国を行脚
オハ50→オニ50、オハフ50→オニフ50とそれぞれ改番。改番後の所属は品川客車区。
上記2点とも、Spaceaero2, CC BY-SA 3.0 <https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0>, via Wikimedia Commons
各車両での展示内容は下記の通り | |
1号車 | 買物館、映画館 |
2号車 | ミュージック館(シンセサイザーなどを駆使した未来のコンサートを体験) |
3号車 | 宇宙館 ランドサットやボイジャーの映像、スペースシャトルのシミュレーションシアター |
4・5号車 | フード館 試食の他、牛肉、果物、ナッツの販売 ↑まさに「牛肉・オレンジ輸入自由化問題」と直結w |
6号車 | シミュレーションシアター 近未来の乗り物でアメリカ旅行を体験 |
7号車 | アメリカ情報館 |
8号車 | 3−Dシネマ館 |
9号車 | SFXホラー館 |
10号車 | ファンタジー館 様々なミラー効果で演出。 |
11号車 | ワンパクランド 未来の遊具施設 |
12号車 | 事務局車両 |
編成内への立ち入り(見学)には、イベント専用の入場パスポート(1日限り、前売り大人450円、子供250円、当日販売もあり)が必要だったようです。
こぼれ話なのでしょうか、12両編成を分割してでないと展示できない駅もあり、例えば両国駅展示時は、6両の2編成に分割していたそう。結果両国駅3・4番線ホームを占有することになり、所定でそのホームを使っていた特急「あやめ8号」「あやめ9号」が錦糸町〜両国間で運休せざる得ない状況もあったようです。
下記がその当時の時刻表から。錦糸町発着の特急列車がわずかな期間ながら設定されたという左証ですね。
交通公社の時刻表 1988年 7月号より
鉄道のない沖縄にも渡航
第1期の展示会場で「米軍三沢基地」があったことは前述の通りですが、当時鉄道がなかった沖縄県にもアメリカントレインは赴いたようです。
鉄道ダイヤ情報1989年DJレイルカレンダーの記事では、1989年1月14日から22日の9日間、那覇市内の港に「船積みされたまま」で展示されたようです。
先達の皆様のサイトを拝見すると、その那覇の港は「那覇軍港」だったようですし、本州からの出港は川崎港だったようで、船積みの都合で1両欠車で機関車あわせて12両編成での渡航。
2021年5月10日追補
Twitterでアメリカントレインについての想い出を上げている方がいらっしゃいました。貴重な写真が覗けます!
iso2020@wFFkxcR5X1tojdo銚子駅にやって来た「アメリカントレイン」 50系客車10両を改造したパビリオン列車。アメリカの食と観光と文化を満載して全国の主要駅で展示されました。走行シーンは撮れませんでしたが、銚子駅の広い構内にはたくさんの人が来場しました。… https://t.co/cwZzYUPuBY
2021年05月07日 20:01
今回は、以上です。
参考資料 鉄道ダイヤ情報 1988年7月号(No.51)、1988年11月号(No.55)、12月号(No.56)、1989年1月号(No.57)
参考サイト 国鉄50系客車(Wikipedia)
カバー画像 spaceaero2, CC BY 3.0 <https://creativecommons.org/licenses/by/3.0>, via Wikimedia Commons