2020年12月の年の瀬に、2021年春の定期列車廃止をもって愛称消滅となる「有明」にフォーカスしております。

 

今回は、

・昭和40年代(鹿児島本線での特急の有明号の位置づけを確認しつつ、当時の高速バス運行ダイヤも確認)

という感じで追ってみたいと思います。

 

 

 特急化直前の急行時代の有明号(1965年10月ダイヤ改正)

 

「有明」の名称は、1951年(昭和26年)までさかのぼるようですが、ここでは特急化とその直前の急行時代の有明から振り返ります。
1965年(昭和40年)に電車急行の有明号が登場します。
この「白紙ダイヤ改正」については、山陽本線全線電化(1964年7月)、1965年9月の荒木駅 - 熊本駅間の電化開業の恩恵をうけたダイヤ改正。関西〜九州間の連絡用に481系、475系が増備されました。急行有明号には南福岡電車区所属の475系12両編成が充当されています。
 
岡山〜熊本間 475系12両
下り 岡山 8:30→熊本 17:49
上り 熊本 11:58→岡山 21:11
交通公社の時刻表 1966年4月号 鹿児島本線下り紙面より
 
そして、475系12両編成の内訳です。
「食」は厳密にいうとビュッフェ。サハシ455形が2両連結されていたようです。
 

 

 急行から特急への格上げ(1967年10月ダイヤ改正)

 

この改正で、いよいよ九州島内の鹿児島本線縦断特急として特急のキャリアをスタートします。当初は1往復の設定。
下り 2011D 門司港6:50→西鹿児島13:15 (所要時間 6時間25分)
上り 2012D 西鹿児島17:00 →門司港23:20 (所要時間 6時間20分)
交通公社の時刻表 1968年3月号より
 
熊本(川尻)以南の電化が未完成だったため、使用車両は鹿児島運転所所属のキハ80系ディーゼル特急7両編成。短編成ながら、1等車が1両、食堂車も連結されています。鹿児島本線を踏破する特急としては重量級の編成ですね。
 

 

 「よんさんとう」での特急有明号のダイヤ(1968年10月ダイヤ改正)

 

その後、世にいう「ヨンサントウ」と呼ばれる昭和43年10月のダイヤ改正では、列車番号を2011D、2012D→11D、12Dと変更される小規模の変更が生じています。
 
この「ヨンサントウ」では、1968年(昭和43年)9月28日植木駅 - 西里駅間が複線化による門司港〜熊本間の複線化工事完工と、このダイヤ改正までに門司〜博多間の線路強化による最高速度120Km/h運転実施が可能になっています。
 
その恩恵を受けるが如く、下りで10分あまり、上りで20分ありりですが、所要時間の短縮が図られています。
下り 11D 門司港7:00→西鹿児島13:12 (所要時間 6時間12分)
上り 12D 西鹿児島16:55 →門司港22:54 (所要時間 5時間59分)
 
下記は1968年10月号の紙面より。
交通新聞社 ダイヤエース時刻表(復刻版)昭和43年10月号より
 
少し横道に逸れますが、九州特急には寝台座席両用の583系が登場し、主要特急にことごとく投入されました。
※581系、583系については、1967年に「月光型」として581系が先行登場し、その翌年量産型として583系が「増備」されたという流れです。
 

 

 同時代の福岡〜熊本間のバス

 

この一連のブログのサブテーマは、鉄道のライバル「高速バス」との比較でした。
なので、1968年10月時刻表で拾えた都市間バスの一つ、福岡・熊本間のバスのダイヤを取り上げます。
 
ちなみに、九州自動車道の最初の開業は1971年(植木IC〜熊本IC)なので、高速バス経由ではなく、国道3号線(一般道)経由の特急バスでした。
 
バスの運転区間は、西鉄福岡駅(現:西鉄天神高速バスターミナル)、博多駅交通センター(現:博多バスターミナル)から国道3号線をひたすら南下し、久留米、福島(八女市)、山鹿を経由し、熊本の辛島町に到着。
ちなみに辛島町は現熊本桜町バスターミナルのそば。熊本市電の電停があります。ちなみに日本有数の大きさを誇った熊本交通センターの開業は1969年(昭和44年)3月5日となっていますので、ほどなく交通センター発着に切り替わったようです。
 
下記が時刻表から拾った実際のダイヤです。

鉄道と比較すると、博多駅交通センターから熊本の所要時間は3時間(特急利用時)。

 

同区間を走る列車と比較してみます。

特急バス
(博多駅交通C〜熊本)
3時間
下り特急有明 1時間37分
下り急行ぎんなん 1時間43分

ですので、目的地への速達性では圧倒的に鉄道が優位です。しかしながら、バスダイヤを俯瞰すると「パターンダイヤ」を採用しています。鉄道と異なり遠距離列車と兼ね合いの考慮なしで設定できるダイヤの自由度の高さを感じますし、その結果地域に根ざし、市街から市街に直接アクセスできる「利便性」は高かったでしょうか。

 

また、運賃の比較ですが、

特急有明号 2等車(博多〜熊本) 1,020円
特急バス(西鉄福岡〜熊本) 480円

なので、圧倒的にバス有利なのは今昔変わらない状況ですね。ちなみに当時の特急バスは座席指定制で30円の指定券が必要でした。

 

次回は、昭和40年代の続きで、鹿児島本線全線電化後のダイヤ改正が行われた1970年10月1日以降の電車化された有明号を取り上げてたいと思います。

 

本日は以上です。

 

 

参考資料:

時刻表アーカイブス 鉄道黄金時代1 鹿児島本線編 JTBパブリッシング

交通公社の時刻表 1966年4月号、1967年10月号、ダイヤエース時刻表復刻版 1968年10月号

列車名変遷大事典 三宅俊彦 ネコパブリッシング

 

画像:spaceaero2, CC BY-SA 3.0 <https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0>, via Wikimedia Commons

カバー画像写真:オレンジカードはブログ筆者所有のものです。

参考サイト:九州自動車道、ひのくに号、有明(列車)、鹿児島本線(Wikipedia)、国鉄457系電車(Wikipedia)