個人の備忘として、各種資料にあたりつつまとめている当ブログですが、新しいシリーズとして、しばらく2025年のヨーロッパ鉄道に関する年鑑を参照し、各国の鉄道の動きを整理していきたいと思います。

 

2025年前後のヨーロッパ鉄道を取り巻く環境は、これまでとはやや異なる様相を見せています。近年続いていた高速鉄道や国際列車の拡大に加え、政治・経済情勢の変化や貨物輸送の構造変化など、鉄道を取り巻く環境そのものが変化しつつある時期となっています。とくにウクライナ情勢や安全保障環境の変化は、ヨーロッパ各国の政策にも影響を与え、鉄道貨物や物流の流れにも少なからず影響を及ぼしています。

ICNGB、スキポール空港駅、ブログ筆者撮影

 

旅客輸送では夜行列車の復活の動きが見られた一方で、補助金の問題などにより計画の見直しや廃止が相次ぐなど、やや不安定な状況となっています。例えば、スイス国鉄(SBB)が計画していたバーゼル〜マルメ間の夜行列車は、スイス議会が補助金を承認しなかったため、2026年の運行開始が見送られることとなりました。また、スウェーデン国鉄(SJ)のストックホルム〜ベルリン間夜行列車についても、インフラ管理機関トラフィークヴェルケット(Trafikverket)が新たな資金を拠出しなかったため、2026年9月で運行終了が予定されています。夜行列車は環境負荷の低い移動手段として注目されてきましたが、実際の運行には依然として公的支援が必要であることが改めて浮き彫りとなりました。

 

インフラ面では、ヨーロッパ共通の列車制御システムであるETCSの導入が各国で進められています。導入の進み方には国ごとの差があるものの、国境を越えた列車運行の円滑化を目指す取り組みは着実に進められています。こうした標準化の動きは、今後のヨーロッパ鉄道の発展にとって重要な要素となると考えます。

Original:  Sansculotte Vector:  Mickdermack, CC BY-SA 3.0 <http://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0/>, via Wikimedia Commons

 

また、ヨーロッパ内部だけでなく、中国とヨーロッパを結ぶ鉄道貨物にも変化が見られました。従来のロシア経由のルートが縮小する一方で、カザフスタンやカスピ海を経由するいわゆる「中間回廊」が注目を集めるなど、国際物流の流れにも変化が生じています。こうした動きは、ヨーロッパ鉄道の役割を考えるうえでも興味深い点と言えるでしょう。

 

制度面では、鉄道市場の自由化の流れは引き続き進んでおり、各国で新規事業者の参入や競争の拡大が見られます。国営鉄道が担ってきた輸送のあり方も、徐々に変化しつつあり、ヨーロッパ鉄道の構造は現在も変化の途中にあると言えそうです。

 

このように2025年前後のヨーロッパ鉄道は、インフラ整備の継続とともに、制度、物流、国際情勢などさまざまな要因が重なり合い、次の段階へ移行しつつある時期と見ることができます。各国の鉄道事情は依然としてそれぞれの歴史や事情を持ちながらも、ヨーロッパ全体のネットワークとしての結びつきは引き続き強まっています。

 

本稿は、こうした2025年のヨーロッパ鉄道の動きをまとめた資料(Richard Latten, Spoorwegen 2026)を参考にしながら、各国の鉄道の状況を整理していこうとするものです。筆者自身がすべてを調査した研究ではありませんが、当時の資料を手がかりとして各国の動きをたどり、可能な範囲で現在の状況も踏まえてまとめていきたいと考えています。

 

2025年前後に見られた動きの中には、今後のヨーロッパ鉄道の方向性を示すものも少なくありません。各国の政策や経済状況、技術導入の進展などによって、その後の展開はさまざまになると考えられます。

 

私自身の学びの意味合いも強い内容となりますが、お付き合いいただければ幸いです。

 

 

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参考資料:Richard Latten, SPOORWEGEN 2026