黒人青年ふたりが来たそのわけとは | 洋服直し屋の日常

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          黒人青年ふたりが来たそのわけとは

毎日曜夜の6時半、英語と聖書の授業のため教会に行く。
私はクリスチャンではないが、30年通っている。

この2つが好きな理由は、中1のとき

★英語の先生が、メチャきれいで優しかった。
★バスケのキャプテンが私のそばにきて「これを君に!」と言って
逃げるように立ちさって行った。まわりの目が私に集中した。

頬に火が付いたのを知られたくなくて、トイレにかけこんだ。
ほんとはもうチョットでちびりそうだったんだ。それは聖書だった。

~~~~~~~~~~~~~~
先日、教会に行ったら30代半ばの黒人青年がふたりいた。
アメリカ系ではない。アフリカ系の顔立ちである。

この教会は北朝鮮以外の国々から、クリスチャンが
ひんぱんに訪れる。黒人は少ないがめずらしいことではない。

いつもどおり

「はじめまして、 私は○○です」と言って握手した。
ふたりともオーブンのミトンみたいな、でっかい手だ。

「南の国からいらしたんですね、お国はどこですか?」
「・・・・・・・・」 ふたりとも無言だ。

え?私がおばさんだからといってシカとしなくっても・・・・・・。 

するとノックス先生が、
 

「英語も日本語も話せないです。フランス語だけです。
日本に来て2ヶ月だそうです」

「え? コマンタレブー語ですか(笑)
「セネガルから来たそうですよ。セネガルはフランス領でしたからね」


                             


ふ~ん。じゃ、会話はこれで終了かいと思った。

でも、途切れた会話がなんとも味気ないし、中途半端もいやよ。
ジェスチャーなら通じるだろう。セネガルは何が有名かとたずねた。

すると即行「サッカー!」とふたりがハモった!
そういえば、セネガル戦というのがワールドカップにあったな。

 

 

                   


「あなたがたはクリスチャンですか?」  「イスラム」

ふと、ふり返るとアラフォーの日本人女性がいる。

「このおふたりはあなたの友達ですか?」と訊いたら、

「いいえ、さっきマクドナルドで会ったばかりです。
何を言っているのか分らずこの教会に連れてきました。すみません」

本人達は日本語の教室を探していたらしい。
場ちがいなところに来てしまっているのも、分っているようだ。

こんなとき、どうすればいいのかとまどっている表情がみえる。

私たちも困惑してしまった。しかし、帰れとも言えない・・・・・・。

授業時間になり、そのままいつもの勉強風景に突入してしまった。
ふたりとも一言もしゃべらない。
フランス語を知る者は誰もいないからだ。

授業がおわり「メルシー」と言って玄関ドアを開けたその瞬間、
外気が飛び込んできてふたりに当たった。

あら? 何かがちがう。   匂いだ!  
さわやかなコロンの香りがした。

いつも、鈴木さん(60代女性、塾の英語教師)の、えずきそうな加齢臭に悩まされていた私・・

黒人青年の見た目とちがうギャップにおどろいた!
後進国から来た労働者だと思って、軽く見ていた私は、とんでもない失礼な女だ。

「ちょっと待ってぇ~。日本語ならこのおばさんが教えてあげるよー!」
言えるものなら!

 

 

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