個人の備忘として、2025年のヨーロッパ鉄道に関する年鑑を参照し、各国の現状の動きをまとめております。

 

今回は、ドイツの鉄道動向について、当時の資料をもとにまとめてみました。ドイツについては、多岐にわたる調査と分析がなされているため、今回から複数回にわけていきます。

 

初回は、ドイツ鉄道の2025年の経営・運営の概要と線路・設備といったインフラ面での動きをまとめます。

 

なお、本記事の情報収集・翻訳・整理にはAIツールを活用していますが、内容の確認および最終的な構成・解釈については筆者自身が行っています。

 

 

概要

 

2024年のドイツ鉄道(Deutsche Bahn AG)の経営状況は、依然として厳しいものの、前年と比べると改善がみられた。営業損失は2023年の21億ユーロから2024年は3億3,300万ユーロへと大きく縮小し、純損失も27億ユーロから18億ユーロへ減少した。売上高は262億ユーロとなり、前年より増加した。部門別では、地域輸送を担うDB Regioが好調で、輸送人員・売上ともに増加し黒字に転換した。一方で長距離輸送のDB Fernverkehrは利用者数が減少し、売上も減少した。また、貨物部門のDB Cargoも輸送量の減少が続いた。インフラ管理会社DB InfraGoは黒字に転換し、インフラ投資拡大の基盤が整えられた。 

 

しかし運行品質の面では課題が続いた。2025年7月の長距離列車の定時率は59.4%と、前年同月の67.2%から悪化した。DBは2025年に65〜70%への改善を目標としていたが達成できなかった。この状況を受け、2025年8月にリヒャルト・ルッツCEOが解任され、10月にはDB Regio責任者であったエヴェリン・パラが新CEOに就任した。 

エヴェリン・パラ、Deutsche Bahn AG / Christoph Soeder

 

政治面では2025年2月に連邦議会選挙が実施され、CDU/CSUが第一党となりSPDとの連立政権が成立した。これによりフリードリヒ・メルツが首相に就任し、運輸大臣にはCDUのパトリック・シュナイダーが就任した。新政権は鉄道政策について大きな方向転換は行わず、インフラ投資を継続する方針を示した。 

 

新政権のもとで、今後10年間に総額5,000億ユーロのインフラ投資基金を設立する方針が決定された。この資金は交通・エネルギーなどのインフラ整備に充てられ、中央政府および州政府の双方で活用される。これに伴い、従来の「債務ブレーキ(Schuldenbremse)」が緩和され、州政府による借入も一定範囲で認められることとなった。これにより、長年停滞していたインフラ投資の拡大が可能となる見込みである。 

 

この基金のうち鉄道に割り当てられる金額はまだ決定していないが、DB InfraGoは約1,500億ユーロの必要性を表明している。また、電化プロジェクトについては費用便益分析の義務を撤廃し、計画の迅速化を図る方針も示された。これらの動きは、老朽化したドイツ鉄道インフラの更新を加速させる重要な政策転換となる可能性がある。 

 

 

インフラ

 

インフラ政策・投資

2025年のドイツでは、鉄道インフラ投資の拡大が重要政策となった。連立交渉では今後10年間で総額5,000億ユーロのインフラ投資基金の設立が合意され、鉄道を含む交通インフラへの投資が拡大される方針となった。さらに債務制限の緩和により州政府によるインフラ投資も可能となった。

 

また、2025〜2029年の鉄道インフラ投資として総額1,065億ユーロが確保され、DBへの資本増強や補助金の増額が行われるなど、インフラ改善に向けた財政支援が拡大している。

 

 

インフラ整備(個別案件)

ハンブルク〜ベルリン幹線の設備更新

ハンブルク〜ベルリン間では、2025年8月から2026年4月にかけて大規模更新工事が実施される。この工事に先立ち、建設資材輸送ルートとしてプリッツヴァルク(Pritzwalk)〜ノイシュタット(ドッセ)(Neustadt (Dosse))(41km)およびノイルッピン(Neuruppin)〜レーヴェンベルク(Löwenberg)(28km)の両線が改修された。改修後、最高速度は50km/hから80km/hへ引き上げられている。

 

またノイルッピン〜レーヴェンベルク線は、2025年8月から12月にかけてRE6「プリグニッツ・エクスプレス(Prignitz Express)」の迂回ルートとしても使用され、工事期間中の輸送維持に重要な役割を果たした。この工事は、ドイツでも最重要幹線の一つであるハンブルク〜ベルリン間の輸送改善を目的としたものであり、今後の幹線更新の先行例として位置付けられている。

Deutsche Bahn AG / Oliver Lang

 

総合近代化(Generalsanierung)

ドイツでは、幹線を一定期間閉鎖して一括更新を行う「総合近代化(Generalsanierung)」方式が導入された。この方式では線路・信号・駅設備などを同時に更新することで、短期間でのインフラ改善を目指している。

 

この方式の最初の適用例となったのがマンハイム〜フランクフルト(Frankfurt am Main)間のリートバーン(Riedbahn、直訳は湿地の線路の意味)である。この工事では111kmの線路更新、152分岐器の更新、619信号の更新に加え、ETCSの導入が行われた。2024年12月に再開されたこのプロジェクトは成功例として評価され、今後の幹線近代化のモデルとなった。

 

今後数年間で約1500kmの幹線を対象に総合近代化が予定されている。主な対象区間はハンブルク〜ハノーファー、レーゲンスブルク(Regensburg)〜ニュルンベルク、ジーゲン(Siegen)〜トロイスドルフ(Troisdorf)、ケルン〜ボン〜コブレンツなどである。

Deutsche Bahn AG / Volker Emersleben

 

シュトゥットガルト(Stuttgart)21

シュトゥットガルトでは「シュトゥットガルト21」プロジェクトが大きな節目を迎える。2026年12月には地下中央駅の大部分が供用開始され、シュトゥットガルト〜ジンゲン(Singen)方面を除く長距離列車が地下駅経由となる予定である。シュトゥットガルト空港駅およびウンタートゥルクハイム(Untertürkheim)の留置線も供用開始される。

 

移行期間中は大規模な運行変更が予定されており、ジンゲン方面の列車はファイインゲン(Vaihingen)折返しとなる。またSバーン幹線でも複数回の長期運休が予定されており、2026年から2027年にかけて段階的な切替が行われる。

Mythenwandler, CC0, via Wikimedia Commons

 

ニュルンベルク(Nürnberg)周辺幹線

ニュルンベルク〜バンベルク(Bamberg)間では複々線化が進行中である。この区間はドイツ南北幹線の一部であり、高速列車および貨物列車が集中する重要区間である。

 

またニュルンベルク〜レーゲンスブルク(Regensburg)間では2026年に大規模近代化が実施される予定であり、線路・架線更新および将来のETCS導入が計画されている。

 

 

ベルリン(Berlin)都市圏

ベルリン中央駅地下トンネルでは容量増強工事が実施され、分岐器および信号設備が追加された。

 

またベルリン〜フランクフルト(オーデル)(Frankfurt (Oder))線ではファングシュロイゼ(Fangschleuse)新駅の建設が開始された。この駅はテスラ工場向け貨物輸送への対応を目的としている。

 

さらにベルリン〜コストジン(Kostrzyn)〜ゴジュフ(Gorzów Wielkopolski)〜クジシュ(Krzyż)を結ぶオストバーン(Ostbahn)では、複線化・電化・160km/h化が計画されている。

 

 

中部ドイツ幹線

ドレスデン〜ホーフ(Hof)およびライプツィヒ〜ヴェルダウ(Werdau)間では近代化が進められている。最高速度は160km/hへ引き上げられる予定である。またハレ(Halle (Saale))周辺でも駅改修および電子保安装置導入が進められている。

 

 

フェーマルン・ベルト固定連絡

フェーマルン・ベルト固定連絡に関連し、旧フェーマルン・ベルト線(Vogelfluglinie)の廃止計画は撤回され、新線との接続線が建設される予定となった。一方、固定連絡の開業は遅れており、完成は2032年以降となる見込みである。

Visualisation of the future tunnel entrance on Fehmarn、Copyright Sund & Bælt Holding A/S

 

国際幹線の電化

バーゼル・バート駅(Basel Bad Bf.)〜エルツィンゲン(Erzingen)間ではホッホライン鉄道(Hochrheinbahn)の電化工事が開始された。2028年完成予定である。

 

EOF

 

参考資料:Spoorwegen 2026/Richard Latten/Uitgeverij De Alk BV(オランダ語書籍)