2020年12月の年末から、2021年春の定期列車廃止をもって愛称消滅となる「有明」にフォーカスしております。

 

前回からほんの少し時代がくだって、昭和60年代から民営化直前 という感じで追ってみたいと思います。

この時期は民営化の話題の影に隠れた時期なので、この時期をテーマにした資料はなかなかでてきませんが、

  • 国鉄最後のダイヤ改正 1986年11月
  • 有明号の水前寺乗り入れの歴史(1987年3月〜1988年春)

を中心に取り上げてみたいと思います。

 

 

 1985年3月ダイヤ改正の有明号

世の中的には経済の復調が確認されはじめ、鉄道輸送量の減少に歯止めがかかってきた時期に差し掛かっています。

その中での1985年3月のダイヤ改正の九州エリアへの影響を挙げると、

  • 筑豊本線経由のあかつき号(2・3号)の鹿児島本線経由に変更
  • 季節編成減車(関西寝台特急は2両)の考え方が採用される
  • 特急いそかぜ号誕生(=まつかぜ号の米子での系統分離の結果)
  • 浜田〜日田間のディーゼル急行あきよし号の九州内区間が廃止

などと、速達化、弾力的な車両運用による効率化が図られていることが覗えます。

 

1984年2月1日にダイヤ改正から運転本数は変わらず15往復でしたが、485系車両の電動車改造(クハ→クモハ)により編成あたりの出力アップなどの施策の結果、博多〜熊本間で平均5分程度の所要時間短縮が実現しています。なお、博多発のパターンダイヤも山陽新幹線ひかり号からの接続に合わせ、日中の博多発1時間ヘッドの運行間隔が毎時05分から52分に変更されます。些末ながら、この改正から門司港発着有明号の停車駅に、折尾駅、吉塚駅が追加されています。これは同区間を走る特急にちりん号にも同様でした。なお、折尾駅は筑豊本線との接続駅、吉塚は福岡県庁の最寄り駅です。

以上2点とも、交通公社の時刻表 1985年3月号より

 

1984年2月のダイヤ改正からの変更を実感するのは、編成の方かもしれません。

すべて7両編成だったことから一部編成が5両編成にさらに短編成化(いづれも鹿児島運転所所属)。かつグリーン車が従来の4号車から1号車と先頭車に寄せられています。その中間車グリーン車に運転台を取り付ける工事が進められた結果です。

交通公社の時刻表 1985年3月号より

 

 

 国鉄最後のダイヤ改正の特急有明号(1986年11月ダイヤ改正)

同年の1986年3月のダイヤ改正は小規模で有明号への影響は限定的でしたのでスキップし、11月のダイヤ改正について触れます。翌年1987年4月の国鉄民営化を見据えたダイヤ改正ともいえ、有明号が利便性向上したことが顕著にわかる改正になります。

 

そのダイヤ改正の時刻表紙面です(下りのみ掲載)。これまでの15往復から25往復に大幅増便されました。特に博多〜熊本間の増便が8往復追加と顕著でした。西鹿児島行きと熊本行きが30分おきに交互に出発していくパタンダイヤを採用。博多〜熊本間では、西鹿児島行きが【速達】、熊本行きが【緩行】のダイヤで運行されました。ちなみに鹿児島本線全線でCTC化もこのタイミングで完了しています。

交通公社の時刻表 1986年11月号より

 

これだけの増発ですが、国鉄末期の財政状況で車両が新造されたわけでもなく、転籍車両のなかった国鉄九州総局はこの局面を「短編成化」で乗り切りました。短編成化はこの数年進められており、この改正でいよいよ3両編成の定期特急が誕生します。

 

この号に掲載された3両編成はグリーン車なしのモノクラス編成も掲載されていますが、後日半室グリーン車の準備が追いつき、お飾り的な位置づけながら全列車グリーン車付きで運行されています。具体的なスケジュールは、1986年11月20日から半室グリーン車連結が開始され、1987年2月21日に全編成への連結が完了しています。また、同時期に有明号の運用に入る485系全編成の所属が、これまでの鹿児島運転所から南福岡電車区に変更されています。以下は1987年4月号に掲載された編成表。半室グリーン車連結完了後の状態です。

交通公社の時刻表 1987年4月号より

 

 

 有明号が非電化区間に乗り入れ開始(1987年3月21日)

1986年11月実施のダイヤ改正から約半年後、4月1日に国鉄民営化が予定通り行われますが、その直前の3月9日に鳥栖〜大牟田間120km/h運転開始にともなう小規模なダイヤ修正が行われました。

 

下記はその結果が反映された交通公社の紙面です。昼間の特急列車ページですが、従来よりも臨時列車情報がしっかりと掲載されるようになっています。また中間車の先頭車化改造の結果で実現した編成短編成化によって従来よりも柔軟な運用が可能になり、高頻度ダイヤでもピーク期の臨時列車の運転、ならびに定期列車の運転区間延長が実現されています。その産物として、鹿児島県の出水発着の臨時有明号も設定されました。

交通公社の時刻表 1987年4月号より

 

さて、このセクションのメーントピックですが、上記の「昼間の特急」欄には現れていない、特急有明号編成の非電化区間乗り入れについてです。

 1987年3月21日に1日2往復設定された非電化乗り入れの特急有明号ですが、熊本行きの電車特急が熊本到着後に、機関車に牽引されて豊肥本線に乗り入れ、水前寺駅まで「普通列車」で運転されるという、前代未聞のダイヤでした。

 この水前寺駅は熊本城下ながら市の中心から少し離れた郊外の駅。しかしながら景勝水前寺公園、そして熊本県庁の最寄り駅として比較的重要な位置にある駅です。有明号のライバルである高速バスひのくに号のルートは、県庁そばにバス停があるので、様々な思惑のうちに水前寺行きが設定されたのだろうと推察します。

 

 乗り入れ初期の有明号について。水前寺行はDE10ディーゼル機関車が牽引(博多行きは推進運転)し、機関車と485系の間には電源車としてスハフ12が挟まれていました。後刻このスハフ12は後にヨ8000形車掌車に置き換えられています。

 

下記が豊肥本線の時刻表紙面ですが、有明28号は3月21日→4月30日、5月3日→6月30日運転という臨時の普通列車(客車扱い)になっているのがわかります。また、有明4・8・20号は、4月25日以降で運転開始との記事。

 

3月21日から運行 17号、37号、28号、46号

4月25日から運行 9号、41号、45号、4号、8号、20号

※どちらも臨時の普通列車

このように2期に分けて、豊肥本線乗り入れる有明号が合計5往復設定されました。

交通公社の時刻表 1987年4月号より

 

 

 当時の時刻表で見る、水前寺乗り入れスケジュールの変遷

前述の「水前寺乗り入れ」について、1988年3月のJR化後初ダイヤ改正から定期化します。それまでの「毎日運転の臨時列車」がどのように時刻表内で記載されていたのかたどってみます。

 

1987年8月号

この号では「昼間の特急」欄にも水前寺行き普通の記事が載っています。ここでは運転日は「9月30日までの毎日運転」と記事があります。また、下記紙面内の有明9号ですが、ピーク期に出水駅まで延長運転される場合には、熊本〜水前寺間に代替のディーゼル列車が設定されていました。

交通公社の時刻表 1987年8月号より

 

 

1987年9月号

こちらも昼間の特急欄から。この号では「11月30日までの毎日運転」との記事でした。

交通公社の時刻表 1987年9月号より

 

 

1987年12月号

この号では年末年始の臨時列車に絡む関係で、運転日が列車によって異なります。

9号、20号 1987年11月20日〜12月25日
1988年 1月 8日〜 2月29日運転
8号  1987年11月20日、21日、
12月24日〜1988年1月1日、8日〜2月29日運転
41号  1987年11月20日、23日〜12月31日、1988年1月7日〜2月29日運転
17号、37号、45号、
4号、28号、46号 
1987年11月20日〜1988年2月29日運転

 

 

1988年2月号

特急欄を確認したところ、対象列車すべて「3月12日までの毎日運転」との明記を確認しました。

 

 

 国鉄民営化直前期の福岡〜熊本間のバス(ひのくに号)

特急有明号が短編成化で車輌捻出し、運転本数を激増させる一方、高速バスは従来からの増便スタンスはまったく緩む気配はありません。

1985年3月の高速バス「ひのくに号」ダイヤ 所要時間120分、片道 2200円、40往復。

1983年に実施されたダイヤ改正による増便から変わらずの状況です。国鉄側も1985年3月ダイヤ改正で博多〜熊本間で若干の速達化を実現していますが、バス側は現状維持で様子見といった状況です。
交通公社の時刻表 1985年3月号より
 
 
1987年4月号の紙面では、これまで存在しなかった「高速バスページ」が登場し、ひのくに号もそのカテゴリー内に編入されています。
 
ダイヤについては、前述の1985年のそれと同じですが、紙面が大幅に変更されたことで途中の主要な停車バス停が明記されて便利になりました。追記の筑紫野、松の本(=熊本インターそば)、熊本県庁前のうち、とくに熊本県庁前については、国鉄利用者の最寄り駅は強いていえば「水前寺駅」です。地図を見ていただければわかりますが、水前寺駅から県庁へはそこそこの距離があります。そのため、県庁舎そばにバス停がある高速バスのシェアが高い理由の一つがここでもわかります。
 
また些末ながら、天神〜熊本交通センターの所要時間が1時間58分としてる点も、2時間切りというマーケティング的にインパクトを出したい高速バス勢の西鉄、九州産交バス側の苦悩も垣間見ることができます。
交通公社の時刻表 1987年4月号より
 
 

1987年12月の高速バス「ひのくに号」ダイヤ 所要時間120分、片道 2200円、46往復。

1987年11月にダイヤ改正をおこなわれたようで、従来の40往復から更に46往復に増便し、日中の運転間隔が20分から15分とさらに高密度のダイヤになります。ちなみに次の増便が1988年夏ですので、JR最初のダイヤ改正(1988年3月)をにらんだ増便だったことも想像に難くないですね。
JR編集時刻表 1987年12月号より
 

次回は、いよいよJR化後初のダイヤ改正を迎えます。ここでJR九州の新型車両783系のハイパーサルーンが登場です!私個人もこの時代の有明がたまらなく好きな車両。かなり脱線するでしょうが、まとめていきます!

本日は以上です。

 

参考資料:

鉄道ファン 2011年6月号 特集:485系パーフェクト

鉄道ピクトリアル 1992年3月臨時増刊号<特集>九州の鉄道、2014年11月号 485・489系電車(Ⅰ)、列車名変遷大事典 三宅俊彦 ネコ・パブリッシング

交通公社の時刻表 1986年11月号、1987年4月号、8月号、9月号、JR編集時刻表 1987年12月号

画像、カバー画像写真:オレンジカードはブログ筆者所有のものです。

参考サイト:ひのくに号、有明(列車)、国鉄485系電車(Wikipedia)