【1人で電車に乗って園に行った話~】26歳 | 鈴木正人の自伝「まぁいいっか!」

鈴木正人の自伝「まぁいいっか!」

重度の身体障害がある鈴木正人(すすきまさひと)のブログ
1972年生まれ、三重県松阪市に暮らしています。
普段僕は車イスで生活をしています。
自分のこれまでの人生をまとめてみました。

26歳の春、職員の山田さんから「ちょっと話しがあるんやけど」と呼び出された。山田さんがこんな感じで僕に声をかけるときは、大体何か企んでいるときなのだ。「マーシーとハッチ(園の仲間)が旅行に行ったやろ。マーちゃんもどこかに行ってみたら?」と言うのだ。僕は「ほら来た。。。」と心の中で思った。最近園の仲間がボランティアさんと一緒に岐阜県飛騨へ三泊四日の旅行に行ってきたのだ。家族以外と泊りで旅行に行くなんて、彼らにとって大きな挑戦だった。

 

そんな事もあって山田さんはいつものように、けしかけてきたのだ。「マーちゃん独りで、園まで来てみたらどう?」僕は「え!?」と思った。僕の家から園までは、独りで行くにはかなり厳しい道のりだ。まずは自宅から最寄りの駅まで徒歩40分。そこから電車に10分乗り、下りて徒歩で10分かかる。気持ち的には「やりたくない」が60%だった。僕は「親と相談してみる」と答え、その場を切り抜けた。内心は挑戦できることがちょっと嬉しかった。

 

家に帰り、母にその日山田さんに言われたことを相談した。多分母は行けと言うと思ったが、想像通り軽い感じで「やってみれば?」と答えた。父も祖母も賛成していた。こうなると、やらなければならなくなってきた。僕も90%は「挑戦してやる!」という気持ちになってきた。

 

 いよいよ冒険の当日が来た。前日に電車の時間を調べ、電動車イスの点検も父がしっかりしてくれた。充電も満タン、準備はバッチリだ。家から電車を使って園まで約1時間かかる予定だった。いつも送迎では10時に園に到着していたので、余裕を持って8時半に出発した。母はいつも通り「いってらっしゃい」と僕を見送った。そんな母は、言葉や態度には出さないけれど、内心はいつも僕のことを心配していた。

 

これまで一人で出掛けたことはあったけれど長距離は初めてだったので、道の安全などに少し不安もあった。しかし父とのドライブでルートを沢山知っていたので、安全な道を自分なりにシミュレーションしてみた。幼稚園の頃に父と行った神社の脇を通るルートが車通りも少なく、一番安全だろうと思った。

 

僕はその道を選んで進みはじめた。僕が住んでいるのは一面田んぼが広がる地域だ。時々大きなダンプカーが通り抜けた。自分のアゴの癖で左に曲がっていってしまうのに苦労した。側溝に落ちそうになったり、道路の真ん中に寄ってしまったり。ダンプカーとすれ違うときはとても怖かった。神社を通り過ぎ、30分ほど進んで小さな道に入ったときはホッとした。駅はもう見えている。

 

そして最寄りの漕代駅に到着した。しかし大きな難関、踏切が待っていた。松阪方面に行くにはこの踏切を渡らなければならない。僕は一旦立ち止まり考えた。「これはもたもたして渡るっていると危ないな。。もしタイヤがはまってしまったらどうしよう。」渡っている途中で電車が来てしまったらケガでは済まないので、心と体を落ち着かせてから渡ることにした。速度を高速に切り替え一気に進んだ。

 

踏切の中には線路や段差があるのでガタガタしている。コントローラーの操作が大変だったが何とか渡り切り、改札の前にたどり着いた。いよいよ初めて一人で電車に乗る事になる。

 

中編に続く

 

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