今回はイタリア高速鉄道についてまとめてみました。

 

イタリアの高速鉄道のミニ基礎知識

イタリアには高速列車の運営会社が2社存在します。トレニタリアはイタリア国鉄から列車運行全般を引き継いた会社。そして、その後誕生したNTV(Nuovo Trasporto Viaggiatori)がイタロ(.itaro)ブランドで2012年に高速列車を運行開始しました。

ちなみにこの2社が利用している高速新線はTAV(Treno Alta Velocità SpA)という会社が線路を保有しています。

 

現在の列車種別

トレニタリア運営

FRECCIAROSSA(フレッチャロッサ;赤い矢)

高速新線を経由して運行される列車種別。最高時速350km/h。また、兄弟列車としてFRECCIAROSSA1000があるが、ETR400(ETR1000)が使用されている列車を指す。なお時刻表などで略称としてFRが用いられることがあり。

 

FRECCIARGENTO(フレッチャルジェント;銀の矢)

高速新線と在来線を経由して、イタリア各地を結ぶ高速列車。在来線での曲線区間での減速を極力なくすために振子型車両が投入されている。最高時速は250km/h。

運行区間の例として、公式サイトでは下記のように説明している。

毎日、乗客は便利で頻繁に出発する60以上の乗り継ぎ*から選択でき、ローマからはボルツァーノ、トレント、ヴェネツィア、ヴェローナ、マンチュア、ジェノバ、レッチェ、レッジョ・カラブリア、ミラノからはアドリア海沿岸に簡単にアクセスできる。なお、時刻表などで略称としてFAが用いられることがあり。

 

※また、高速列車ではないものの、イタリアの列車種別ではFRECCIABIANCA(白い矢)も存在。

 

NTV(ヌオーヴォ・トラスポルト・ヴィアッジャトーリ)運営

.italo (イタロ)

高速新線を利用する列車を運行するNTVというオペレータによる高速列車ブランド。

2012年運行からはや12年(2024年現在)経過し、現在では前述のトレニタリアブランドに並ぶ高速列車ブランドに成長しています。下記リンクはイタロの運行網。国内運行だけですが、ほぼ全土を網羅しています。

 

 

現在運行されている主な車両(2020年11月現在)

FRECCIAROSSA(フレッチャロッサ;赤い矢)

ETR400(ETR1000)

 

 

ETR500

 

 

FRECCIARGENTO(フレッチャルジェント;銀の矢)

ETR485

 

 

ETR600

 

 

ETR610

 

 

ETR700

 

→ETR700については、実は元オランダ高速鉄道のFyla(フィーラ)だったことは有名な話です。別のページにてまとめていますので、ご覧ください。

 

 

.italo (イタロ)

ETR575

 

 

ETR675

 

 

イタリアの高速列車(新線)関連の年表 

1927年 ローマ〜ナポリ間で既存線(カッシーノ経由)に追加して敷設された新線(フォルミア経由)が完成。ここではじめてディレッティシマの名称が使用される。

 

1934年 ボローニャ〜フィレンツェ郊外のプラートまで2つめのディレッティシマが開業

 

※なお、上記2つのディレッティシマは高速新線には間違いないが、そもそも「真っ直ぐな」という意味のイタリア語であり、既存のバイパス線にほかならなかったわけです。その後イタリア政府が国家プロジェクトとして新幹線列車という車両と線路をセットで高速化するコンセプトを立ち上げ、このときからプロジェクトで建設される高速新線を「ディレッティシマ」と呼ぶようになっています。

 

1976年

5月 ETR401 ローマ〜アンコーナ間で週3回の運行開始

→ETR401は世界初の実用的な営業用振子電車として誕生しましたが、初期トラブル対応や周期的な調整が必要であったため量産化に至りませんでした。その後、試験を重ねて誕生するのがETR450です。

 

 

1977年

2月 高速新線(別名:ディレッティシマ)ローマ郊外のセッテバーニ〜チッタ・デラ・ピエーヴェ(122Km)が部分開業

 

1988年

4月 ETR450 ローマ〜ミラノ間のICとして運行開始

→ETR450は量産型振子電車として日本でも広く知られた「イタリア版新幹線」の代名詞となった車両です。ちなみに油圧による強制車体傾斜式を採用しました。

 

 

1989年

ETR450 ローマ〜ヴェネツィア間で運行開始

 

1992年

5月 高速新線(別名:ディレッティシマ)ローマ〜フィレンツェ全通

 

1996年

12月 ETR500量産型登場(ミラノ〜ローマ〜ナポリ)

→量産型登場までには、1988年にETR500X、1990年ETR500Yと2タイプの試作編成が存在していました。

 

2005年

12月    高速新線 ローマ〜ナポリ開業

 

2006年

2月    高速新線 トリノ〜ノヴァーラ開業

→2006年イタリア北部のトリノで、冬季オリンピックが開催されました。この高速新線はまさにオリンピック会場への送客とイタリアの技術力を世界に発信する格好の出来事でした。

 

2007年

3月    高速新線 パドヴァ〜メストレ開業

 

2008年

6月    高速新線 ナポリ〜サレルノ開業

12月    高速新線 ミラノ〜ボローニャ開業

 

2009年

12月  高速新線 ノヴァーラ〜ミラノならびにフィレンツェ〜ボローニャ開業

 

2012年

4月    NTV社の[.italo]が運行開始(ナポリ〜ローマ〜ミラノ)

6月    高速列車ユーロスター・イタリアの名称を廃止。フレッチャロッサ、フレッチャルジェントの2種が誕生

 

2015年

6月    新型車両ETR400を使用したフレッチャロッサ1000(Frecciarossa1000)が運行を開始

 

2018年

12月    フレッチャロッサ トリノ〜レッチェ間で運転開始

 

2019年

9月    フレッチャルジェント ボルツァーノ〜シバリで運転開始

 

2020年

6月

・フレッチャロッサ トリノ 〜 レッジョ・ディ・カラブリア間で運転開始

・NTV italo トリノ 〜 レッジョ・ディ・カラブリア間で運転開始

 

2021年

5月 NTV italo トリエステ 〜 ローマ 〜 ナポリ間で運転開始

12月

・NTV italo ジェノバ 〜 ナポリ間で運転開始

・パリ 〜 ミラノ間で、ETR400(Frecciarossa1000)が運行開始。同車輌の初のフランス乗り入れ。

 

2022年

4月 パリ 〜 リヨン・ペラーシュ駅間で、ETR400(Frecciarossa1000)が運行開始。

 

2024年

6月 フランスの鉄道事業者SNCFが、2026年からイタリアでオープンアクセスの高速列車サービスOuigo(ウィゴー)を運行する予定を発表

 

今回は以上です。

 

 

参考資料

世界の高速列車(地球の歩き方) ダイヤモンド社

世界の高速列車Ⅱ(地球の歩き方)  ダイヤモンド社

新幹線と世界の高速鉄道2014 海外鉄道技術協力協会 ダイヤモンド社

European Rail Timetable October 2020

 

参照ページ

Naples–Salerno_high-speed_railway、Elettrotreno_FS_ETR.401、TAV、V250_(鉄道車両)、アヴェリア#アヴェリア・ペンドリーノ、イタリア国鉄ETR400電車、イタリア国鉄ETR460電車、イタリア国鉄ETR485電車、チザルピーノETR470電車、トリノ-ミラノ高速線、フレッチャロッサ(ともにWikipedia)

Europe By Railの記事より

 

引用画像 Frickrより